私は、東京出身だ。
大人になって知り合った、たくさんの地方出身の方の「方言」「地元」「文化」を羨ましく思ったことは何度もある。
そんな私の「地元」は、多摩ニュータウンのとある町。場所で言うと、八王子。
平成狸合戦ぽんぽこで描かれたまさにあの辺り、映画では知っている風景が美しく鮮明に描かれている。
私の地元は都会ではないし、田舎でもない。どっちつかずな場所なのだ
大学も、新卒で入社した会社も、八王子から約1時間~1時間半かけて電車で通った。ベッドタウン八王子の朝の通勤ラッシュは泣きそうなくらい人が詰め込まれていく。人の頭越しに、終点の新宿に近づくにつれビルが増えていく風景をただ無心で眺めた。
八王子を出て、数年が経つが、あの通勤ラッシュはもう2度と体験したくない。通勤ラッシュが嫌で地元を出たという面すらある。
東京出身、と言うと「都会っ子」「シティーガール」なんて言われる。東京都下出身の人は共感があるかもしれないが、そういう面ではなんともどっちつかずな場所なのだ。
都会、ではないし、田舎、でもない。
そうは言っても、住みやすい。
整備された街並みも、ショッピングセンターも、広い公園も、学校は小学校から大学まで、全部ある。
ゆえに、この街から出ない人も多い。「マイルドヤンキー」なんて言うのだろうか。
子供と歩く同級生を見つけた。この町で家族がつながるんだと感慨深い
たまに帰ると同級生が子供と歩いてたりなんてする。もうお母さんなんだ、まぁそんな歳だよなと思いつつ、中学から変わらずのB専なようで、横にいるのはいかにも好きそうな顔の旦那だ、とブラックジョークを頭の中に潜ませながら、お子さんと手を繋いで幸せそうに歩いていくのをただ遠くから見ていた。
またこの町で家族がつながるんだなと思うと、感慨深い。
駅前の笑笑に行くと、中学時代グレていた同級生に出くわしたりする。焼酎なんか飲んですっかりおっさんだ。学校の前でわざわざ吸ってたタバコを、今は健康のためにやめてるなんて言うから、早熟すぎた彼の「悪いことはもうやり切った」感に少し笑った。
当時のブリーチした金髪の影もなく、ビシッと決めた胡散臭いツーブロック。「今はビジネスをしている」と言った。なんの?とは深く聞かなかった。
あいつ今何してる?って会話の中で、足が速くてクラスの人気者だったあの彼が今、ニートだと聞いた。当時の面影なく太っているらしい。たまに駅前のスーパーを彼女と歩いているとも。
ニートでも彼女がいるあたりはさすがとしか言いようがないが、例に漏れず私も彼に憧れていた1人でもあったので、思い出は美化しておきたく、そのスーパーには近寄らないようにした。
穏やかなこの街、懐かしい地元は電車で1時間で着く私のふるさと
中学を卒業してからの10年以上、皆んながどこで何をしていたかは知らないが、会えば昔と同じように笑い合ったりして、その瞬間はガキに戻れる。
穏やかなこの街から出たり出なかったり、東京に挑んでみたり、地方に飛び立ってみたりして、今に至るのだ。戻って来ればいいやと少しだけチャレンジするには、私たちは地元が東京のアドバンテージは少なからずあったのかもしれない。
懐かしい地元、今はもう出てしまった八王子、電車に乗れば1時間で着く私のふるさと。
毎日通った中学の通学路を歩くと、当時と同じ制服を着た中学生が追い越していった。
ふっと頭をよぎった黒歴史。恥ずかしい思春期の思い出。
私、今何してる?今も昔も語れるような存在にはなれていない。