私が高校2年生の時のことです。

「お笑い芸人のTさんに似てるよね」

ある日、クラスで一番美人の女子からそう言わたことがきっかけで、
私は「いじられキャラ」になりました。
愛らしい、面白い。
周りからそう言われて悪い気はしなかったので、喜んで彼女たちの指示に従いました。

本当はやりたくない。でもふざけたら周りの人が笑ってくれる

「ちょっと~、この前やった、あの人の物真似やってよ」

ブサイク芸で有名な、男性お笑い芸人の真似を強要されることも。
本当は嫌、やりたくない。そんな気持ちに堪えながら、黙って彼女たちの要望に応えていました。

「あははっ、超似てるぅ。のぞみってやっぱおもしろっ」
「ウチらの癒しだよね~。絶対いないとダメな存在!」

私が一生懸命物真似をすればするほど、クラスで大きな笑い声が起きました。
クラスの人気者になったようで嬉しくて、ますます人前でふざけるようになりました。

「のぞみっていう名前の割には、そこまで可愛くないよね~」
「あ~分かる。名前負けしてるよねえ」

と、クラスの女子たちから大声でからかわれることも。
多感な時期だったので、容姿について言われるのはとても辛かったです。

私の価値が下がれば下がるほど、彼(彼女)たちの価値は上がっていく

「のぞみちゃんって、結構変わってるよね」

クラスの気になる男子からそう言われ、チクリと胸が痛みましたが、
それよりも自分のことを見てくれた嬉しい気持ちのほうが上回りました。

「えへへっ、よくみんなから言われるー」

実は傷ついているとは知られたくなくて、わざとおどけたフリをしていました。本当は、異性から可愛いと言われたい。気になる男子から好かれたい。
そんな気持ちを押し殺しながら、いじられキャラを演じていました。

グループには、美人キャラ、可愛いキャラ、おしとやかキャラがいて、
私はその中でただひとりの「いじられキャラ」でした。
その場を盛り上げるために言いたくもない下ネタを話したり、
男性っぽい振る舞いをしなければなりませんでした。
他の男子たちは「うわあ・・・」と引くような瞳で、女子たちは
「まあ」と困ったような瞳で、いつもこちらを見ていました。
私という人間の価値が下がれば下がるほど、彼(彼女)たちの価値は上がっていく。そんな錯覚に陥りました。

周りから役割を押し付けられる「いじられキャラ」って必要?

いつまでこんな役を演じなければいけないのか。
追い詰められ、悩んだ私は、彼女たちとは違う大学へ進学しました。
大学に進学してからは、誰から役割を押し付けられるということもなく、生き生きとした明るい人生を送っています。
しかし、高校時代に同級生たちから受けた心の傷は、この先も一生消えることはありません。女性らしい行動や言動をしたいと思っても、「こんな私は私じゃない」と拒絶する気持ちが強く、高校時代と同じ立ち振る舞いをしてしまいます。

いじられキャラ。そのような役をしている人をよく見かけますが、
見かけるたびに過去の出来事を思い出し、モヤモヤとした気持ちになります。
いじられキャラって、必要ですか?