1年も、長いこと片思いしていた。
独り占めしたくて恋人になりたくて仕方なかった。だが、つい最近、好きな人には彼女がいることがわかった。
今まで抱いたこの感情をただ恋として片付けてしまうのは惜しい気がする。
いつまでもこの時間が続けばいいと思った
恋愛経験は少なく、恋人という存在がいたことは人生において、たった半年しかない。
だが、誰かを好きになることには長けていた。常に自分の目にはキラキラ光るような「好きな人」という存在がいた。
今回の彼は、そんなにキラキラして見えなかったし、はじめの頃は「これは親友なのではないだろうか」と思えることの方が多かった。
同じサークルに所属し、たまたま一方的に知っていただけのただの同期だったはずなのに。
ある時の飲み会で隣の席に座られ、みんなには見えないよう、うまく顔を隠し泣きながら、ひたすら悩みを打ち明けられ、話され続けた。アルコールが入っていたとはいえ彼が泣くとは思ってもいなかったし、衝撃を受け、私と一緒にいるときだけでも楽しい時間を過ごして欲しいと思った。
この出来事があってからは一緒に帰った帰り道も、なかなかこない電車を待った待ち時間も全てが以前とは違うものになってしまった。
だから、サークル終わりの帰り道は必ず一緒に帰った。同じ定期区間でもないのに交通費がかさんでもいいから、できるだけ一緒にいたかった。
乗り換え時間の30分も次の電車まで時間があるからと、近くのコンビニまで行って、このお菓子は食べたことあるとかたわいもないことを話していたら、また電車を逃し、結局終電になってしまったこと。「この映画いいね」と私のスマートフォンを横取りして探していたこと。時には2人そろって寝てしまい、気づいたら、右肩に髪がわしゃわしゃしてる彼の頭がもたれかかっていた時はどうしたらいいのかわからなくて、目が開けられなかった。何か起こるわけでもないし、何もしなくていいのに。どんな日の帰り道も自分にとっては大切で本当に彼の最寄り駅まで着いて欲しくなかった。
悩みを話され、ひたすら聞き。振り回され。2人で話していれば時間を忘れ、いつまでもこの時間が続けばいいと思ったのは嘘ではないし、今もあの時が1番楽しかったと胸を張って言えるだろう。
だから、好きになってしまった。
会話の途中で出てきた「彼女」を聞き逃さなかった
この事実さえ知らないままでいたらよかった。
好きだった人には彼女がいた。
わかっていた。ある時、会話の途中で「彼女」という言葉が出てきたことを聞き逃さなかった。それ以降、どことなくLINEでのやりとりが素っ気なくなり、さけられているような気がした。
本当に彼女がいることがわかってからは、苦しかった。なんとなくそうだろうなと思っていたことが事実として明らかになるのだから。共通の友人から見せてもらった写真に写る2人はとってもお似合いで、何も言えなかった。
恋愛関係になるには何かが足りなかった
何人かの友人が言うように側からみても、付き合っていてもおかしくないくらい、いつも2人でいた。「イチャイチャしないでくださいよ~」と後輩に叱られたこともある。
会えば、どうでもいいことを話し、ふざけ合う。それだけだが、本当に楽しくていつまでも続いてほしかった。
この感情が恋人になりたいという好意なのかと聞かれたらその通りだと言うだろう。辛い時、夜中に何時間も電話で話を聞いてくれたこと。2人で初めて遊んだ時は楽しくて、笑いが絶えなかったこと。だから、この人の隣にいたいと思ったこと。
でも、それは相手にとって違ったようだ。
楽しいけど、恋愛関係になるには何かが足りなかった。決め手もなかった。恋人にならなくても遊んだり、ふざけあったり、笑い合うことはできる。この関係に「恋人」という名前なんてなくてもいい。
楽しかった日々は消えないが、私は隣にいることはできない。それでも、いつまでも長く付き合っていたいと思っている。それだけでいい。
本当はそれだけでいいなんて思っていない。思いたくないし、現実を見たくない。今も、これを書きながら泣いてしまうほど好きだったから。本当に本当に好きだったから、まだそんな気持ちにはなれない。
でも、今、恋人にはなれないことには変わらないし、相手の幸せを崩すほど図々しくはない。ならば、友達でもいいからこのままでいたい。
だから、私はこれを言う。
さよなら好きな人。