お風呂に入る度、鏡に映る自分に薄い絶望感を抱く。
私はそこそこ太っている。身長159センチで、多分55キロくらい(最近は本当に太りすぎている気がして怖くて測っていないから、あくまで推定だ)。それも、色白でムチムチ、みたいな方向性ではない。全身がアトピー跡でところどころ黒ずんでおり、なんだか汚い。それでいてセルライトなども浮かび上がっていて、わりと最悪だ。骨格自体ががっしりとしていて、太り方も柔らかい太り方ではない。擬音を与えるとするなら、ドシッて感じ。

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私は4月の末に3年半付き合っていた彼氏と別れたため、最近はアプリなどを使って何人かの男の人に会っている。
それで、大体、次も会おうと誘ってもらえる。話は大して盛り上がっていなくても、だ。あと多分、話した感じで、私がワンナイト的なチャンスを狙えるタイプでないことは伝わっているはずなのに。
私はそのことを、ずっと不思議に思っていた。先述したとおり私は太めだ。さすがにセルライトの存在まではわからないだろうが、半袖の服を着ているからアトピー跡などは見えているはず。顔も別に可愛くはない。精一杯タレ目に見えるよう、下瞼にアイシャドウを塗ってはいるけれど、釣り目のキツネ顔だ。どっしりとした体型が与える強そうな印象を補強している。絶対的にナシではないけれど、微妙ではある、って感じだと思う。
だから、一回で切られることがないのが不思議だった。私はモテそうなタイプはあまり好きではないので、王道陽キャイケメン、みたいな人とはそもそも会っていなかったせいもあるかもしれないけど。それでも、ちゃんと好きになれそうな人を、とは思っていたから、それなりの爽やかさがある人を選んでいた。今の時代、いくらでも次の相手を探せるだろうに、なんで私をもう一度誘ってくれるのだろうか、と思っていた。

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が、さっき、ハッと気がついた。
彼らが私に声をかけてくれる理由が、わかったのだ。
私が、怒らなさそうだからである。
私は、マジで怒らない。カッとくるとか、そういうことは、まず無い。
多分、私が選んでいるような、「そこまで見た目が劣っているわけでも無いけれど、行動力や存在感が弱めなため手近で彼女を作ることは出来なかった感じの人たち」は、怒られることを一番嫌っている。威圧されることを、最も恐れている。
社会的地位や外見が明らかに上位な人物であれば、そういうことをわざわざ恐れる気持ちは弱いのではないかと思う。十分な自信があれば、パートナーに多少怒られるくらいのことは気にならないのではないか、と。
だが、きっと私が会っているような人たちはそうではない。「あんまり怒らない」ということが、恋人候補への絶対条件なのだ。
要するに、私は多分舐められている。そんなに美人じゃないけど、その分穏やかそうで、色々許してくれそうな人だと思われている。一昨日、友達の紹介で会った人と飲んでたんだけど、その人も言っていた。「僕、女の人は完璧じゃない方が好きなんですよね。ちょっとコンプレックスとかある人の方が良くて」そう言いながら、私が座る椅子の背もたれに腕をかけていた。

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とか言いつつ、私もわりと、彼らのことを舐めている。ここまでの文章を読めば、大体察せるとは思うけれど。行動力や存在感が弱めなため手近で彼女を作ることは出来なかった感じの人たち、とか言ってるからね。明らかに舐めている。
そんな関係性の築き方、素敵ではないけど、かと言って自分よりも明らかにハイスペの相手と会う気にもならない。怖いし。舐めたくなるような雰囲気の人の方が、可愛いなって思う。

周りと素敵な関係性を築きたければ、自分を磨くことに力を尽くすべきなんだろうなぁ、と思う。その分自分に自信をつけて、それに釣り合う相手を見つける。きっとそれが、より良い未来に繋がる選択なのだ。
わかってはいるけれど、出来ないなぁ。まず痩せられない。仕事中に甘い飲料水を飲んだり、お菓子を食べたり、飲み会でビールをがぶがぶ飲んだり。その場限りの幸せを、捨てることができない。きっと私は、ずっとこのままだ。仮に特定のパートナーが見つかったとしても、どこか相手に舐められてるなって感じながら、自分もその相手のことを舐めてて。まぁでも、仕方ない。たまに「舐めてるだろ」ゲージが満タンになったときには、こうやってエッセイにでも書いて、見知らぬ誰かに聞いてもらおう。私は多分、それで大丈夫。