学歴なんて関係ない。仕事は成果で判定されるべきだし、人の評価は内面で決まるべきだ。
私もそう思っていると思っていたし、学歴で評価するなんて時代遅れだと思っていた。
自分がマッチングアプリで大学を凝視しているのに気付くまでは。

とりあえず偏差値が一番高い学校を志望校に書いた。それが私の母校になった

私は、自分で言うのもなんだが割と高学歴だ。
中学までは受験もなしでいける公立だったけど、高校は地元で一番の進学校、大学は旧帝大。勉強は嫌いじゃなかった。勉強自体がどう、とかというより、模試の判定とか、合格とか、明確にゴールが決められている時に一心不乱に努力するのは性格上向いていた。

中学の時、友達が塾の体験にいくというので一緒に行った。そこで志望校を書かされた。中学1年生の私に、高校がどんなところがあり、それぞれどんな特徴があるのかなんてわかるはずもなく、とりあえず偏差値が一番高いところを書いておいた。それがいつか、私の志望校になり、母校となった。
高校に入って1週間もしないうちに、「大学受験は1000日」と言われ、志望校を書かされた。文系か理系かどころか、やりたいことなんてまだわからないうちに、とりあえずみんなが目指す一つの指標である地元の旧帝大を書いた。そしてまたそこが母校になった。

男性は自分よりも高学歴の女性を疎ましく思っている。そう感じていた

とりあえずなるべく偏差値の高いところに行っておけば正解だよ、だからみんなでそこを目指して頑張ろうね。ある種の洗脳とも言えるそれに、もちろん当時の私が気付くわけもなく。
勘違いしてほしくないが、私の中で学歴が高くない=幸せになれないとは考えていなかった。なぜなら、私の母が高卒で専業主婦だけど、とても幸せそうだからだ。

それなのになんで私がこんなに学歴にこだわっていたのかというと、元彼の影響が大きい。「君は◯大だからね」。事あるごとにそう口にする彼は、私よりも学歴が下だった。そこに関して最初は特になんとも思わなかったけど、あまりにも定期的に言われすぎて、元彼と別れた後も、学歴が自分より下の男性と話すのが苦手だった。女性よりも男性の方が高学歴でいるべき、男性は自分よりも高学歴の女性を疎ましく思っている。そう感じていた。

私が男だったら。もしくは、かわいい女性で、学歴が低かったら。こんな思いを感じずに生きていけたのかな。そう思っては自分の人生を呪った。もし過去に戻って人生をやり直せるなら、中学校の時に学歴は低いけど、制服が可愛くておしゃれな子が集まる高校に行くのに。

私の考えを変えた彼は、本当に自分にとって大事なものをわかっていた

そんな私の考えを変えてくれたのは、マッチングアプリで出会った男性だった。マッチングアプリを使っている時も、基本的には自分で条件を入れて検索していた。学歴、年収ともに私より上。それ自体を望んでいるのかというより、変に気を使って欲しくないから。「いい大学出ているね、頭いいね」「そんなことないです」そんなやりとりが心底嫌だった。

その男性は、たまたま私にいいねをしてきてくれた。学歴のところが空白だったけど、顔がものすごくタイプだったので、たまにはいいかと思ってメッセージのやりとりを開始し、会うことになった。出会った彼は、高卒で広告代理店に入った人だった。会ってすぐにお互いのことを話し、彼が高卒だとわかった瞬間は「あ、めんどくさいことになったぞ」と思った。またいつもの会話が始まるのかと身構えた。

「俺は高校卒業してから8年くらいずっと広告やってるけど、この業界奥が深くて、全然飽きないんだ」。キラキラして語る彼は、私が大学名を告げた後も「大学か、行ってみたかったな。勉強嫌いだから、1年くらいだけどね」と笑っていた。
彼と話していると、彼は本当に自分にとって大事なものをわかっているから、それを誰がなんと言おうと大事にするし、だからと言って人をそのものさしで測ることもない。こうあるべき、というのがなくて、こうしたい、だけがあった。私にはそれが眩しかった。

学歴にとらわれていたのは自分だった

元彼がきっかけで始まった逆学歴コンプレックスは、いつの間にか私の価値判断の基準の一つになっていた。振り返ってみれば、「へー〇〇大学なのにすごい!」「やっぱあの人すごいよね、だって◯◯大だもん」、そんな風に思うことが多かったように思う。結局、学歴に囚われていたのは私だったんだ。

今でも、正直学歴の話は得意ではない。でも、マッチングアプリの条件に学歴をいれることはなくなった。願わくば、自分の大事にしたいものを大事にできる人に出会いたいし、私もそうありたい。