生理の悩みは「痛い」だけじゃない 来ない不安もストレスに

伊藤:最初のテーマは「これって自分だけ?他人には言いにくい生理のリアルなお悩み」です。さっそくですが、かがみすとのみなさんは、どんな生理の症状ですか?重い・軽いなど教えてください。

ぴぃなつ:私はすごく軽いです。ここ数年、ピルを飲み始めてもっと軽くなりました。

やまし:私もあまり重くない方。4年ほど前、海外に住んでいて、生理前になると、PMS(月経前症候群)の症状だと思うのですが、すごく不安で眠れなくなる日がありました。それからピルを飲み始め、半年前まで服用していました。

たぬき: 20代前半から10年ぐらい生理が来なくて、困った時期がありました。

めい:生理痛が中高生の頃からとてもひどくて、ピルを飲んでいたことがあります。

なつほ:自分ではPMSがひどいとは思ってなかったんですけど、日記を読み返すと、妙に沈んでいる日が続き、その数日後に生理が来ていたと分かる、ということがありました。

伊藤:5人だけでもこんなに違いがあるんですね。いろんなモヤモヤを抱えているし、来ないこともストレス。私もそうだったから「分かる!!」ってなりました。

今回「かがみよかがみ」では、事前にTwitterとLINEで生理に関するアンケートを実施し、約1200人から回答がありました。まず、「自分の生理痛は平均より痛い?」という質問に対しては、「痛い方」と答えた方が30.4%、「軽い方」が46.9%、「わからない」が19.4%でした。

また「生理で困っていること」については、①お腹が痛い、②PMSによるイライラ・情緒不安定、③お風呂やサウナに入りにくくなる、が上位を占めました。

伊藤:「痛い・軽い」だけでは語りきれない生理の悩みがあるんだなと思いました。みなさんは生理がつらいとき、どのような対応をされていますか?

めい:私は生理の時に腹痛と腰痛があって、ひどい時だと起き上がれないくらい。鎮痛薬を飲んで、お腹と腰の両面にカイロを貼って、横になっています。

やまし:この間、両親と旅行していた時に、生理で漏れた血がスカートに付いてしまい、後ろにいた父が気づいて、母経由で私に指摘してくれたということがありました。母からは、羽織物を腰に巻くように言われました。

たぬき:私の場合は、先ほども話した通り、生理が来ないことが悩みでした。これまでは、病院に行って、薬を飲んで強制的に起こしていました。でも、引っ越しが多かったこともあり、受診が面倒になって薬を飲まなくなると、また生理が来なくなってしまうということの繰り返しでした。それが去年、福岡から東京の実家に戻ったら、急に生理が来たんです。でも周期は不安定。「病院に行かなきゃ」ってイライラし始めたら来る、みたいな。

一同:へぇ〜〜〜!

たぬき:嫌なのは、生理が来ないってすごく楽なのに、不安も感じる。何でこんなに不安にならなきゃいけないのか、というマインドになること。落ち込むと、さらにストレスが溜まって来なくなる、という悪循環になる気がしていました。

北川:みなさんの話にうなずいてしまいました。私も長時間の会議で生理の失敗をしてしまうことがあり、対策を練っていましたが、みなさん、人それぞれに悩みがありますね。

伊藤:アンケートでは、生理痛やPMSがつらいときの対応として「市販の薬を飲む」「体をあたためる」が上位でしたが、「我慢する」との回答がなんと43.8%もありました。

鄭:我慢は全然しなくていいです。痛みに耐えるのではなく、今は鎮痛薬やピルなどでコントロールする方法が色々あります。つらいときは無理をしないで休みをしっかりと取ったり、病院に行ったりするなど、自分で対処法を見つけていってほしいですね。

普通の体調不良だと考えれば、言えるようになった

伊藤:次のテーマに移ります。みなさんは、生理の悩みを相談する相手はいますか?

なつほ:パートナーとよく話します。私が生理用品を見せて説明するし、自分の体調がしんどい時は、そう伝えます。生理中は「ご飯は何にするか」も私が決めることが多いです。相手は興味を持って理解してくれるので、すごくありがたいです。

めい:一番相談するのは、親しい女友達かな。パートナーと生理の話をできるのがすごくうらやましい!私が前にお付き合いしていた人にちょっと話した時は「そういうの、聞きたくない」みたいな反応でした。

一同:えぇーー! ?

めい:それ以上話せなくなってしまってギクシャクするし、コミュニケーションを取るのは難しいって思いました。

ぴぃなつ:私は誰にも相談はしないですね。生理の時に「私、弱っている」ってわざわざ言いたくないし、周りに気を遣われるのがあまり得意ではないので。生理不順の時は、病院の先生に話しました。

伊藤:他人に話しにくいのは、なぜでしょう?

ぴぃなつ:自分には生理に対して何らかの大きな壁があるのかも…。パートナーとも生理について話しているというなつほさんは、どう考えていますか?

なつほ:「普通の体調不良」と同じだな、と。中高生の時は、学校とかで「生理」のワードを出せない感覚があったけれど、それは違うなと思いました。「普通の体調不良」だと思えば、恥ずかしくないし、後ろめたくない。それを表にガンガン出して、全然抵抗なく言えるようになりました。

ぴぃなつ:そうか!自分の壁を「えいっ!」と取っ払って、言うってことですね。

伊藤:アンケートでは、生理の悩みを相談する相手は、多い順に「友人」「母親」「パートナー」となっています。「専門家」は少ないです。みなさんの話を聞くと、医師や薬剤師は相談相手というよりは、薬を出してもらう相手という感じなんですかね。

めい:痛みで体に支障が出るので、ネットで情報を集めて婦人科に行きました。ピルを飲み始める時に、母は「ピルって大丈夫なの?」とネガティブな印象を持っているようでした。

鄭: 20年以上前、ピルは避妊目的で、飲むと吐き気も多かったので、母親世代が持つ印象は違うのでしょう。今のピルは、低用量で排卵を抑えて、生理の痛みや量を減らすことができるし、副作用も少なくなりました。

伊藤:なるほど!ピルのイメージだけではなく、ピルそのものも変化していて、使うデメリットが少なくなってきているんですね。

鄭:ただ、痛みには病気が潜んでいる可能性もあります。子宮筋腫や子宮内膜症は、年齢とともに増えるリスクがあります。妊娠・出産・更年期といったライフステージの中で、かかりつけの先生を見つけて、相談するといいですね。

伊藤:そして、相談相手に「職場の上司」が一回も出てこないという……。

たぬき:以前の職場は男性の比率が高く、相談しにくかったです。同じチームの女性とは生理の話を全くしませんでした。

北川:職場では、生理であることを周りに知らせないように、何事もないように振る舞おうという雰囲気がまだあるのかもしれません。もっと女性たちが気軽に話せるような環境を作っていかないといけないなと感じました。

男性にも「生理の多様性」を知ってほしい

伊藤:続いては「生理について、周囲の人や社会全体で変わってほしいと思うことは?」について。みなさんはいかがですか?

なつほ:「休まない イコール えらい」という風潮は変わってほしい!職場で休まない人が過度に評価されるともっと休みにくいし、生理痛が重いのに無理するのは、そういう文化から生まれていると思う。休みを取りやすい空気がもっと必要だと思いました。

伊藤:その考えは「我慢しないこと」にもつながりますね!

ぴぃなつ:女性が正しい知識を持つのは本当に大事。でも、以前男性から「生理なの?(笑)」って馬鹿にされたような言い回しをされたことがあって。興味を持たないこと自体がもうダメって感じになるといいなあ。

鄭:生理痛の重さやPMSの症状、ケアしてほしいパターンは、人によって違います。男性はその多様性を知ることが大切ですね。

伊藤:生理休暇については、取りにくいという人が多いですが、どうですか?

北川:休暇を取る場合、「突然休むと職場に迷惑をかける」という気持ちもあるでしょうし、上司に「生理休暇を取りたいです」と言うこと自体がハードルになるのではないかと思います。

伊藤:実は私、生理休暇という言葉はなくしてもいいかなと。生理だからでなく、体調が悪い時は休める社会になればいいと思っています。

やまし:前職では、生理が重くて毎月休まざるを得ない人がいて。そのために有休を全部消化してしまうので、会社に生理休暇の制度ができました。

鄭:生理だけでなく、不妊治療のように女性特有の休暇制度があるといいのでは。また、コロナ下で、体調不良でも無理せず、休みやすくなっているように感じます。

北川:生理には様々な症状があり、休まないとならないくらいしんどい人もいる、ということも含めて、もっと広く理解してもらえるといいですね。

生理の時にしてもらえたらうれしい「神対応」とは?

伊藤:最後のテーマは「私が生理の時に救われた神対応」です。過去の体験談や「もし、してもらえたらうれしい」ということは何ですか?

めい:どんな体調なのかとか、知ろうとしてくれるだけで神対応です。どういう対応をされたらうれしいのかを、伝えていくコミュニケーションが必要だなと思いました。

ぴぃなつ:そっとしておいてほしいです。私は体調を崩しているところを人に見られたくはないので。あったかいドリンクをもらえたらうれしいかな。

たぬき:人によって違うという多様性があることを知ってほしいです。

伊藤:自分がしてもらえたらうれしいことを相手(周囲)に伝えるコミュニケーションが大切だなと思いました。

北川:そうですね。してもらいたいことは人によって違いますし、さりげない気配りを感じられるとうれしいですね。

また、アンケートでは、職場での神対応についても声が寄せられました。動画にまとめましたので、ぜひご覧ください。

生理のこと、自分から言葉にして伝えよう

伊藤:まだまだ話し足りないですが、今日の会はいかがでしたか?

ぴぃなつ:「もう生理の話をしていいんだ」って気づけました。相手の体調を聞くような感じで、話題にしていきたいな。自分から発信します!

たぬき:人によって痛みも様々で、生理についての解像度が上がりました。私の話に「分かる」って言ってくれただけでも、だいぶ救われました。

北川:生理のことを話すのはタブーだととらえている人も多いと思います。身体については個人的なことで、言語化することがあまりなかったのも要因かもしれません。やはり、どんなこともコミュニケーションが大事。生理痛に限らず、しんどいと感じていたり、何か困っていることがあったりするときには、職場の中でも、男性とでも、自分からちゃんと言葉にして伝えることが理解してもらうための第一歩ですね。そして、相談を受けた側もそれを受け入れることが大切だと思います。

鄭:改めてお伝えしたいのは、生理痛は我慢するものではありません。病院に行くことや鎮痛薬を使って痛みをコントロールすることも含めて、いろいろな方法があります。また生理の時は、そっとしておいてほしい人もケアしてほしい人もいて、どうしてほしいのかは一人ひとり違います。生理だけでなく、体調について日頃から話し合える環境が大切ですね。自分なりの解決法を見つけて、普段からハッピーに過ごせるようにしていきましょう。

プロフィール

■北川 晶(きたがわ・あき)

第一三共ヘルスケア(株)研究開発部・研究センター長。分析関連企業、医科系大学研究機関及び大学発の企業を経て、2010年、第一三共ヘルスケアに入社。研究開発部にてスキンケア製品の開発担当に携わる。2017年より開発グループ長として、敏感肌向けスキンケアブランド「ミノン」など、女性の悩みに寄り添った様々な製品の開発を統括。2022年4月より現職。

■鄭 理香(ちょん・りひゃん)

第一三共ヘルスケア産業医。産業医 精神保健指定医 日本精神神経学会専門医 日本児童青年精神医学会認定医。東京女子医科大学病院、都立梅ヶ丘病院、都立松沢病院などを経て、東京大学 職場のメンタルヘルス専門コースTOMHを修了後、(株)Ds’sメンタルヘルス・ラボを立ち上げ、現職。これまで、臨床診療を行うとともに、産業医・顧問医・研修講師として、様々な職場(企業や教育機関)のメンタルヘルス対応や講演講師、執筆活動など幅広く活動を行っている。

■伊藤あかり(いとう・あかり)

朝日新聞社「かがみよかがみ」編集長。「私は変わらない、社会を変える」をコンセプトに、18~29歳女性のエッセイ投稿メディア「かがみよかがみ」を立ち上げる。

人生100年時代の女性ホルモンとの上手な付き合い方(セルフケア情報提供サイト「くすりと健康の情報局」より

記事で使用しなかったアンケート結果は以下に掲載します。

n=1186 「かがみよかがみ」調べ