正直、投稿するまでずいぶん迷った。
女性のテリトリーを邪魔してしまう気がしたから。

女子大生から男性会社員へ

わずか2ヶ月前、自分は都内の女子大生だった。
今は、地方の男性会社員である。

同じ人間なのに、肩書きがこうも違うとオモシロイ。
つい数ヶ月前までは自分自身も女子大生として、女性スタッフとして、立ち回っていたはずなのに。今では、バイトの女子大生に「おはようございます」「お疲れさまです」と挨拶するのもなんだか怖い。

そう、今、女性がこわい。同じ属性だった人たちが、急に、一瞬にして、遠くへ行ってしまった気がするからだろうか。実際は遠くに行ったのは自分の方なんだけど。「女の子する」に失敗した自分は、そうできている彼女たちを前にして、同じではあれなかったことを今さら知った。畏敬の念に不意打ちされたような。

数カ月前までは、みんな女性だと思っていたくせに

今年の初め、自分は「性同一性障害」だと診断された。それから男性ホルモンを打ち始め、今ではクレープ屋の店員も「男性限定ポイントカード」を渡してくるし、職場で更衣室を片付けていたら、「女子が着替えるので退いてほしい」ということを言われるようになった。みんな男性だと思っている。数ヶ月前までは、みんな女性だと思っていたくせに。

世間の男女二元論って、くだらねーな、とわかったのだ。

でも、そうとはいえまだまだ男女で分けられる場面は多いし、「かがみよかがみ」もそんな規範があった方がいい場なのかと考えていた。そんなわけで、「女性」について、ある意味では最も向き合い続けてきたにもかかわらず、自分が「女性」を語るのは乱暴なんじゃないかと、ぐるぐるしていた。

自分自身は、性別自体がどうでもいいと言いたいのだけど、とはいえ「女性」は向いていなかったし、予想以上に「男性」がしっくりきているので、今の生き方でい続けたい。生まれてくるときのコイントスがしくじった感じ。

だけどこのコイントスは大事な局面だったわけで。おかげさまで自分は23年間、女性でいよう、それも、「若くてカワイイ女のコでいよう」と無理をしてきた。まさか体ごと間違っていたなんて、気づかなかったから。

体重40㌔を切ったモテ時代。空っぽだった

少女時代を思い起こすと、自分はそこそこモテた時期もあったのだと思う。

自分自身が何なのかわからなくなるくらい、自分にフタをして、「可愛いはつくれる」を実践していたのだから、そりゃあそうかも。栄養素まで管理して食べ物を食べていたし、体重は40キロを切っていたり、どの角度から自分が最もステキに見えるか鏡をずっと見ていたり。男子には告白された。女子には「〇〇ちゃんみたいになりたい」と羨ましがられた。細いけれど細すぎない健康的な長い脚も、生まれつきの両頬のえくぼも、チャームポイントになっていたんだろう。

でも、モテた時期が一番、空っぽだった。あの頃のクラスメートが知ったら驚くのかな。「〇〇ちゃんは、男になりました」と伝えたら。ちなみにもう改名はしたし、誰も知らない土地へ引っ越したので、同窓会の知らせだって届かないだろうな。

世間的には「若くてカワイイ女のコ」は、遺伝子からして勝ち組なんだろうか。あんなに空虚だった時代の何がよかったんだろう。カワイイは正義でなければならなくて、カワイイは100%褒め言葉で、自分はそれに見合った若くてカワイイ女のコでいられると信じていたのに。あるいは、信じていたかったのに。

でも実際は、遺伝子からして間違っていたので、自分は男になるし、「ワイルドなイケオジ」になりたいと切望している。

「カワイイ」を真に受けると、自分が消えてしまう

今なら少しはわかる気がする。ひとはあんまり他者からの「カワイイ」を真に受けると、自分が消えてしまうのではないだろうか。まずは自分にカワイイと言ってあげるべきだった。いや別に、カッコイイでも何でもいい。好きな言葉を投げてやるべきだった。鏡に写っていたのは、自分自身ではなくて、「若くてカワイイ女のコ」の像だった。ただの、虚像だったんだ。曇った瞳じゃ本当の自分すら見えない。

今は自分のことを、「可愛い少年」として愛でている。
そのうちワイルドなイケオジになるので、どこかでお会いしたらよろしくお願いします。