特集:わたしの卒業

私は後悔した。「第二ボタンもらっていい?」ってなんで聞いたんだろう

わたしの卒業

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幼稚園、小学校、中学校、高校、そして大学。これまで何回も卒業式は経験してきたけれど、その中でもいつまでも心に残って消えないのが中学校の卒業式だ。

地元の小学校から、周りのみんなと同じように何の迷いもなく、地元の公立中学校に進学した私。小学校のときとはちょっと違う、「男子」「女子」を意識しはじめる雰囲気に、なんとなくなじめなかったのを覚えている。中学校で過ごした3年間、部活は吹奏楽部に所属し、男子とはそれほど話さず、しっかりもので姉御肌、「女子ウケ」だけは良かった私に、卒業式ではその中学校生活を象徴するかのような出来事が起こった。

気になる男子から卒業式で第二ボタンをもらうのが、女子の文化だった

今の中学生の事情はよくわからない。だから、今では“卒業式で第二ボタンをもらう”なんてことはしない、そもそも“第二ボタン”なんて言葉も死語、少なくとも私が中学生だったころにあった、その言葉の特別な意味なんて、もうないのかもしれない。当時、付き合っている相手、好きな人、気になっている人から卒業式で第二ボタンをもらうことが、女子の中で一つの文化だった。

私の周りでも、入学した当初は彼氏・彼女なんていない人がほとんどだったのに、いつの間にか付き合いだす人が増えていっていた。普段から男子と話すなんてほとんどなかった私は、中学校3年間彼氏ができなかった。仲よくしていた友達にもどんどん彼氏ができていったときには、「私はもう一生彼氏なんかできないんじゃないか」と落ち込んだのを覚えている。

思い出に第二ボタンをもらうってのもいいかも、と周りに流されて

そして卒業式が近づくにつれて、女子の中での話題はめっきり「誰から第二ボタンをもらうか」になっていった。私ははじめ、「私は誰とも付き合っていないし、第二ボタンなんてもらわなくてもいい」と思っていた。けれど、卒業式が目前に迫ると、周りの友達が、付き合っていなくても、別に好きじゃなくても、“思い出として”第二ボタンをもらうと言い出した。それを聞いた私は、「そっか。“思い出に”第二ボタンをもらうっていうのもいいかも」と思うようになった。今思えば周りに流されていたなあと思うけれど、その当時は、なぜかその考えにとりつかれてしまったのだ。

そして、ボタンをもらおうと決めたのが、クラスの男子の中で少し言葉を交わす、数少ない人の一人だった。第二ボタン、と言ってしまうのは恥ずかしかったから、私は「卒業式のとき、ボタンもらってもいい?」と彼にメールしたのを覚えている。断られたらどうしようと不安になったけれど、彼からはすぐ「もちろんいいよ。もらってくれてありがとう」という返事がきた。私は卒業式がちょっとだけ楽しみになった。

そして卒業式当日。式とクラスでの最後のホームルームが終わって下校、となったとき、私は部活の後輩から囲まれ、ブレザーのボタンが全てなくなった。後輩が嬉しそうに私の元を去ったあと、彼が私に近づいてきて、「すごい人気だね。はい、これ約束してたボタン」と言って私に自分のボタンを取って手渡した。そのボタンは、第二ボタンだった。「ありがとう。高校は別々になるけど、これからもよろしくね」私はそう言って、告白もなにもせず、昇降口で待っている友達の元へ向かっていった。

恥ずかしかったのかな。彼の第二ボタンがあった場所は、隠されていた

そのあと、友達と校門に向かっていたときのこと。私はそこにボタンをくれた彼が彼の友達と話しているのを見かけた。そのとき、彼の第二ボタンがあった場所は、彼のショルダーバックのストラップで隠されていた。私はその場で「あ、第二ボタンがなくなっていること、隠したいんだ」と思ったのだ。なんだかちょっとバッグの位置がずれていて、不自然になっているような気がしたから、きっと彼が意図的に隠したのだろう、と。第二ボタンがなくなっていることに周りから気が付かれたら、誰にあげたんだと聞かれるだろうし、それが可愛くもきれいでもない私だったと知られたら、恥ずかしさでいっぱいだろうから、と。私は、彼にボタンをもらってもいいか聞いたことを、後悔した。

今思えば、周りに流され、「みんながボタンをもらうから、私も」と思って取った行動だったなあと感じる。恥ずかしくて、後悔するなら、やめておけばよかったとも。それでも、そのときはわからなかったのだ。卒業式のあと、その彼がどこかで自分の第二ボタンをあげた話を誰かにしたかどうかはわからない。きっとしていないだろう。私もそのあとは誰にも話さなかったから。でもいまこうしてエッセイにこの話を書いているのは、卒業式と聞くといつもこの出来事を思い出すからなのだ。勇気を出して行動した中学生の自分を、「よくやった!」と褒めたい気持ちと、やっぱり恥ずかしいからしなければよかった、と思う気持ちが混在している。

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