8月27日(金)。
夏休みが終わる。と言っても私のじゃない。
高校受験を控えた弟の、中学校生活最後となる夏休みが終わってしまった。今日から弟はマスクを付けて生徒がひしめく教室に登校しなければならない。
ワクチンも未だ接種出来ないまま、県では毎日1000人以上の陽性者が出る中で、「学びを優先し」、夏休み延長もオンライン授業もしない、と先日自治体が発表したから。
姉弟3人が仲良く家の中で過ごした夏は、理想的な「おうち時間」
コロナが流行して、2回目の自粛の夏。
在宅ワークをしていた私と、就活中の3つ違いの弟と、夏休みの弟。たまたま3人とも家から出る必要がない立場にある。
買い物以外は家にこもり、無駄な外出はせず、当然遊びにも行かない。私たち姉弟は1ヶ月間、仲良く3人で家の中で過ごした。
クーラーの効いたリビングに集まり、午前中は勉強の時間に充てる。弟の宿題や受験勉強を手伝いつつ、私は手が空いたら家事を済ませる。
お昼になれば、わいわいと感想を言い合いながらジブリやポケモンやディズニーの映画を見つつ、昼ご飯を食べる。サンドイッチやらラーメンやら、各自で食べたいものを作って食べる時もあれば、みんなでソーメンを食べる時もある。
狭い食卓を囲みながら、明日は何食べる? なんて相談する、のんきで何気ない行為がじんわりと心に沁みた。
午後からはめいめいリビングでくつろぎ、スマホゲームや読書や、ペットのうさぎと遊んで過ごす。うさぎも、誰もいないリビングにひとりぼっちでいた頃よりも、寂しくなかったのだろう。一緒に過ごしたからか、以前より懐いてくれた気がする。
夕方になれば仕事から帰宅する両親を労い、団欒を満喫する。
平和で、確かにこの穏やかな休日はそれはそれで楽しいものになったと思う。私も積み本を消化し、細々と創作をし、はまっているスマホゲームに没頭した。理想的な「おうち時間」。
1ヶ月も毎日一緒に姉弟と過ごせる夏なんて、きっと今年限りの奇跡
けれど。
8月のスケジュール帳は空白のまま。9月の予定もないままに。私たちの尊い夏が去っていく。夏休みが終わってしまう。
今だけの辛抱、もう少し我慢すれば。
自粛要請の度、そういう言葉を聞く。
でも、「今年の夏は」もう来ない。
たとえコロナがこの1年以内に収束したとしても。
来年の夏、私たち姉弟が一緒に過ごせるかどうかなんてわからない。
私が今やっている在宅の仕事は稼ぎが良くないので、なにか新しい仕事を探したいと思っているし、弟も無事に内定を得た暁には家を出るかもしれない。高校生になった弟はきっと夏課外に追われてろくに夏休みはないはずだ。
つまり1ヶ月も毎日一緒に過ごせる夏なんて、きっと今年限りの奇跡だったのだ。
後悔や悔しい気持ちは収まらないけれど、一緒に過ごせて楽しかった
本当は。
仕事が忙しい両親に変わって、中学生の弟をいろんな所へ連れて行ってやりたかった。いろんな経験をしてほしかった。姉弟三人で、素敵な思い出を作りたかった。
県内で有名な神社や、博物館や美術館。ショッピングモールや映画。自然の豊かな公園を歩いたり、日帰り温泉に行ったり、美味しい食事や甘いスイーツを食べたり。
なんでもよかった。本当は、本当は。最後かもしれない、大好きな弟たちとの夏をめいっぱい満喫したかった。
なんて。後悔はあるけれど。悔しい気持ちは収まらないけれど。
だけど、家でのんびり過ごした毎日も、悪くなかった。うん。決して退屈なだけの毎日ではなかった。だってあっという間だったもん。一緒に過ごせるだけで、楽しかったもん。
いつか、いつかコロナが終わったら。
必ずみんなで予定合わせて、遊びに行きたいね。
それぞれの環境が変わって実家から離れても。今はスマホがある。いつでも顔も見られるし。話せるし。いつまでも仲良しの三姉弟でいられたらいいな。