私の公約は”コスメ手当”を、国民に一律給付することです。女性には”メイクすることが当たり前”という、目には見えない圧力がかかっています。また、当たり前とされていながら、コスメ代は私たちのお財布に結構な負担を強いてきます。
ならば、”コスメ手当”を出すのは、国家として義務であると、総理大臣の私は思うのです。
私は、男性も”コスメ手当”の対象とすることを、誓います。自分の見た目について、外野がケチをつけてくるという体験は、性別に関係なくしたことがあるでしょう。
清潔感とはまた別の観点で、男性も”見た目”についての当たり前を、押し付けられたことがあるのではないでしょうか。髭がどうしても濃いのに更に剃ることを強要されたり、にきびが出来てしまうことをあたかも悪いことのように言われたり、私たちと全く同じ痛みを抱えています。
自分を売り込む就職活動なのに、なぜメイクの標準化を求められるのか
メイクをするしないに限らず、メイクの内容まで指定されることがあります。その代表格が"就活メイク"や"オフィスメイク"です。
就職活動が本格化する前、私は大学3年生の12月頃、大学の就職センターが開催する"就活メイク"の講座に参加しました。
講師の方は「特別なものを使う必要はない」と言っていましたが、眉を整えるブラシも派手な印象を与えすぎないためのコーラルのリップも、私は持っていませんでした。それぞれは安価なものでも、”就活用”のコスメを一揃えしようとすると、何千円、場合によっては一万円程度してしまいます。
大学生にとっては馬鹿にならない出費が、就活をするためにはまるで必要不可欠のものであるように扱われていることに、私は疑問を持ちました。
それよりも、もっとおかしいと思ったこともあります。自分を知ってもらうのが就職活動であるのに、何故私たちの見た目は標準化するように仕向けられるのか。
いつもの自分のメイクをすることでありのままを見せた方が、企業にとっても余程良いのではないでしょうか。
コスメなど就活費用をどうにか工面する妹に、父が放った衝撃的な発言
今年の就活生は、新型コロナウイルスの流行で例年よりも更に苦労をしたと思います。今年大学四年生の私の妹も、大変そうでした。
説明会の回数を減らされたり、WEB面接が主流になったりということもですが、一番きつそうだったのがアルバイトに行けないため、就活費用を捻出できないという点でした。WEB面接の実施によって交通費が浮くというコスト面でのメリットがあっても、コスメが必要なことに変わりはありません。
画面越しの面接官に好印象を与えるために、カメラ映えするメイクをして、笑顔を見せる。ファーストインプレッションで勝負が決まることもしばしばある就職活動の世界では、メイクをすることも勝敗を決める大きな要素なのです。
そこで、妹は祖父母に借金をして賄うことにしました。父方の祖父母は気持ちよくお金を貸してくれましたが、そのことを知った父の言葉が衝撃的でした。
「そのお金何に使うの」
「交通費とか、コスメを買うお金かな」
「コスメには、そんなに金かからないでしょ」
そして、事もなげに言ったのです。
「色気づきやがって」
メイクすることを求められる一方、否定的に捉える風潮を変えたい
私はこの一言に、怒りを感じましたし、失望しました。メイクをすることを求められながら、一方でそのことを否定的に捉える風潮は確実にあります。この一言には「スカート丈が短いから痴漢される」というような言葉と、通ずる思想を感じます。
美しさを求めながら、女性たちがコスメや服を自分たちの意思で選ぶことには否定的な考えを持つ人たち。私が失望したのは父に対してももちろんですが、こういった発言をする人はきっとこの世の中に他にもいるのだろうということに対してです。
コスメにかかるお金自体が負担であることや、メイクすることが当たり前であることが生む負担を、社会で共有しきれていないことに「この世の中を変えなくてはいけない」と強く思いました。
この公約は、私の最終的な目標である"性別による壁をなくす"ことに繋がっているのかもしれません。”コスメ手当”は、自分を好きになるために必要なコストを補助するもので、あなた一人が自由に使える給付金です。この使い道に、私たちは絶対に首を突っ込みません。
以上、とても強い願いを込めて、私はこの政策を実現します。