私の就活で捨てたい思い出と言えば、内定ほしさのあまりにまったく自分に合わない会社の話を聞きに行ってしまったことです。

大学1、2年次からしっかりと就活に向けて準備、行動をしている友人も周りにいましたが、私はほとんどの就活生と同じように、大学3年の終わりごろから就活を始めました。当時は自己分析もままならないまま、早く「内定がない」状態を抜け出したくて、焦って手あたり次第に説明会に行っていたのを覚えています。

「悪くなさそう」と感じたベンチャー企業に応募

その中でも特に記憶に残っているのが、とあるベンチャー企業のことです。
私が就活をしていたころは、ベンチャー企業は大企業よりも早く学生の獲得に動き出していました。私はあるWebサービスを扱っているベンチャー企業を発見し、「悪くなさそう」という理由から応募しました。エントリーシートなどの提出は求められず、決められた応募フォームを埋めていくというものでした。
そして応募から数日後、そのベンチャー企業から「ぜひ会ってお話したい」旨のメールが届きました。大きな後悔となる経験の始まりでした。

教えられた住所をもとに向かってみると、六本木のとある雑居ビルでした。エレベーターでその会社のある階まで上り、ドアにあったインターフォンを押しました。中から出てきたのは、ピンストライプの細身のスーツに身を包み、印象的な髭を生やしている若い男性でした。
「ああ、ベンチャーの人っぽいな」と思ったのを覚えています。

その人は、「担当者が来るから、その椅子で少し待っていて」と言って私を残して中に消えてしまいました。そこから、20分は待ったと思います。中からは大音量の音楽が聞こえてきました。また、誰かが何かを言ったときに、「うぇーい!」という叫び声や、女性たちの「○○さ~~ん」といった甘ったるい言葉まで聞こえてきました。私は、嫌悪感でいっぱいになり、こんなに待っても担当者が来ないのであれば、帰ってしまおうかと思いました。

しかし、タイミングが良いのか悪いのか、カバンを持とうとしたそのときに、中から担当者が出てきました。先ほどの人と似ている、いかにも“ベンチャー企業っぽい人”でした。その人は私と他愛ない話を少ししたあと、「ウチでは女の子はこういう仕事をしてもらっていて~~」というようなことを言い始めました。そこで語られたのは、他の人が決め、作成したリストに従って朝から晩まで電話をかけ続けるという、いわゆるテレアポのような作業内容でした。
自分にしっかりとした考えがあれば、「いや、私はこういう仕事がしたいんです!」と強く言えたのだと思いますが、準備が中途半端だった私は何も言えず、ただただ早く時間が過ぎることを祈りながら、頷くことしかできませんでした。そして、次の選考プロセスも何も言われないまま、「興味があったらここにメールしてね」とその担当者の名刺を渡されて、その日は終わりました。

「適当に何社か見にいけば」という甘さだった

会社を出た後、どっと疲れが出てしまいました。もちろん、その後その担当者には連絡を取りませんでした。この経験で、もっと目を覚まさなければと強く思ったのを覚えています。自分自身の就活に対する考え、姿勢の甘さを呪いました。適当に何社か見に行けばどこかしらからは内定がもらえるだろうと高をくくっていた自分自身が恥ずかしく、悔しかったです。

この経験は「捨てたい」ものですが、その後自己分析を徹底的に行い、これまでの経験や自分の性格をノートに書き出し、整理しました。また、その自己分析をもとに、5回ほどOG訪問をして先輩方の意見を聞いたりしました。そのおかげでその後の就活は自分の軸にしたがって舵を切り直し、最終的には納得のいくものになったので、どんな経験も「捨てたもんじゃないな」とも思っています。