私はこの土地から離れたくない。
何か特別ステキなものがあったり、離れられない確固たる理由があったりするわけではない。ただ、この土地が、街が、場所が好きだからだ。

今私が住んでいる場所は、周りからすれば良いと言い難い面もある。
線路や駅が近く、遮断機の音や電車の走る音は朝早くから夜遅くまで聞こえてくる。駅のアナウンスの音が家の中まで聞こえるほどだ。家の前の道路はバイクが大きな音を立てて走り回ることもあり、工場が多いため空気も澄んでいるとは言い難い。昔は公害で有名だった場所でもある。

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でも、私はここが好き。
スーパーや薬局、コンビニが近くにあり、銀行も近くにある。車がなくてもたいていの物が徒歩で手に入った。少し遠出をしたいと思ったとしても、駅が近いので観光地へも気軽に行くことができた。
田舎すぎるわけでも都会すぎるわけでもない。人通りもそこそこの今の土地は、私にとっては居心地が良かった。人混みが苦手の私にとっては便利ではあるが、人が多くはない、この絶妙な街がたまらなく好きなのだ。

そして私は、今住んでいる場所が、他の人たちにとっての「第二のふるさと」にしたいと考えている。
ふるさとと言えば、自分が生まれたところ。自分が育ったところ。自分が生まれ育ったところになる。それに対して、第二のふるさとは、旅行や趣味などで訪れ、思い入れのある土地である。ふるさとは、その人自身の生まれ育った場所だから、変えることは難しい。でも、第二のふるさとだったら生まれや育ちは関係ない。第二のふるさとなら、誰にだって、どこだってなり得るものだ。
だから、他の人にとってのふるさとは難しくても、第二のふるさとは可能であるということだ。

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私は将来、自分の店を出し、そこで働きたいという夢を持っている。そしてその店では、普段はカフェをして、週一や月一でイベントを行ったり教室を開いたりして、地域の人と関わり合える空間を作りたい。
今は学校の先生と塾の先生の二足の草鞋だが、最終的には一つに絞りたい。いや、絞るのではなく、学校の良いところと塾の良いところを両方取り入れたい。学校と塾、共に仕事をしてきたことで、それぞれのメリットとデメリットが分かる。
これからは、一人ひとりとの時間を大切にしながら、子どもの主体性を尊重できる先生を細々と続けていきたい。難しい夢であることはわかっている。でも、今までの経験を活かすにはもってこいだと思っている。自分で未来を切り開き、より良い環境を作り上げていく。
そんな場所ができたらきっと、そこは私にとって今まで以上に大好きな、かけがえのない場所になると思う。

いつか「おかえり」や「ただいま」、「いってらしゃい」や「行ってきます」を大事にするお店を作りたい。地元を愛し、愛される優しいお店を作りたい。そうすることによって、「またこの店に寄りたい」「ここへ来たらあたたかく出迎えてくれる人がいる」「帰ってきてよかった」とそんな風に思ってもらえるのだはないかと、密かに思っている。

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お金を貯めて、自分も周りも心地よいと思える場所を作り、いつかより多くの人に幸せを提供できる人になりたいと願うようになった。
私のふるさとが、多くの人たちにとって素敵な場所になってほしい。私のふるさとが他の誰かの第二のふるさとになり、たとえ遠くに行ってしまったとしても、また帰りたいと思える場所にしたい。そして帰ってきてくれた時には、笑顔でおかえりと声をかけたい。

私にとって離れがたいふるさとは、他の人にとっての第二のふるさとになるよう、私は大切な彼とともに、ステキな店を築きあげたい。