先日会社の飲み会で男性ばかりの席に呼ばれた。「はーい!」と無邪気にテーブルへと突くと、早々にこう聞かれた。
「女性からするとどこからがセクハラなの?」
そう聞かれ、少し悩んだ後「人にもよりますが、性的な部位に関しての話題は完全NGでは?胸とか、お尻とか」と答え「まあ私はボーダーラインゆるゆるなんで、細かいことは気になりませんがね!」と明るく言った。
今思うと、その言葉必要だったか?と疑問に思う。そして、私の中のボーダーラインはどこへいってしまったのだろうか、と振り返る。
男社会で生きてきた社会人生活
話を過去に戻したい。私は新卒でテレビ業界へと足を踏み入れた。私が入社したのは女性の社員よりも、圧倒的に男性のほうが多かった。性差が激しく見て取れるテレビ番組が多い点からわかるように、この業界は男性の方が多い。今ちょうど流れているテレビも、女の子を媚びさせる男性MCの構図が成り立っていて萎えた。
社内で飛び交うハラスメントの応酬。一番衝撃的な記憶として残っているのは、ちょっと派手な化粧をしている女の子に「ビッチ」と罵る男性上司の姿だ。さすがにドン引きした。
だけどそんな環境で数年過ごした結果、感覚は麻痺してしまった。男性に交じって、女性の容姿について語ることも度々あった。よくよく考えたら大学時代から下ネタOKだったし、もともと可愛い女の子が大好きだったので、あっという間にその感覚になじんでしまった。
そうこうし、私は2社目の会社へと移る。男女比は半々ぐらい。そこで出会った、優しくて雰囲気が柔らかい、お上品なお姉さん。一緒に仕事をしていけばいくほど、どんどん大好きになっていった。ありがたいことに向こうも好いてくれたようで、一緒に食事に行く仲にまでなれた。
仲良くなって数ヶ月が経ち、ちょうどハロウィン時期の話になる。女性社員同士で、ハロウィンのコスプレの話になった。もちろん全員コスプレする予定なんてなかったけど、そこで話題になったのが「あのお姉さんになんのコスプレをさせたいか」だった。ナース、メイド、某美少女戦士のコスチューム、女医…いろんな案が出て我々は妄想で大満足したのだった、で終わればただの雑談だったと思うのだが、その話はしっかりとお姉さんの耳に届いていた。というか、普通に「女医さんの格好しません?」と言ってしまった気がする。記憶が曖昧なので、もしかしたら言ってないかもしれない。だけどそんな妄想トークを一人の女性に対して繰り広げたのは事実だ。ちょっとエッチなコスプレをしてほしい、という下品な話を。
男性が言うから性的なのか。女性が言ったら許されるのか。そんなことないだろうけど、私自身セクハラのボーダーラインがわからなくなっていた。
きっと男社会に私はボーダーラインを捨ててきたのだ。うまくなじめるように。うまく泳げるように。そして、うまく自分を守れるように。
己の感覚を男性に近づけて、あたかも男性であるかのようにふるまって、男だらけの環境で「私はあなたたちの性の対象ではない」と示していた。セクハラ発言を言われる立場から、言う立場へ。私は逃げたのだ。きっと私なりの防衛手段だった、なんてただの言い訳に過ぎないな。
こんな私がフェミニズムについて語る資格なんてあるのか、とも思うけど、最後まで書かせてほしい。
セクハラ発言にはしっかりと「NO」と言って
今でも男性の比率のほうが高い業界や分野も多い。その中に飛び込む女の子だっているだろう。だからあなたたちに言いたい。「セクハラ発言には乗らないこと」これは男女限らず全ての人に当てはまる。私のように、女性同士だからセクハラにならないでしょ!と高を括ってセクハラ発言をしてくる人だっているはずだから。自分が不快だと思ったら、その不快感を示して欲しい。そうでないと言ってる本人は気づかない。
そして、自分もセクハラを言う側になりうる可能性があることも、頭の片隅でもいいから入れておいて欲しい。私のように弱い人間でなければ、大丈夫だと思うけど。
最近こんなことを考えている。最初から女性の多い会社に入っていたら?きちんとフェミニズムについて考えている女性が身近にいたら?私はもう少しデリカシーのある女になっていただろうか。
そんな想像をしたってもう戻れないし、ここからまだまだ取り返せるはずだから己の行動を改めるしかない。セクハラで傷つく子を減らすために。
ペンネーム:なつぺぃ
ぺーいと鳴くネコ、もとい普段は仕事に追われる社会人。
書くことで、君も、私も、救われればいいのに。
20代最後に足掻いていきたい。
Twitter:@ntpeeeei288
10月11日は国際ガールズ・デー
「女の子らしく」「女の子なんだから」……小さな頃から女性が受けてきたさまざまな社会的制約。ジェンダーに関わらず、生きやすい社会を実現していこうと、「かがみよかがみ」では、10月11日の国際ガールズ・デーにあわせ、「#5年後の女の子たちへ」をテーマとしたエッセイを募集しました。