5年後、というと私は29歳だ。
一体どこで何をしているか想像できない。そもそも日本にいるんだろうか。
相変わらず自由気ままに生きているのだろうか。
あれもしたい、これもしたい!と今と変わらずいろんなことに手を出してリスクだらけの30歳を迎えているのだろうか。
それとも30歳がもすぐそこというところになって上をのぞむことを辞め、手に入る範囲内の幸せで満足!という安定志向に切り替えているのだろうか。

今の私は30歳になるのが怖い。
いくら熟年結婚や高齢出産が増えてきたといっても、30歳までに結婚できなかったらいき遅れと言われ、子供を産むことが親孝行といった概念は未だ健在だ。
そして30代に突入した途端、恋愛市場における女性の価値は下がるという悲しい情報は私をどんどん焦らす。結婚したいわけでも子供がほしいわけでもないのに、「30歳までに誰かいい人を見つけないと!」という謎の固定概念に毎日脅かされている。
私を脅かす存在はそれだけに限らず、子供を産むのには年齢制限があることと、子供を産むのは女性しかできないという生物的問題。結婚が無事できたとしてもその暁には出産育児という問題がセットでついてくるのは怖すぎる。

30代以上の独身女性に結婚の話はタブー

職場では社内の30歳以上の独身女性に彼氏がいるのかを聞くのはタブーになっている現実に驚いた。たとえ本人が気にしていなくても、周りが無駄に気をつかいだしたら居心地が悪いはずだ。セクハラ・パワハラと間違われないようにという気遣いもあるのだろうが、30歳すぎたあたりから、プライベートの話を聞かれなくなったり、結婚について話をしていけないことが暗黙の了解になったりしているのは有難い気遣いと思えないのは私だけだろうか。

同時に、育児休暇制度はきちんと整っているのに育児休暇をとる男性がほとんどいないことにも気づいた。就活時に受けた大手企業のほとんどは育児休暇取得率の高さを主張していたが、あれは例え1日しかとっていなくても取得したことになっているらしい。1日だったらそれは果たして育児休暇といっていいのだろうか。それはただの有給だろと心の中で思った。例え結婚という問題をクリアしたとしても今度は出産・育児という問題がやってくること、そしてその大部分を女性が担当することでまだまだ日本社会は回っているという現実には正直萎えた。

でもどれも私の中で完結していた。私一人で勝手にびっくりして、がっかりしたのだ。
面と向かって30代独身女性に「結婚のご予定は?」ときいたわけじゃない。
あるいは「○○さんに結婚の話はタブーですか?」と確認した訳でもない。
育休をとらない先輩男性社員にだって「なんでとらないんですか?奥さんのサポートはどうなっているんですか?」でさえ聞けなかった。

聞くという簡単な行為がなぜ自分にはできなかったのだろう。
聞きにくいと感じる職場の雰囲気・慣例なのか。
これが当たり前なのかと自分の中で勝手に納得して日本社会に適応してしまう自分の性格のせいなのか。
あるいは日本社会はこんなもんだと既に諦めてしまっているから故なのか。
聞かなければ始まらないのに、と思いつつもそういった会話の場を持つことがまだできていない。

そんな日本社会に幻滅している私も今は「社会人になると出会いがなくなる」という言い伝えと「30代になると市場価値が下がる」という噂に振り回され一喜一憂する毎日だ。
元々フットワークは軽い方なので出会いが全くない訳ではないけど、結婚がゴールという言葉が常に脳内をちらつき、学生の時のように軽く付き合うわけにもいかず、翻弄させられている。

周りの意見に左右されることなく、自分らしく生きてほしい

もし、5年後の私がまだ結婚をしていなくて、結婚する予定もないなら言ってあげたい。
YOU DO  YOU!(あなたはあなたらしくやればいい)
自分の好きなように生きたらいい。ソーシャルノーム(社会規範)なんかに押しつぶされないでほしい。
例え5年後の日本が、結婚予定のないアラサ―に寛大な国になっていなくても、周りの意見に左右されることなく自分らしく生きてほしい。
職場のおじさまたちが気を遣って結婚の話をしてこなくなったら自らその話題を切り出してみればいい。後輩社員ができたならば、隠すことなくオープンに何でも話してあげてほしい。そして話すことで、次世代の女の子たちがアラサ―独身女子になった時に何を想定すればいいのか共有してあげてほしい。

もし(可能性は低そうだけど)、5年後の私に家族ができているならば聞いてみたい。
その結婚は果たしてアラサ―独身女子というレッテルを貼られないために選んだ結論ではないだろうか?自分が自分らしく生きたくて選んだ選択肢だったのだろうか?

「女だから」だけじゃなくて「20代だから」「30代なのに」とあなたの選択を揺さぶる言葉は5年後もきっと嫌ってほどあると思うけど、それに惑わされないでほしい。
きっと日本もまだまだゆっくりだけど、少しずつ、着実に変わっていくよ。

ペンネーム:Karen

日本の中高を卒業後アメリカの大学に進学。現在は日本で働く社会人2年生。たまにライター。日本がもっといろんな人にとって住みやすい国になったらいいなって思ってます。
Twitter:@KPa1n

10月11日は国際ガールズ・デー

「女の子らしく」「女の子なんだから」……小さな頃から女性が受けてきたさまざまな社会的制約。ジェンダーに関わらず、生きやすい社会を実現していこうと、「かがみよかがみ」では、10月11日の国際ガールズ・デーにあわせ、「#5年後の女の子たちへ」をテーマとしたエッセイを募集しました。