先日、買い物で立ち寄ったドラッグストアで嫌な客を見た。
その日はポイント倍デーで、店内はいつもより混んでいた。店員たちも頑張ってお店を回しているが、商品の品出しが追いついていないのか、心なしか普段よりも品薄だ。
普通はそれに気づいたとしても、そっとしておくのが大人の対応だと思っていたが、その客は違った。
店員に過剰にキレる「モンスター客」を見ると、軽蔑の眼差しを送る
自分の欲しい商品が欠品していることが許せなかったのか、店員に過剰にキレる。店内に響き渡る怒号。その客の対応で、ただでさえ混んで忙しい店内がさらに回らなくなっていた。
「大人気ない人だな~」と、私は奴に出来る限り、軽蔑の眼差しを送った。そして、店員には「理不尽で可哀想だが、どうか落ち込まないで」と心から労いの言葉を送ったのだった。
私は、こういったモンスター客が嫌いだ。もう時代遅れで死語でしょ!と思うのだが、こういう人に限って“お客様は神様”信仰を、令和の今になっても信じている。頭でっかちなところが、非常に面倒くさい。
実は、私も過去にモンスター客の餌食にされたことがあり、その時の屈辱感は今でも忘れられない。その過去があるからこそ、出来事を想起させる場面に出くわすと、余計に奴らへの嫌悪感が増すのだった(つい口が悪くなってしまい申し訳ない)。
私がモンスター客の餌食にされたとき、関係ないことでディスられた
私は、学生時代にアパレルショップで働いていた。老若男女さまざまな世代が来るお店。そして、その日たまたま自分が接客し、出くわしてしまったのが例のモンスター客だった。
奴は、突然現れた。購入した服のサイズが小さく、返品したいとのこと。それ自体はよくある申し出のため、特に何も思わなかった。
しかし突然、理不尽な持論を語気強めで展開し始める。「おたくのブランドの服は、他ブランドに比べてサイズが小さい気がする。縫製基準がおかしいのではないか。不良品の集まりだ」と。
売り場に立っていて困ることの一つに、自分は“既製品”を売っている認識でいるのに、その商品のデザインや縫製など、生産ラインの段階の限りなく自分の知らない世界の話をされることがある。私に言われても……と内心は思うのだが、どうしようもないからひとまず詫びを入れる。
でも、やっぱり思うのだ。私に言われたところで、そのレベルの問題の解決は難しい。ましてや、不良品という決めつけは勝手すぎないか。しかし、“お客様は神様”だと思っている奴には、何を言っても悔しいことに伝わらない。
そして、なぜか怒りが収まらないモンスター客は、全く関係のない私の容姿をディスり始めた。「化粧が薄い。女のくせに化粧も適当で恥ずかしくないのか。俺の嫁さんとは大違いだ」「たぶんろくでもないセックスしかしていないんだろうな」と、もはやクレームの域を超えて、どんなことを言ってでも私を傷つけようとする意思を感じて、本当に気持ち悪かった。
奴の言うことを真に受けないよう、なるべく聞き流したが、それでも多少は胸にグサリと刺さって傷ついた。どうして見ず知らずの男から突然とばっちを受け、貶されなければいけないのか。
モンスター客は、何の意図があって「罵詈雑言」を浴びせるのか?
結局、そのモンスター客は男の店長が上手いこと言って退治してくれた。私としては店長に対し「もっと早くに来てくれよ」と悪態を吐きたいところだが、ひとまず深呼吸。悔しいことに、モンスター客は男の店長に対しては罵倒もせず、あっさり身を引いていった。奴にとっての“弱者”である私が攻撃対象となり、全ての鬱憤を受ける形となったのだ。
それから、しばらくはこのモヤモヤした気持ちは消えず、反対に自分が客として訪れた店で過剰なクレーマーを見かけると、精一杯の軽蔑の眼差しを送ることにしている。一体、何の意図があって罵詈雑言を浴びせるのか、私にはどうにも理解出来ないが、傍目から見ても自分が当事者になっても、不快なことに変わりはない。
そして、モンスター客の最大の特徴として、自分より弱い立場だと見做した人間にだけ、強気に出る傾向がある。学生時代に出会ったモンスター客はきっと、私が“若くて”“女で”“社会的な立場が低い”人間だと思ったから、攻撃してきたのだろう。
早く、そんな大昔に取り残されたような思考のモンスター客が、大々的に負の遺産として扱われる、新時代が来てほしいものである。
もうお客様は神様ではない! こちとら人間なんじゃ! モンスター客の相手をしている場合ではない! という店員の叫びがもっとクローズアップされますように。