「もう少し論理的に話して」
「WBS(Work Breakdown Structure:仕事内容を細分化した表)ひいたことある?」
飛び交う言葉に、喉が詰まる。きっと私は世の中のアラサーに比べて、仕事ができない。

すべて「自分で学べ」スタイル

新卒で入った会社は小さなテレビの制作会社だった。ずっと憧れていた仕事。やるぞ!と意気込んだものの、OJTなんてあってないようなもの。自分で学べスタイル。議事録にはミーティングで話している内容は全て書け。電話の取り方と名刺交換だけは教えてやるから、それからは自分でなんとかしろ。そんなこんなで何が常識なのかわからないまま、私の社会人1年目はスタートした。

入社したてのADの仕事は基本的に雑務と言っても良い。小道具や弁当を買ってきたり、ロケ地の下見の準備をしたり、テロップ用に文字おこしをしたり。動画編集はちょっと年次が上の先輩たちの仕事で、15秒のCM用の動画編集をさせてもらえたらまだいい方だった。
やりたい仕事だったから何一つ後悔はない。ただ、あの3年でなにかスキルが身についた気がしない。タイピングが早くなった、簡単な動画編集ができるようになった、気合と根性が強化された、自己紹介でインパクトを与えられるネタが得られた、ぐらいしか誇れるところがない。

転職した2社目で初めて「アジェンダ」という言葉を知った。そして、議事録は簡単なミーティング中のやりとり、結論を書けばいいということを知ったのもここだ。全て書き起こさなくてはいけない、と思っていたから正直驚いた。なるほど、私の知識は他の社会人より少ない。そう自覚して、とりあえずビジネス本を読み漁った3年だった。そして、そこそこ知識や経験も得られただろう、と私は3社目へと移る。

社会人のスキルが低いと青ざめて

そこで己の世界の狭さを知る。井の中の蛙大海を知らず。

3社目はベンチャー企業で、まあ仕事のできる人たちが大集結したかのような空間だった。「こうこうこうで~」と説明していて「もっと簡潔に」と指摘された瞬間、「そうか、私、ロジカルな話し方できてないんだ」とショックを受けた。ロジカルな話し方も、WBSも、知ってはいたけれど。

そう、知っているだけでは意味がない。知識は活用してなんぼ。

資料を作っても、大幅に修正される。雑な言葉を使っていると「人前で話す仕事なんだから言葉遣いに気をつけなさい」と注意される。まずい、社会人としてのスキルレベルが低いんだ。社会人歴7年目、今更ながら青ざめている。まわりの同年代が、先輩たちが、優秀に見えて萎縮している。

後悔していない。それでも

1社目も、そして2社目も選んだことを全く後悔していない。本当に。過去の経験が今に生きていることもたくさんあるし、この経験がなければ今の私はいない。

だけど、例えば教育制度の整っていそうな有名企業に入ったり、研修のしっかりしている会社に入っていたら、もう少し仕事ができる社会人になれていたのかもしれない、と思うことがある。よく「新卒で入る会社は大事だ」という人がいるが、ごもっともすぎるお言葉だ。スルーしようとしている人はちょっと今すぐ足を止めて欲しい。(とか言って入社するまでわからないものだし…まあ見切りをつけるならば早めが良いと思う)

大手企業から転職してきた同年代の同僚は、プレゼン資料も完璧で話し方もわかりやすくて、ただただ圧倒されていたらプレゼンに負けた。上司に何一つ訴えられずに私は終わった。スキルがない故に、伝えたいこともちゃんと伝えられない。
メールの作成だって、悩んで悩んで30分以上かけてしまったことを打ち明けたら「時間がもったいない」と一蹴された。言葉が足りているか、誤字がないか、変な日本語を使っていないか、不安で仕方がない。
そんなできない自分が会社の足を引っ張っているのではないか、と萎縮してしまう。

けどまあ今さら何を言ってもこの「職歴コンプ」は消せないし、過去より未来が大切だし。新しいコミュニティに参加したり、新しいことにチャレンジしたり、書籍を読み漁ったり、資格を取ったり。仕事の時間だけで足りない部分をどうにかして補うしかない。というか、こうやってポジティブに捉えられる自分えらい、と一旦褒めてあげる。

褒めたついでに、横に積んであるビジネス本の山をそろそろ消化しないとなあと思いあぐねる夜なのであった…。