かがみよかがみでは15日、『女は、髪と、生きていく』(幻冬舎)を出版したヘアライター・佐藤友美(さとゆみ)さんをお招きしたワークショップを開催しました。
さとゆみさんは幅広いジャンルの書籍ライターとして活躍し、朝日新聞のウェブメディア「telling,」でも連載コラム「本という贅沢。」を執筆して頂いています。
■佐藤友美(さとゆみ)さん
テレビの制作会社から、2001年にライターへ転身。雑誌、ムック制作、ウェブメディアの編集長を経て、近年は年間10冊以上を担当する書籍のライターとして活動する。自著に8万部のベストセラーとなった『女の運命は髪で変わる』(サンマーク出版)、伝説の女性美容師・鈴木三枝子さんを描いた『道を継ぐ』(アタシ社)など。最新作は『女は、髪と、生きていく』(幻冬舎)。
髪型が変わると、表情も変わる
さとゆみさんは、ヘアカタログの仕事で、ヘアチェンジした読者の女の子の顔がぱぁっと華やぐのを見て、「ヘアライターとして活動していこう」と決めたそうです。
その後は、美容師とお客さんの橋渡しをするようなヘアスタイルの企画や記事をつくっています。
そんなさとゆみさんが、女の子たちから一番よく聞かれる質問は「私にはどんな髪型が似合いますか?」なのだそう。でも、実際に彼女たちの髪型を見てみると、その人の「顔や髪質」には似合っていることがほとんど。
本人は似合ってないと思っている……。けれども、プロが見るとちゃんと似合っている。このすれ違いがどこからくるのか。
実は、「顔や髪質」には似合っていても、その人の「性格や気分」に合っていないと、人はその髪型を気に入らないということに気づいたと、さとゆみさんは言います。
このことを、さとゆみさんは「似合っていればいいってもんじゃない問題」と語ります。
たとえばある芸能人に似ている女性が、「似合うようにして」とオーダーしたところ、「かわいい前髪ぱっつん」になったそう。はたから見ると、その髪型は似合っていたけれど、彼女自身はその髪型を「失敗した」と感じたそうです。
なぜなら彼女は、普段は、上場企業の役員相手にコーチングをしていて、黒のパンツスーツで「ナメられないように」「信頼してもらえるように」と気を遣っていた人だったから。だから、「かわいい前髪ぱっつん」は、いくら彼女の顔立ちに似合っていても、仕事の邪魔になってしまうというわけ。これもやはり、「似合っているのに気に入らない」例のひとつ。
さとゆみさんは「美容師さんとそこのコミュニケーションがとれていないんだなと分かりました。でも美容師さんはエスパーじゃない。どんな自分になりたいかは自分で伝えないと!」と話します。
「病院では、どこが痛いか・どんな風につらいか、自分の病状をちゃんと話すでしょう? 美容院で『お任せです』と言うのは、病院で先生に『きょう私に何してもらってもいいんですよ』と言っているのと同じ(笑)。自分の今の状態は、美容院でもしっかり伝えましょう」
髪型にキャラがある
さとゆみさんは「髪型にはキャラがある」と言います。マンガでも、髪型からどんな登場人物かを推し量ることが可能です。マンガだけではありません。現実世界でも、アイドルは黒髪ストレートで幼さを、国会議員はショートやボブでリーダーシップを表現して、自分たちを支持してもらえるように、髪が持つキャラクターを上手に使っているそう。
だからこそ、「キャラと密接に結びついていることを知った上で、髪型を選んでほしい」と言います。
ただ、自分が今どんな気持ちなのか、どんな自分になりたいのか……。あまり振り返ったことがない人は多いのではないでしょうか。
ワークショップでは、まず「自分がなんの制限もないとしたらどんな髪型にしたいか」深掘りします。
「たとえば、『本当はミステリアスな雰囲気にしたいから、ロングヘアにしたいけれど、癖毛だから無理……』などと言いがちになります。でも、この『ミステリアスな雰囲気にしたい』という願望は、必ずしもロングヘアじゃなきゃ手に入らないわけじゃありません。別の髪型でも手に入る可能性があります。だから、まずは制限なしに、どんな髪型にしてみたいか考えてみてほしいんですね」とさとゆみさん。
さらに、「自分がどんな言葉で形容されたら(褒められたら)うれしいか」を20個書き出すワークをしてみると、「なりたい自分がいっぱいあって困った」という参加者の声も。
さとゆみさんは、「仕事・バイト先では『できるって言われたい』、彼氏の前では『癒やし系とみられたい』とか、これって矛盾ではないと思います」と指摘します。
平野啓一郎さんの書籍『私とは何か 「個人」から「分人」へ』で提唱されている「分人主義」を紹介し、「人は個人ではなく、もっと細かい単位の分人でできている。会う人の数だけ分人があります。どの分人でいるときの自分が心地良いか?を考えて、優先順位をつけてみましょう」と話します。
美容師さんに伝えるのは恥ずかしい…それでも!
ここまでのワークで、「どんな自分になりたいか」が見えてきました。とは言っても…やっぱり美容師さんに「色っぽくなりたい」と伝えるのって恥ずかしい!
さとゆみさんは「日本の女性が美容院に行くのは年に平均4.4回。春夏秋冬に1回と考えると、もし失敗したら、その髪型で1シーズン過ごさなきゃいけない。逆に、気に入った髪型で3カ月間『私すてきでしょ』と思って過ごしたら、出会えたかもしれない仕事、人があったかも。恥ずかしさを飛ばして、伝えてほしい!」と力説します。
ワークショップでは、隣の人を美容師さんと見立てて、伝え方を練習しました。
ポイントは、「若い人と仕事する機会が増えてきたから、優しい雰囲気で」といった形で「理由」を添えて伝えること。
会場は賑やかな雰囲気に包まれました。
「(書き出した)20個の褒め言葉は、今日と3カ月後でも変わっているかも。自分が今、どういう自分でいたいのか、転機だなと思ったら掘り下げ直してみて。今の自分にとって、何が優先事項なのか見極めてほしいです。内面と外面が一致すると生きやすくなるんですよ」
髪型を変えたら、自分の内面が追いついていくことも
ずっと自信がなく、「どうせ私なんか」と言っていたある女性は、思い切って髪型をロングからショートに変えたそうです。すると「いいね」「似合ってる」とこれまでにないぐらい褒められて、ネイルやメイク、ほかのおしゃれにも気が向くようになったそう。好きだった人に声をかけて、デートするまでこぎつけました。
「私はその話を聞いて、そのデートがうまくいってほしいなあと思ったのですが、でも万が一そのデートがうまくいかなかったとしても、彼女はもう二度と『どうせわたしなんか』と言わないだろうなとも思ったんです。それはなぜかというと、彼女の心に、自分を大事にする気持ち、自己肯定感が生まれたから。これがもし、バッグを褒められたんだったら、彼女はここまで変わらなかったと思います。髪は自分の一部だから、髪を褒められるということは、自分を褒められることと同じなんです。自分の一部が好きなものになる、というのはその後の人生を大きく変えます」
ほかにも、長年、癖毛に悩んでいた女性から「縮毛矯正した方がいいですか?」と質問されたこともあったそうです。「そのパーマにお金をだしてもしたい人がいるぐらい!ステキですよ」と褒めたところ、泣いてしまったそう。
その女性は、過去に家族から「チリチリの癖毛のように性格も曲がっとんな。お姉ちゃんはさらさらのストレートだから性格もまっすぐなんや」と言われたことが呪いになっていたそうです。
一緒に髪型を考えて、美容院を紹介したところ、その3週間後、「生まれて初めてとても気に入った髪型になりました。鏡を見るのが楽しくなりました。自分のこと今からでも大事にしていきたい」と書かれた手紙が届いたそうです。
さとゆみさんは「特に就活中や結婚した直後など、女性は自分以外のところに目がいっていて、『自分をどうしようか』よりも、あの人とうまくいかない、とか子どもはどうとか、周りのことばかり考えがち。まずは自分を大事にして、自分を最初に満たしてあげてほしい」とエールを送りました。
エッセイ「#髪形変えたワケ」も大募集!
えいやっと髪を切ったら、周りの風景がガラッと変わって見えた。美容室に行った次の日、洋服選びが楽しかったりなんだか背筋がしゃんとしたり……。そんな経験、みなさんにもあるのではないでしょうか?
「#髪型変えたワケ」をテーマにエッセイを募集しています。
締め切りは2020年1月5日(日)です。
素敵なエッセイは後日、さとゆみさんのコメント付きでご紹介します。エッセイ投稿をお待ちしています。