現在、地元の近隣に住んでいるのだが、買い物などで月に数回は帰っている。

昨年車を手に入れたのもあって、思い立ってすぐ行けるのがうれしいし、ドライブも兼ねられるので移動自体が良い気分転換になっている。これであとはガソリンがもう少し安ければもっと気兼ねなく行けるのだけど……。

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自分でハンドルを握るようになって思うのは、「私って、なんとなくでしか地元の街並みを見ていなかったのだな」ということ。

幼い頃から、母の車の助手席が私の特等席だった。街に点在するパン屋さんを訪れ、小学生の頃は博物館・資料館巡りをよくしていた。図書館をはしごしたり、カフェを開拓したりなど、街の端から端まで見てきたんじゃないかという気がする。
さらに母が新しい道筋を探すのが好きなのもあって、色々な細道にも(時々行き止まりながら)突入していった。

しかし、いざ自分で運転するにあたって道順をシミュレーションすると、大きな通りでさえ断片的にしか覚えていないことに気づく。「この場所」と「あの場所」をつなぐ道は確かにあるのに、思い返しても一部分が真っ黒になってワープしてしまうのだった。

空間把握能力が弱い私だからかもしれないが、助手席で景色を楽しむだけではどうも道を正確に覚えられないらしい。それを自覚してからは、帰省して母の車に乗るたびに、どのように道がつながっているのかを意識して見るようになった。
すると何度も見ているはずなのに、「ああ! ここの道があそこに繋がってるのね!」などという新たな発見として吸収されていく。

いや、実際は全部頭に入っていたのに、それを全部ぐちゃぐちゃにして引き出しに入れていたのだ。それがここにきて初めて整理整頓、テーピングが施され、未だシワシワながらも一枚の地図になってきたのである。

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そして先日、私はやや緊張の面持ちで車を走らせていた。ペーパードライバーなのもあって、今までは同じような場所・同じようなルートを行き帰りすることが多かったのだが、今回初めての場所に行くことになったのだ。

そこを含めて目的地は全3箇所。しかも場所は比較的バラバラ。前半の道順は出発前にシミュレーションしていたが、後半はざっくりとしか決めていなかった。
いつもは一部エリアだけをまわり、その道順も一から十まで決め、途中で目的地を追加されると大慌てしたこともあった私にしては随分な変化だった。

結果、初めてのコインパーキングで盛大にもたついたり、後半は運転しながら頭をフル回転させることになったりして、帰宅後はぐったりしてしまったが、初めて家と地元を往復したときぶりくらいの達成感があった。

頭の地図はどこも真っ黒になることもなかった(途中怪しかったけど)。自分の手で地元をまわれて、そしていつも運転してくれていた母に少しだけでも近づけたような気がして嬉しかった。

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といいつつ、実家に帰省したときは今でも母の車の助手席に陣取っている。
自分で運転する楽しさも知ったが、やっぱり大好きな地元の風景を眺めながら、ペラペラとしゃべりまくるひと時は何ものにも代えがたいのである。