髪型もファッションのひとつだと思う。
だからみんな、服のコーディネートを考えながら、髪を巻いたり、ポニーテールにしたり、ちょっと凝ったアレンジをしているんだ、と思っている。

私自身、髪の長さは肩につくくらいのミディアムで、その日の服や気分でヘアアレンジして着飾るのが好きだし、その時間を大切にしている。上手にできた日のお出かけはいつもより楽しいし、たぶん鏡を見る回数も増えている気がする。
友だちから直接「髪の毛、かわいい!どうやってるの?」と言われた日は、もう1日中寝るまでハッピーだし、「次はどんなアレンジをしようかな」とモチベーションにもなった。
ヘアアレンジができる私のミディアムヘアは、ある種の「私らしさ」としてポジションをとった。

いつの間にか私はショートヘアに憧れを抱くようになった

言わずもがな、ミディアムヘアやロングヘアの方がヘアアレンジのバリエーションはあるし、楽しむ幅は広がる。少し極端だけど、ボーイッシュなショートヘアだと少し巻くか、ヘアアクセサリーをつけるか、くらいのアレンジしかできないこともある。
でも、いつの間にか私はショートヘアに憧れを抱くようになった。
なにをきっかけにその憧れが生まれたのかはもう覚えていないけど、ショートヘアの女優さんやモデルさん、街ですれ違う女性が視界に入るたびにじっと見入ってしまうことが増えた。

はたから見ると「時間がかかってそう…」と思わせるような、凝ったアレンジをしなくても、きれいに整えるだけで表現できる、潔さや首筋あたりから見える「女性」の美しさに惹かれたのだと思う。きっと「きれいに整えるだけ」といっても、ヘアアイロンを使ったり、ブローしたりで手間はかかっているとは思う。でも、それをあまり感じさせない、さっぱり感が好きで、でもそのときの私にとっては、とてもとても遠いものだった。

髪を切らない本当の理由は「顔の丸っこさを気にしている」から

ショートヘアにしたい気持ちを長い時間抱いていたけど、私が髪をばっさり切ることはなかった。それは「ヘアアレンジのバリエーションが狭くなる」からではなく「顔の丸っこさを気にしている」から。

ヘアアレンジするとき、顔周りの髪を残しておくのが、私の鉄則ルール。だって、小顔に見える気がするから。顔がなんかむくんでいる…と思った日は、ハーフアップしたり、巻くだけにしてごまかすこともできる。これは髪の長さがあるからできることだし、このアレンジによって私は人前に出るための自信をつくってきた。

でも、ショートヘアはそんなことができない。その日の顔のコンディションがそのまま出てくる気がしてこわい。(たぶん、そういう日はマッサージとかして整えているんだろうけど)
そんな「顔の丸っこさを気にしてるから切らない」という本音の自分と目を合わせたくなかった私は「ヘアアレンジできなくなるのは嫌だから切らない」に言い訳をすり替えることにした。実際、そう思った方がなんとなく気がラクだった。
「ヘアアレンジするのは好きだし」「友だちからも求められていることだし」
じゃあ無理に切る必要なんてないよね、と私のなかで一旦、結論を出した。

憧れはときには気負いすぎず「いつか叶えるんだ」くらいがいいのかも

「今のミディアムヘアがちょうどいい」と答えを出してから2年。
去年の夏のはじめに髪をばっさり切った。理由は、痩せて顔周りがすっきりしたから。
蓋をして、見ないフリをしてきた理由だったけど、痩せたからそのコンプレックスを乗り越えることができたんだと思う。「顔周りもすっきりしたし、今ならいける!」と髪を切った。
思ってた以上にショートヘアは似合っていたし、気分が上がった。アイロンで整えたり、ワックスでスタイリングしたり、ショートヘアならではのアレンジも楽しいから、やっぱり切って正解だった。

実はショートヘアにするために痩せたわけではない。たまたま、と言えばアレだけど仕事が忙しかったり少しだけ食生活を気にするようにしたら、するすると痩せていっただけ。
だからショートヘアを手に入れるのに、かなり時間がかかった。
ただ振り返ってみると、「もっと強く憧れてたら必死にダイエットしてたはず」とも思う。私のなかでショートヘアは確かに憧れだったけど「いつかしたいな」レベルだったのかもしれない。その程度、といえばそれまでだけど私はしっかり憧れを手にいれたし、自信にもなっている。

強く憧れたものを手に入れるために、必死に努力することはもちろん大切だし、必要なことだと思う。でも、憧れはときには気負いすぎす「いつか叶えるんだ」と大切に持っておくことで、静かにゆっくり努力できるものなのかもしれない。