• 2017年NHK入社。「あさイチ」など生活情報番組の制作を担当した後、SNSと放送を横断したスマホ発のジャーナルプロジェクト「不可避研究中」の立ち上げに携わる。

    立野真央ディレクター
    立野真央ディレクター
  • 2009年朝日新聞入社。奈良、徳島で記者、大阪で紙面編集を経験。社内の新規事業創出コンテストに応募し、19年8月に「かがみよかがみ」を立ち上げ、編集長に。

    伊藤あかり編集長
    伊藤あかり編集長

立野真央ディレクター(以下立野):以前私が制作を担当していた番組では、ご夫婦で出演していただくときに、夫にだけ名字をだして、妻の方には名字をださなかったと聞きました。今は両方に名字をつけるか、先に登場した方に名字をつけています。ほかにも、旦那さん、や奥様というテロップも、今は夫、妻とだすようにしています。

伊藤さんは伝える側として何か気をつけていることはありますか?

立野真央ディレクター
立野真央ディレクター

男の子と女の子で無意識に質問内容変えていた

伊藤あかり編集長(以下伊藤):10年前、高校野球取材していた時に、球児の「監督さんを男にしたい」というコメントを普通に使ってましたね。球児が言ったところで、私が書かなきゃいい話なんですけど、そこに私は違和感を持てなかった。反省。過去記事を検索してみたんですけど、まだ今年の夏でも使っている地域がありました。

マネジャーの扱い方もそうですね。女子マネジャーなら、「おにぎり作っています」「ユニフォーム洗濯してます」と聞くと「あーそうなんだ。おにぎり何個握るの?」とか聞いて、そのまま書く。だけど、男子マネジャーの場合は、「おにぎり作っています」「ユニフォーム洗濯してます」と聞くと「それ以外にも何かしてる?」ともうワンクエスチョンなげる。そこで「ちょっと分析とかしてます」という発言がでたら、そっちを書くなあと。

それは私の中で、男子マネジャーに対して、「おにぎり握ってる、洗濯してる、だけだったら、戦力としてたりてない、みたいに思われちゃうのかな、もうちょっと、頭使ってることをやってる、みたいなことが必要なのかな」って思っていたんです。

 これはこれでまた問題で、おにぎりは戦力にならなくて、分析は戦力になってるっていうのもめちゃめちゃ偏った考え方だなと思います。どっちもチームに必要な仕事なのは間違いないし、おにぎり握りたくてマネジャーになる子もいるわけですし。

立野:まあでも男だから女だから、というくくりをなくしてしまえばどうでもいいんですよね、本当は。

伊藤:そうですね。ただ、私の場合は、男の子と女の子で無意識に質問内容変えていたのは最低でした。高校野球の報道の仕方は、ジェンダー的に反省しなきゃいけないことがたくさんあると思っています。

新聞は過去記事が「法律」 性役割の再生産になってない?

 立野:女性という接頭語をすごいつけてしまってるな、と自社もふくめてすごい思うんです。女性ミュージシャン、女子サッカー選手、女子学生、とかいうのをみるたびに、これは男だったらついていたのか問題をすごい考えてしまいます。なんか「女子学生、被災地から情報発信」とかかいてあって、これ男子だったら男子学生って書いてるのかな、はすごい気になります。

伊藤:あと女性だと年齢がセットになりますよね。見出しも「20代女性がなんとか」とか。男性だったら年齢いれないなあと思ったり。 型を破るにはまず、型を覚えろというわけで、社としての法律を学んでいく。うちの場合は、その法律は「過去記事」なんです。だから、記事を新聞紙面のどこに、どのぐらいの大きさで載せるか決めるときも「過去記事の扱いどうだった?」から始まる。

立野:それ(性役割の)再生産ですね。

伊藤:再生産、しちゃう仕組みになってんな~。でもそれは本当に決定権者が変わっていかないと、変えられないのかな。そのためには、私たち現場クラスがちゃんと、敏感になって、「いや、おかしいでしょ」と声をあげなきゃだめだよね。そうだよね、できることあるよね。もっと頑張らないと。

不可避研究中

誰もが避けて通れない、世の中の「不可避なテーマ」を自由研究中。MC稲垣吾郎、スマホとテレビでお届けする実験報道プロジェクト。
https://www4.nhk.or.jp/fukahi/
twitter @nhk_fukahi #不可避研究中
「ジェンダー」テーマの初回は12月27日(金)NHK総合 午後11時50分~午前0時20分