「25歳になったら結婚しよう」と大学時代から付き合って2年目になる彼氏に言われた帰り道、私はさっき観た、思ったり思われたりする青春きらきら壁ドン映画のことを考えていた。
面白くない。彼氏はその映画を絶賛してたけど、私は反吐が出るほど面白くなかった。  

「よかったね!きらきらしてたね!」と笑っといたけど、それはバスで片道5時間かけて1ヶ月ぶりに会えた彼氏と楽しく居たかったからだ。その後、結婚に向けての話を彼氏は具体的にしてくれていたけど、あー、あと2年したら働かなくていいのかー、さいこうー、さよなら店長、さよなら愚かなる会社よ、社会よ、ジャム作りのプロとして出家いたします、あばよ!!とか平凡なことを考えて、嬉しさと安心感とつまんなさが浮いたり沈んだりしてぼんやりしていた。

このままつまんない主婦になるのか……と考えていたら

25歳で結婚ってなんか普通。なんかつまんない。
なーんにも成し遂げてないのに、このままつまんない主婦になるのか。
嗚呼無常。
愛してるけどつまんない助けて!
幸せってこんな感じ?
そもそも愛ってなあに?
あなたは私を愛してる?
浮気したのに、結婚?
ふざけんな!
私がおかしいのかな、狂ってるのかな、そんなもんでしょ。
分かってるよ。
彼氏の実家のおばあちゃんの皺、何犬かわかんないけど大きくて大らかな犬のロナ、映画館がない町、田畑、汚い川、コンビニの前の自転車、いつか子どもができて母親になっておばさんになってそのとき私は何考えてる?
どうなってる?
自己実現できてる?
これでよかったってあなたを愛せる?
そんな自分を愛せる?
面白くない。面白くない。面白くない。面白くない。
結婚全然面白くない。面白くない。面白くない。面白くない。面白くない。

面白くないから詳しくは書かないけど、二週間後彼氏と別れた。

残念ながら私のアイデンティティは、相手に預けられるほどではない

岡崎京子のマジックポイントという漫画に「つき合う相手には自分のアイデンティティを預けますからね」という言葉がある。私は2年間預けていた私のアイデンティティを返してもらったのだ。面白くない映画を観たとき素直に面白くないと言って生きていきたいから。
付き合う相手にアイデンティティを預けるならば、結婚相手の場合アイデンティティはどうなるのだろうか。
私は半分こになるのだと思う。
お互いのアイデンティティをそれぞれ半分にして交換する。肉まんと餡まんを半分こにしてたべるあの最高なやつみたいに。
残念ながら私のアイデンティティはまだ半分こできるほど育っていない。これから自分と向き合って、もっと努力して、自分面白いかも!人生面白いかも!と思えるくらいになったとき、半分こしたらもっと面白くなるかも!!と思える人とお互いのアイデンティティを半分こして、最高なやつ~~!って言いたい。
それができるなら、25歳でも80歳でも結婚、面白いかもと思える。