現代社会において結婚への価値観は多様化している。
最近結婚した私だが、きっと私の場合は世間体を気にした焦りの結婚だったのではないかと思う。

オシャレや恋愛に関わることも憧れることも禁止という気がしていた

幼い頃の私は結婚に憧れを抱いていた。素敵な人と出会い、思い出を重ね、ロマンチックなプロポーズをされて、ずっと幸せに2人で暮らしていく。そんな誰もが一度は思い浮かべるような幸せが私にも普通に訪れると信じていた。しかし年齢を重ねるごとに、これがどんなに困難で貴重なことであるかを思い知らされる。

小学5年生の夏休みに激太りした私は彼氏がなかなかできなかった。当時の私は、オシャレや恋愛はかわいい子のためにあるものだと考え、かわいくない自分は関わることも憧れることも禁止されているような気がしていた。ただ、老後くらいなら夢をみてもいいのではと思い、友達には「孫に囲まれて死にたいんだよね。そのためには子供産まなきゃだし、結婚しないとね。恋愛はしなくてもいいから、旦那は探さないと」なんて笑いながら話していた。ほんとうは結婚までの過程にも憧れていた部分はあったのに。

そんな私はついに社会人となり、彼氏いない歴=年齢を更新し続けていた。社会人2年目となった春、焦った私は貯めたお金で綺麗になるための努力を始めた。おかげで体型も意識も少しずつ変わっていった。
ダイエットを始めてから約1年後、人並みの体型になった私を職場の先輩が人生初の合コンに誘ってくれた。場違いなのではとも思ったが勇気を出して参加することとした。まさかそこで未来の旦那に出会うことになるとは思っていなかったが。

私はもっと刺激がほしかった。私は彼と別れようとしたけれど…

彼は参加男性のなかでは1番年下だった。私よりは2歳上だ。特に誰かといい雰囲気になったりはしなかったが、場はそれなりに盛り上がり、一緒に参加した先輩たちは食事と会話を楽しんでいたようだった。最後に連絡先を全員で交換する流れになったので私もその流れに乗った。連絡先の交換を断ることで先輩たちの楽しそうな雰囲気を壊したくなかったからだ。

翌日、参加者それぞれから送られてきた社交辞令に返事をした。他の人とはそれだけで終わってしまったが彼とはメッセージのやりとりが続いた。食事にも何度か行くことになり、告白されたので付き合うこととなった。すべてが初めてづくしだった私は完全に浮かれていた。彼が喫煙者だったことは気になったが、うまく行かなければ別れればいいと考えており、なによりも優先すべきなのは、更新し続ける彼氏いない歴をストップさせることだった。きっと私を彼女にしてくれるなら誰でもよかったのだ。

だが自分の予想に反して関係は続いていく。彼は優しい人だ。私のことをよく見ていて、私の考えを優先してくれる。おだやかでいつも笑顔だ。彼から漂う安心感からか、程よい距離感を保っていた。ただ私はそれを退屈で物足りなく感じることもあった。

付き合って2年が経った頃、彼から同棲の提案があった。私は迷った。同棲となれば簡単には別れられなくなる。私が憧れたドキドキするようなロマンチックなデートは彼とはできそうにない。私はもっと刺激がほしかった。
考えた結果私は彼と別れることにしたが、今まで大きな喧嘩もしたことないのに別れ話は急すぎる。そこでタバコを理由に同棲を断り、その流れで別れ話に持ち込めないかと考えた。ヘビースモーカーの彼は私よりもタバコを優先するだろう。
彼を食事に誘い、話をすることにした。
「やっぱり私、タバコ吸う人とは一緒に住めないと思ってて…ごめんね…それで…」
別れようの一言が言えず、気づくと涙が流れていた。別れを告げられない情けなさなのか、別れることへの寂しさなのか私には分からなかった。
彼の返事は私の予想しないものだった。
「辛かったのに我慢させちゃってごめん。タバコはやめる!1ヶ月吸わなかったら部屋探しに行こう!これ捨てて!」
と私の目の前にタバコとライターを差し出してきたのだ。
タバコより私を優先したことが単純に嬉しかった私はその返事に頷いてしまった。そして同時に、禁煙に成功して同棲がはじまったらそのまま結婚するんだろうな、と思った。私から彼を振ることはできない、と。

理想とはかけ離れた恋人生活とプロポーズに、疑問を抱きつつも

それから1ヶ月後、禁煙の約束を守った彼と同棲がはじまった。そのころには私は27歳になり、周りは結婚・出産ラッシュを迎えていた。
同棲は1年までと考えていた私は、半年ほど経ったところでそろそろプロポーズかななんて考えていた。しかし彼からは将来の話が一切出てこない。不安に思った私は同棲の期間について何度か彼に伝えたが、曖昧な返事しか返ってこなかった。そのまま日々は過ぎ、気づけば同棲期限は残り1ヶ月となっていた。

職場の同期は全員結婚した。子供が生まれた人もいる。私は彼に選んでもらえない。そんな焦りからか仕事もうまくいかなくなり、自分が価値のない人間だと思うようになってしまった。もうこれ以上は待つことができない。私は彼に、お互いに新しいパートナーを探すことを提案し、婚活を始めたいことを伝えた。私を選んでくれる男性を探す方が早く結婚できるような気がしていた。

すると彼は「じゃあ結婚しようか」と言った。私は、結婚してくれるならすればいいかと考え、その場で「うん」と返事をした。
その後婚姻届を提出し、私たちは夫婦となった。

入籍後、気持ちが落ち着き、冷静になった私は、理想とはかけ離れた恋人生活とプロポーズにほんとうにこれでよかったのかと疑問を抱くようになった。新婚でこんな気持ちを抱くのは彼にも悪いような気がして、私は世間体を気にして焦って結婚してしまったのだと後悔した。

だがこんな理由で離婚するわけにもいかない。結局はまた世間体が気になるわけだが、これからは彼と結婚したことが間違いではなかったことを証明していきたいと考えている。ドキドキするような甘い関係も憧れるが、これからは家族なのだ。空気や水のように、好きや嫌いでははかれない、必要不可欠でかけがえのない存在になりたいと考えている。
憧れていた結婚生活とは少しずれてしまったが、私にとっての結婚はやはり幸せになるための手段の1つなのだから。