上司とバトったことがある。
原因は、上司の態度があまりにも横柄で、簡単に声を荒げるからだった。

そんなの社会人としてどうかしてるって思ったわたしは、「ちょっといいですか」と上司を呼び出した。
個室で、サシ。逃れられない状況で、わたしは上司を前に、「あなたは間違っている」と率直に言った。

……いや、今、無事に生きていられていてホントよかったと思う。

幸い、「間違っている」と指摘した上司は、理解力のある人だったから、態度を改めてくれたし、こちらへのカウンター攻撃もなくて済んだ。
でも、これ、一歩間違えれば危なかったって、後になって思う。
怒りに任せて拳が飛んでくる危険性だってあったし、そうでなくても、仕事上、こちらが不利になるような悪意を仕向けられていたかもしれない。
無事でいられたのは、本当に本当にラッキーだったんだと思う。

正論だけじゃ、正直、自分を守り切れない場合がある

「正しいことをしたんだから、何もされなくて当然だよ!」って味方をしてくれる方もいるかもしれない。だけどね、そういう正論だけじゃ、正直、自分を守り切れない場合がある。正論はかたい剣と一緒だから。堅牢ではあるけれど、力技でへし折られたら、それでこちらも怪我してしまうこともある。

これは、ずる賢くなれ、とか、世間を疑え、とかいう意味ではないので注意してね。
いつか、持っていたカバンをおっぽり投げて、困っている人を助けに走るJKを見たことがあるけど(この話はいつか別の機会にね)、感動しちゃうくらい良い人って、この世の中にはちゃんといる。
だから不必要に、自分の殻をぶ厚くする必要はないけれど……、でも、ときおり、マジでヤバイ人って、残念だけどいるから。そういう人と出くわしたときに、自分を守れるようにしたい、とは思う。

中でも警戒が必要なのは、相手を否定するとき。
ほら、友だち(ただし親友ではない)が、超似合わない服を着てるのに「似合ってる?」って訊いてきたら、言葉、選ぶでしょう。
それと同じで、否定をするときは、絶対、言い方を工夫した方がいい。悪いところだけじゃなくて、良いところも伝えてから指摘に入るとかね。そういう、コミュニケ―ション上の技を身につけた方が、絶対にいい。

「何に」NOって言うのか、考えてみて

今、「NO」って言おうという風潮が高まっている。嫌なことには、ちゃんと嫌って示しましょう、って動き。それ自体はすごく、大切なことだと思う。主張することも自分を守る手段のひとつ。ひとりで抱え込まないで、どんどん声をあげていくべきだって私も思う。

だけどね、「何に」NOって言うのか、考えてみて。
そして、聞いた人はどんなことを思うのかも。
「NO」という声自体は、メッセージだよね。わかってほしいから、声をあげるんだよね。そうなら、伝わらなければきっと意味がない。言葉を発する前に、何が伝われば成功なのか、考えるようにしていこう。相手に、本当はどうなってほしいのか、想像しながら。

できるなら、メッセージを伝えたい相手の状況も、想像してみるのがベスト。なんで相手は、自分の望むことをしてくれないんだろう? どうして、「NO!」と言わなきゃならない状況に、陥っているんだろう? って、考えてみるんだ。
そうしたら見えてくると思う。相手が、何を守りたいのか。
まあ、守りたいものっていっても、ちんけなプライドとか、我執とかなんだけどね。でも、それがその人の人生支えてたりするから、容易に非難してはいけないと思う。

「NO」は強い言葉だから、使う前にちょっと立ち止まってほしい

「NO」っていう言葉は、何もかもはねつける強い言葉だ。だから、使う前にちょっと立ち止まってほしいんだ。強い言葉は、強い薬と一緒で、副作用が出る場合がある。はやりの言葉だからって、乱用はしない方がいい。

そう、だからこれはわたしからの提案。
剣を握る前に、無用な闘いを避けるところから始めよう。
賢く判断していくこと、そして柔軟な心を持つことが、自分も周りも救う近道だと、そう思うから。