「失礼いたします!」
はきはきした大きな声で、そして笑顔も忘れずに。
頭も深々と下げ、一礼をして入室する。
自分の後ろにも、同じようにリクルートスーツを着て前髪をピンできちっと留めた就活生が「失礼いたします!」と一礼をして続けて入ってきた。
並べられたパイプイスに、みんな座る。
正面には笑顔もなく怖い顔をしたおじさんたちが鋭い視線を自分たちに向けている。

ああ、地獄だと思った。
私は面接が苦手だった。
面接の中でも、特に集団面接が嫌いだった。
たった数十分の集団面接で本当にそれぞれの人のよさを見ることができるのだろうかと、疑問を持っていた。

ライバルを意識してしまう集団面接。私は不安になりしんどくなった

面接官に質問されたら、他の人より先に、できれば1番に手を挙げたほうが印象がいいとか、でも、みんなの配分時間も考慮して、あまり長く喋りすぎてはいけないとか、大学の面接練習でよくアドバイスされたが、私はなんだかモヤモヤして嫌だった。

個人面接なら、自分らしく落ち着いて話せるが、集団面接になると、どうしても周りの就活生、つまりライバルを意識してしまう。
自分の返答は間違えているんじゃないかとか、色々考えて不安になりしんどくなってしまう。

他の就活生と競争しているみたいになるのも嫌だった。同じ目標に向かって頑張る仲間と思いたいのに。周りと比べたくないし、比べられたくない。
もっと一人一人をちゃんと見てくれ、そして、伸び伸びと面接をさせてくれと思った。

もし、個人面接だけでは、周りとうまく協力できる人かどうかの適性が分からないというのであれば、個人面接時に、在籍している社員さんと試しに軽い簡単な共同作業をしてもらい、チェックするようにしてほしい。
もしくはインターン制度を積極的に活用するとか。
やはり、たった数十分の集団面接で一人一人を判断するのは無理があると思う。

面接のために自分を偽った。切り抜けたが、モヤモヤは消えなかった

自分のときは、集団討論もあって、すごく悩んだことを覚えている。
積極的に発言できたり、みんなを引っ張っていける人ならいい。集団の場だと、どうしても緊張して発言するのが苦手な人は、どうしたらいいのか。それを克服しないといけないのか。
色んなタイプの人がいて、それぞれの良さがあるはずなのに、後者である自分は、コンプレックスを感じていた。

あのときの自分は、結局どうしたのかというと、面接のために自分を偽った。社交性のある明るくて元気な自分を演じたのだ。
面接の場では、何とかうまくいってそのまま切り抜けることができたが、モヤモヤは消えなかった。
果たしてこれでよかったのかと。
ありのままの自分は封印してしまっていた。

自分を偽らず正直に。落ちても、その会社とご縁がなかったと思おう

それから新卒で勤めた職場を退職して、転職活動をしたとき、面接を再び受けることがあったが、今度は自分を偽らず正直に話そうと思った。
これで落とされるなら、それはそれで、その会社とご縁がなかったと思おうと。
1つ目の職場でうまくいかなかったこともあって、一皮剥けて開き直ってたからかもしれない。

退職理由も正直に話した。
そして、必殺技として、「今、すごく緊張していてうまく喋れるか分かりませんが……」とあえて面接官に前置きをしておくことにした。
普段の自分でいいんだ、無理しなくていいと面接官に予防線を張っておくことで、リラックスして臨むことができた。

幸い、集団面接はなく、個人面接だけだったので、落ち着いて自分のペースで、真っ直ぐ思いを伝えることができた。採用してもらえたときは、ほっとした。

だが、それだけでなく、ありのままの自分を受け入れてもらえた気がして嬉しかった。
1つ目の職場の面接のときよりも、どこか達成感があって、心のモヤモヤもなかった。 

ありのままの自分をさらけだしやすいように、面接も変わっていってくれたらいいなと思う。
自分みたいに、面接で自信をなくしたり、コンプレックスを感じたりすることがなくなればいいなと。
だって、誰しも必ずきらりと光る素敵な原石を持っているのだから。