かがみよかがみでは、「母に実は伝えたいこと」をテーマにエッセイを募集しました。たくさんのご応募の中から、編集部が一番心に響いたエッセイを「かがみすと賞」として選ばせていただきました。
今回は、かがみすと賞1本、編集部選として2本のエッセイをご紹介いたします。
◆かがみすと賞
一人暮らしではなく、私は母の愛と暮らしている(山口宇海)
一人暮らしを始めてから、母と仲良くなったという山口さん。一人暮らしとお母さんからの愛にまつわるエピソードを具体的に綴ります。一人暮らしの山口さんの家に、遊びにくるお母さんはいつも好物の詰まった手料理を持ってきてくれたのだとか。そんなお母さんから山口さんへの誕生日プレゼントは、「女を磨く包丁」だったといいます。
「こんな良い包丁、私に似合うかな」と言うと、「その包丁に見合う女性になれるように、その包丁を送ったんだよ。女を磨く包丁だよ」と母は言った。今でもその包丁で料理を作るとき、その言葉は時折、脳内で再生される。
とても読みやすく、温かみのある文体も印象的でした。山口さんが「涙腺が緩んだ」と綴るたびに、一緒に涙が出そうになる、素敵なエッセイです。
◆編集部選
名前を呼ぶことさえ許されなかったあなたへ。追伸まで読んでね(カホリ)
カホリさんが生まれてすぐに亡くなったというお母さんへの想いや、成長するにしたがって身についた振る舞い。一文一文にカホリさんの率直な思いが詰まっているようで、目を離せず最後まで一気に読み切ってしまうエッセイでした。
お母さんが居たら今より幸せな人生だったのか、それは誰にも分らないし、どうだっていい。今私が居る、という事実だけでいい。母が居ない事実を隠そうともしないよ。そのことだって「私」を作り上げているから。
特にこの2文にはカホリさんのこれまでの人生の軌跡とこれからの歩みに対するご自身の気持ちがまっすぐ表現されていると感じ、胸を打たれました。素敵なエッセイを、ありがとうございました。
◆大嫌いなはずのたばこを吸っていた母。あの日の出来事が忘れられない(Mao.)
タバコ嫌いなはずの母。小学校から帰り、台所の扉を開けたMao.さんは、コンロの換気扇が吸い取れなかったタバコの香りに気づきます。
幼いながら、触れてはいけないことのような気がした。
焦った母を無視して、私は冷蔵庫から麦茶を取り出し飲んだ。極力コンロのほうには近づかないよう、気をつけて。
気づいていないふりをする幼い頃のMao.さんの様子や、お母さんの焦り。混ざる感情やその場の空気間が伝わってくるようでした。エッセイの後半、いつもと少し違う部屋の様子に気づくMao.さん。お母さんへの愛情と、それでも忘れられない出来事へのわだかまりが、率直に綴られた、心に残るエッセイです。
以上、「母に実は伝えたいこと」のかがみすと賞、編集部選の発表でした!たくさんの素敵なご投稿を、本当にありがとうございました。現在募集中のテーマはこちらから。みなさまからのご投稿、お待ちしております!