ありきたりな質問だ。
「志望動機」「学生時代に力を入れてきたこと」そして「人生で挫折をした経験」。

「御社を志望した理由は、○○という経営理念に強く共感し~(以下略)」
「学生時代は、サークルでの活動とアルバイトに精を出しました(以下略)」
きっと今でも前の2つはすらすらと語ることが出来ると思う。

大きな挫折を感じたことがない。わたしの人生こそが挫折なのか?

ただわたしは、挫折経験を語るのが大の苦手だった。なぜなら大きな挫折を感じたことがなかったから。わたしはこのことを「挫折経験問題」と呼んでいる。
当時は確か「アルバイト先でミスをしてしまった(以下略)」のような、とりわけ自分では挫折とは思っていないが、当たり障りもなく、かつ自分の力で解決できた話を、大して思いもないくせに、いけしゃあしゃあと語っていたような気がする。

第一志望の企業から内定をいただいてからも、挫折経験問題からは逃れられなかった。
内定式の日、自分の人生を曲線グラフに表して発表することになり、各々が自分のこれまでの人生を赤裸々に語った。

同期のなかには、小学生でけがをして、やっていたスポーツを諦めなければならなくなってしまったことや、中学校でいじめられていたこと、高校受験に失敗して悔しい思いをしたことなど、モチベーションの基準値を大きく下回るマイナスな時期があった。だけどそれを乗り越える大きな経験をしていて、曲線は大きく揺れ動いている人がほとんどだった。でも、わたしにはそれがなかった。

一人だけ基準値からつかず離れず、平凡な日々を生きてきたんだなと思った。
沈みがないなんて良いに越したことないのに、もはやこのなんの変哲もないわたしの人生こそが挫折なのか?とも思ってしまった。

第一志望の大学に入れなかったことも、わたしにとってはプラスの経験

第一志望の大学に入れなかったことを挫折ととらえるなら、一応わたしも挫折はしている。
だけど第一志望の大学に並々ならぬ思いがあったわけでもないし、自分が入った学校は校風が合わなかったことと就職課の人と馬が合わなかったこと以外は、授業も楽しく、教授にも友だちにも恵まれて、結果最高の人生の夏休みになった。
つまり、わたしにとっては挫折に値しない、むしろプラスの経験だったのだ。

就活生は適性検査の勉強をし、自己分析に励み、足しげく就職課に通っては、聞かれる質問に対してどう答えれば内定をもらえるかという決められたレールを歩いている(時代は変わっているかもしれないが、わたしの知る限りではそうだった。わたしは前述のとおり就職課の人とバチバチだったので、就職課にお世話になることはほとんどなかったが)。

「内定はゴールじゃない」「就職はゴールじゃない」と言われるけれど、面接官たちが言う「ゴール」に向けてコマを1マス進めるためには、挫折を乗り越えた経験を絞り出して語るしかないのだ。

新卒の問題解決能力を問うために、挫折経験は本当に適切なのだろうか

問題解決能力を問うためにこの手の質問を投げかけていることは、入社してすこしばかりのころ、新卒の採用担当をさせてもらったときに知った。
だけどこのテンプレ化された就職活動(ここで指しているのは新卒採用)において、問題解決能力を問うために行う質問として、これは本当に適切なのだろうか、と思う。

実際わたしはこの挫折経験を語った会社を、新卒1年目の秋に退職している。

現在は、好きなことを好きなだけ語らせてくれて、同じ目線で面接をしてくれた面接官のいる会社に転職し、のびのびと楽しく働いている。

就職活動においての挫折経験って、必要不可欠なトピックスですか?