中学高校の6年間女子校に通っていた。6年間毎日、行きも帰りも女性専用車両に乗っていた。女性専用車両がない電車だと、10分でも20分でも待つぐらい私にとっては「命」だった。不思議なくらい女性専用車両に固執していたわけは、小学校の時の、男子への恐怖心と自分への自信のなさだと思う。
小学生の時、私は男子からいじられやすかった。声が高い。しゃくれてる。チビ。男子は私の悩んでいる容姿を躊躇なくからかってくる。やめてと言っても聞いてくれない。毎日のようにからかわれるのに疲れてしまった。それが原因で男子に苦手意識を持ち始め、中学から女子校に通うことにした。
中学生の私は、今までで一番、顔に悩んでいた時期だったと思う。私の家族は父も母も姉もみんな目はぱっちり。鼻も高い。誰が見ても美男美女だ。しかし、私は両親のどちらにも似ず、目が細くて、鼻も低い。美人じゃないと悩んでいた。鏡を見るたびに、この顔に腹が立ち、顔をつねったり、叩いたりすることもあった。
美人な母と姉に対しては…
ある日、祖父の友人が家に来て、母に対して、「すごく美人。お姉ちゃんもお母さんによく似て、美人さん。綺麗」と褒めまくった。けど、姉の横にいた私に対しては何も言わず、フル無視だった。美人じゃなかったら相手にもされないのか。世の中の男性が怖くてたまらなくなって、男子への苦手意識がどんどん高まっていった。
一度、母に「なんで美人に産んでくれなかったの??なんで、家族の中で私だけが、こんな顔なの?」と本気で責めたことがある。そんなこと言っても仕方ないけど、私は本気で悔しかったのだ。
すると母は、涙ぐんで、「ごめんね。美人に産んであげられなくて」と言った。私は自分をとっても惨めに思った。なに言ってんだ。こんな私、恥ずかしい。お母さんは悪くないのにごめんね。そういう思いでいっぱいになった。
男子からのトラウマと自分の顔への嫌悪とが重なり、男性がいる場所を避けるようになった。ブスだな、気持ち悪いなって思われる。笑われる。そう自己暗示にかかってしまった。だから女性専用車両しか乗れなくなってしまった。男子を見かけると、マフラーで顔を隠したり、下を向いて歩いたり、ビクビク怯えながら過ごしていた。
「美人じゃないからダメ」と考えていたのは…
小学校で20歳の集まりがあったときのこと。
私のことをからかっていた男子に会ったのだが、彼はその出来事さえ忘れていた。
からかわれたことが本気で嫌だった話すと、「ごめん。ほんまにごめん」と言ってくれた。この一言で自己暗示が少し解けた。「美人じゃないからダメ」と、私は自分で自分を苦しめていたことに気付いた。
共学の大学に通って男子と関わる機会が多くなり、男子への苦手意識は少なくなった。女性専用車両以外の車両も怯えずに乗れるようになった。普通に男子と話せるし、遊びにもいける。私の容姿をからかってくる男子にも出会ったけど、「いや、あんたに言われたくないけどな!?」と心の中で強気になれるようにもなった。
留学先で言われた「あなたは綺麗。信じて」
私を変えてくれたのは、海外との出会いだった。留学先で仲良くなったイタリアの女の子に容姿のことで悩んでいることや男子が苦手なことを打ち明けると、私の目をじっとみて、「あなたは綺麗。信じて」と言ってくれた。海外に行くと「私は私」と堂々と生きている子達に出会った。彼らをみて、他人に言われたことを気にして生きるのは終わりにしたい。そう思った時、私は美人だからダメと思っていた自己暗示から解放されて、自然と男子への苦手意識が薄れていった。でも、今でも男性との初対面は少し緊張してしまうし、男性が多い場所も得意ではない。
今まで友達には「男子が苦手」と公言してきたが、はっきりとした理由は誰にも話したことがなかった。私が男子が苦手だったのは、ブスだなって思われるのが怖いから。自分に自信がなかったから。
でもこんなこと言うと「考え過ぎ」「そんなに自分を見られてるって思ってたの?」「自意識過剰」と笑われると思って、恥ずかしくて誰にも言えなかった。
このエッセイを書くことで、素直に過去の自分を受け入れられた。男子へのトラウマ、容姿の自信のなさは恥ずかしいことなんかじゃない。
ペンネーム:エレ・ルウカ
テンションの差が激しい関西人。
寝ても寝ても常に眠たい系女子です。