成人式で久しぶりに小中学校の同級生と再会した。
中学生の頃はスマホを持っていなかったため、ほとんどの友達と連絡を取ることもなく、本当に久しぶりで、行くまでは不安もあったが、行ってよかったと思うくらいに楽しかった。見た目は変わっていても、変わらない距離感がそこにはあった。
これは、久しぶりに出会っても、変わらずにいた同級生とのことである。
◎ ◎
私と彼は、中学校で同じクラスになった。中学校は複数の小学校から集まってくるので、半分ほどが知らない顔ぶれだった。
入学して間もない英語の授業、自分の名前をローマ字で書いた名刺サイズの紙をクラスメイトと交換し、自己紹介し合う、という内容の日があった。先生は「男女それぞれ1人ずつと交換しましょう」と言った。
先生は、クラスメイトと仲良くなれるようにという考えだったのかもしれないが、まだまだクラスに慣れていない時期、私にはとても勇気のいることだった。そんな時、彼が声をかけてくれたのである。それが、私と彼の、初めての会話だったと思う。
彼は運動神経がよくて、明るくて、人気者で、かっこよくて、彼女も絶えないような人だった。一方で私は、おとなしくて、あまり目立たない女子だった。
何がきっかけで、話すようになったのか、あまり覚えていないが、クラス替えがあったにも関わらず、3年間同じクラスで、同じ学習グループになったり、席替えで近くになったり、友達が仲が良かったりしたことで、気づいたらお互いのことを下の名前で呼ぶようになっていた。
◎ ◎
私は地元の高校に進学した。地元ということもあり、中学校から何人もの子が同じ高校に進学し、彼もそのうちの1人だった。高校ではクラスが離れ、関わることは減ったけど、たまに会えば、手を振ってくれる、中学の頃と変わらない彼がいた。
恋愛関係にはならなかった私と彼。恋ではなかったけど、人として好きだったし、大切だった。私にはないものばかりの彼がずっと眩しかった。
高校を卒業し、それぞれの道へ進む。中学生の頃とは違い、スマホを持っていたけれど、連絡先を交換することも、追加しようと思えばできても、しないままだった。
高校を卒業して、私は短大へ通う。そんなある日のことだった。地元の駅でばったりと彼に会ったのである。
バスを待っている間、久しぶりに話をした。久しぶりのはずなのに、そんなふうには感じられないくらい話せた。同じバスに乗り、別々の席に座る。お互い、スマホを見たり、音楽を聞いたりしながら、バスに揺られていた。
彼の降りるバス停がやってくる。私の横を通りすぎる時、手を振っていった。降りた後も、窓際に座る私に手を振ってから歩き出す彼だった。
◎ ◎
そして、成人式の日。コロナ禍で縮小された式ではあったが、それぞれに再会を楽しんでいた。私も久しぶりの友達との再会を楽しんでいた。そんな会場で彼とすれ違った。
お互い変わったことも多いけど、私の下の名前を呼び、手を振ってくれた彼はあの頃と変わらなかった。時間が経っても変わらない距離感が私たちの間にはあった。
今まではいつだって、彼の方から声をかけてくれていた。英語の授業だって、バス停であった時だって、成人式の日だって。バス停で会った時、あれ?もしかして?と思っても、覚えていないかも……と自分から声をかけられずにいた私。
この先、地元を離れるまでは、またどこかで会うかもしれない。そんな時は、彼がしてくれたように、今度は私から、笑顔で手を振りたい。