2020年、私は20歳。
成人式に行った。
髪は切りっぱなしのショート、顔はすっぴん、服は黒のパンツスーツ。パンプスなんて履かない。格好よくてテンションの上がるおじ靴で、振袖姿の女の子達に混じって参列してきた。
それを言うと「(自分貫いていて)格好いいね」と周りからは驚かれるのだが、それが紛れもない表現したい自分らしさだった。

実際、ちょっと言われた意味とはずれるけど最高に格好いいと思ってスーツを着た。後悔はない。それが褒められるのはちょっと嬉しい。でも、「格好いいから」「褒められたいから」やるのではない。
私は自分の生きやすいやり方を選んでこれになっただけなのだ。

振袖という選択肢は端から無かった

ここで私の性質から、振袖が着たくない理由を説明しておこう。

1,私は機能性の足りない服を避ける。
動きづらくポケットもない和服は御法度だ。

2,私の服の好みは洋装で、クラロリタイプのロリィタ服も普段着として着る。
腰を締めてスカートをふわっとさせるスタイルが好みなので、寸胴の和服は響かない。

3,興味の無い高価なものには食指が動かない。
ブラウスが基本1万超えのロリィタ服を買うくらいなので普段散財はするのだが、ヴィジュアルに惹かれない上10数万、いや下手したら30万円も超えそうな服は私の節約ゴコロが叫んで買う気も起きない。

4,服に性差別的な意味が込められているとそれだけで着たくない。
振袖は、「未婚の女性」が着る服だ。つまり振袖を着るだけで、自分が女性でなおかつ未婚だと一目で分かってしまう。プライバシーがダダ漏れなのだ。男物には未婚既婚の区切りが無いのに。

5,私は性自認が無性で、性別を強調して生きたくないという思いがある。
だから、はっきりと「女の象徴」みたいな存在である振袖を着たくない。

以上の理由から、振袖という選択肢は端から無かった。少なくとも私にはだけど、なんで高い金を払ってまで真冬の一番寒い時期に保温性に欠けて動きづらくて尚且つ重たいと噂の性差別の権化みたいな布を纏うのか、その意義が見出せなかった。

別に、そんな服に込められた意味とか機能性とか気にせず「振袖かわいい!最高~!」って楽しんでる人はそのままで良いと思うんだけどね。

私は嫌だったから、結局一回も振袖には袖を通さず、自分が大人の格好だと思うスーツで参列した。私が格好いいと思っている、メンズスーツにちょっと似た女性ものだけどパンツスーツで。(私の身長では着たくてもメンズもののスーツは売っていない)。
本当は他の男子がしているように、メンズスーツにネクタイがしたかった。スーツに合う暖かそうなメンズものの格好いいコートも、私のサイズがあれば着て行きたかった。でもそれはもうしょうがないとして。
ジェンダーレスな姿で行きたかったから、なるべく男がするような、すっぴん(これはいつもだけど)でイヤリングも髪飾りも付けず、スーツにヒールを合わせるなんて事はせず出かけた。

それだけの話。

フェミニズムは性犯罪という名の人権侵害を人権侵害なのだと私に気付かせた

似たような話がある。私はフェミニストだ。
女性蔑視の話になると、黙ってはいられない。とはいえ現実世界で喋ると、空気を読むとかタイミングとか人間同士の間柄だったりいろいろな障壁があってあからさまには言いづらい。だからSNS上で発信しているのがほとんどなのだけれど、リアルでも知り合いの人からはたまに「すごいね」「応援してる」とか言われる。

何がすごいんだろうね?

なにも特別なことはない、言わないと、伝わらないし。私はたまたま低身長の童顔で、女性蔑視をこじらせた支配欲の強い男が性犯罪に巻き込んでくることが頻繁にあって。その苦しみと怒りをどこかに吐き出さないとどうにもならなかったし、フェミニズムは性犯罪という名の人権侵害を人権侵害なのだと私に気付かせた。

それだけの話。

何もすごくない。特別じゃない。
でも特別じゃないってことを共通の認識にするために、なにも特別じゃない私の話を2020年もしてみようと思う。