私は大学時代、2年生後期で半年間休学した。
2回目の2年生として復学した時は、知り合いが誰もいない状態で新学期がスタートした。
自分の殻に閉じこもっていた時期で、挨拶やグループワークの話し合いで話す程度で、一人で授業を受け、終わるとすぐに帰宅していた。
半年後にゼミが決まった。学部でも有名な、真面目で明るい人気ゼミ。
顔合わせをした同期の中で、仲良くなれないだろうと思っていた彼女から、ゼミが始まって数カ月後にランチに誘われた。
正直、ランチに行った時盛り上がった感じがしなかったので、それで最後だと内心思っていた。
何度か鳴るインターホン。玄関には誰もいないけど、彼女の車が見えた
私はとても怖がりで、インターホンが鳴ってもすぐにドアを開けることはない。それがたとえ、お昼でも、だ。
そんな私の家のインターホンが、夜の21時過ぎに鳴った。
何度かインターホンが鳴ったが、出るわけがない。怖くて怖くて、息を潜めて留守を装った。
数分後にのぞき穴を見に行くと、玄関には誰もいなかったが、目の前の駐車場に見慣れた車が停まっていた。
赤のハスラー。彼女の車だ。
気になったので、外に出て車を見に行ったが、中に人は乗っていなかった。
「そういえば、同じアパートにサークルの友達が住んでいると行っていたから、遊びに来たついでに寄ったのかな?」
とりあえずLINEしてみたが、返事がない。私は、メモを書いて、車のワイパーにはさんで家に戻った。
数十分後、またインターホンが鳴った。友達が家に来るのは初めてだ。少し緊張しながら、ドアを開けた。
「はーい」と返事をしながらドアを開ける。
そこには、涙で顔を濡らした彼女が立っていた。
「別れた」。太陽のように明るい彼女は、めちゃくちゃ泣いていた
驚いた、と同時に動揺した。
いつも明るく、みんなの人気者で、太陽のような子が、泣いている。めちゃくちゃ泣いている。
さっきちょっと片付けておいてよかった、と思いながら部屋の中へ上がってもらう。
泣きじゃくる彼女にティッシュを渡し、どうしたのか聞く。
「別れた」と、当時付き合っていた彼氏から別れようと言われたこと、私が出なくて友達と電話しなら近所を歩いてたこと、どうしようと、泣きながらぽつぽつと話すのを、隣に座ってただ聞いた。
なんと言ったか覚えていない。覚えているのは、まだそんなに仲が良いとは言えない私の家に、夜中に突然来るくらい頼ってもらえているのかと、嬉しかったこと。
それが、仲良しの友達が近くに住んでいないから、という理由だとしても、私は本当に嬉しかった。不謹慎だけど。
話して泣いたら少し落ち着いたらしく、「泊まってもいいよ?」と言った私に、「ううん、大丈夫。明日もあるし帰るね。ありがとう」と言って彼女は帰っていった。
彼女と急激に仲良くなれたのは、あの夜、お互いに心を開けたから
私と彼女は、あの日以来急激に仲良くなった。彼女は私に弱いところ見せ、私は人を呼ばない(呼ぶ人もいない)家に初めて人を上がらせたことで、お互いに、心を開くことができたのかもしれない。
ともに学び、遊び、旅し、そしてシェアハウスで住むことにもなった。仲良くなったのは遅かったけれど、誰よりも一緒にいた。
彼女の考えや生き方は、私とは全く違うけれど、一緒にいて楽しく、刺激的で、おもしろく、尊敬でき、心強かった。
私の大学生活は、彼女がいたことでたくさんの思い出ができ、色鮮やかに変わった。
あの夜があったから、これからもずっと仲良くしたいと思える、大切な友達になれた。
今は、遠く離れて、中々会うことができないけれど、彼女も頑張っているということが私を奮い立たせてくれる。
彼女にとって私も、そんな存在でいられたらいいな。