彼氏と住むからあんたに出すお金は一銭もない
17歳高校2年生の夏だった、母からそう告げられたのは

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もともと勉強が苦手だった私は中学生の頃数学の点数が一桁台だった。
それが高校に入学し、先生の授業が面白くてまじめに取り組んでいたら、いつの間にか学年トップ争いをするほどに数学が得意になっていた。

芋づる式に他の教科の成績も伸びて、行きたい大学も何となく絞れてきた時の青天の霹靂だった。

一気に何にもやる気がなくなってしまった
学校にもあまり行かなくなった

今思うとやりようはいくらでもあったはずだとおもう
何度も何度もその瞬間の気持ちがよみがえる
だけど高校時代の私のメンタルはガラスよりも脆かった

入学金がどうにかなったとしても学費プラス寮もしくはアパート代や生活費を援助全くなしでどうにかできる自信がなかった

就職の道を選ぶにしてもやりたい仕事を今から探せだなんていわれても何も思いつかない
とりあえず公務員の試験を受けるために高校が行っていた公務員試験対策講座に通うことにした

けれど今まで勉強方法が全く役に立たない
内容も全く違う面白くない

今まで楽しかった部活の演劇も全く楽しくなくなった

色々と悩んだ結果、母に頭を下げて引っ越し費用だけは出してくれませんかと泣きながらお願いした

大学に行きたいという気持ちをあきらめて私は知らない土地で劇団に所属し役者として生きる道を選んだ

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2年間所属したその劇団は頑張れば頑張るほどむなしい気持ちになるところだった。

次に舞台の裏方の仕事に回ることにした。
それなりに楽しく仕事したけど、一生かけてやりたいことか?と考えると、なんだか微妙だった。

だから私はそこもやめるという道を選んだ。
なんで私の人生こんなにうまくいかないんだ。
すべてを恨んだ。

いいなあ兄ちゃんは行きたい学校に通えて。
いいなあ同級生たちはみんな画面の中できらきら楽しそうに笑っていて。
いいなあお母さんは好きな人と幸せそうに暮らしていて。

自分の姿を見つめてみる。
給料も少なく貯金もない状態でスタートしたその日暮らし。
お金がなさ過ぎて水と塩だけで1週間過ごした。
美容室にも定期的に通えなくて髪はぼさぼさ。
メイク道具も使う間もないほど働いてぼさっとした女が鏡に映る。
手は仕事の関係でガサガサぼろぼろ。

私だって環境が整っていたら。

20歳ってもっとキラキラしたもんじゃないのか。
どろどろとした感情に支配されていた。

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いよいよ路頭に迷った私は占いに出会う。
全くと言ってもいいほど信じていなかった分野だった。

なのに友人が楽しそうにカードを広げて占いをしている姿を見て、なぜだかこれだという感覚が身体中を駆け巡った。

いいなあではなくてやりたいと思った。

その足でカードを買いに行って、2日後には占いの館の面接の日程を取り付けていた。
それから今日に至るまで私は占い師として生きている。

年間千を超える人たちの話を聞いて自分自身のスキルを磨き続けて、貯金は相変わらずあんまりない。
贅沢ではないけど1日3食ご飯が食べられる。
美容室にも通えるようになった。何なら指名とかしちゃって。
メイク道具にもこのメーカーがいいってこだわりが出た。
周りがどうかは知らないけど自分のことをかわいいと思えるようになった。
ハンドクリームの存在を覚えた。

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もしも私があの時違う道を選んでいたら。
何度も何度も何度も考えた。

あの時いろんな制度を調べて大学に通えていたら。
私は今の占い師を超えるほど、納得のいくやりがいある仕事に出会えていただろうか。

あの時劇団をやめず続けていたら。
いつか頑張ってよかったと努力した分が返ってきただろうか。

あの時裏方をやめずに続けていたら。
もっと楽しい瞬間が来ていただろうか。

いや、おそらく今以上に納得がいく結果にはならなかった。

以前の私は結局周りのせいにして誰かのせいにして、自分で動くということを放棄して逃げていただけだ。

選んですらいなかった。

でも今は違う。

いろんな失敗や経験をして学んだことを活かして、自分できちんと道を選んで生きている。

そしてあの時の私と同じように動かない動けない・事情がある人が、少しでも楽しく後悔の少ない選択ができるよう、占いを通して伝えることが今の私の選んだ道だ。

これから先の人生、まだまだ多くの困難が出てくるかもしれない。

でもそれを乗り越えるためのカギは、今まさに進んでいる道を自分の意志できちんと選んでいるかどうかだ。

今が過去になった時あの時こうしていればという後悔ではなく、あの時この道を選んだからこそ今の自分が楽しく生きていると思えるように。

今日も私は選び、歩み続ける。