この間別れた彼は、人生で初めて結婚したいと思えた人だった。

大学4年生の10月、7ヶ月付き合っていた彼氏と別れた。
別れた原因は、価値観の違いなど、さまざまあるが、一番大きかったのは「結婚観」の違いだと思う。
私は元々、結婚願望がない人間だった。他人と同じ空間にいることを苦痛に感じるタイプで、誰かと一生添い遂げる、というのは到底想像がつかなかったからだ。

そんな時、彼と付き合いはじめた。穏やかで愛情深く、小さな日常に幸せを感じられる姿が素敵だった。彼の家でお腹が空いたと私が言い出せば、「ちょっと待っていてね」と、乾燥わかめをお湯で戻し、冷凍うどんをチンして、即席わかめうどんを出してくれるような人だった。
他人と一緒にいて落ち着くとか、癒されるという感情が初めて芽生えた。

「ああ私、結婚できるかもしれない」

希望にも似た感情だった。私には向いてないから、と見ないようにしていた「結婚」が、昔より近づいた気がする。そう思って彼にも、自身の結婚観はどうなのかと尋ねてみたのだ。

しかしながら、その反応は決して好意的なものではなく、その瞬間、「この人に結婚願望はないんだな」と悟ってしまった。
結婚願望がないことが悪いとは思わない。しかし、見えているゴールが違う状態で付き合っていていいのだろうか、と思った。私はとても薄情なのかもしれない。もし、結婚がその先にないとしたら、“何のためにこの人と付き合うんだろう”と思ってしまったのだ。皮肉なことに、私に結婚願望を芽生えさせたのは他でもない結婚願望がない彼だった。「次は結婚願望がある人と付き合いたいなぁ」そう思いながら帰路に着いた。

結婚願望がない人と5年付き合ったとしたら…

生物学的な女性には、タイムリミットがある。子供が欲しいなら、早いうちに結婚したほうがいいのは間違いないと思う。
「若い女性のほうがいい」と抜かす男性が多いからなのか、やはり若い女性のほうが売り手市場なのも間違いないと感じる。

私がこの先、仮に結婚願望がない人と5年付き合ったとしよう。その時私は26歳だ。仕事も任されるようになってきて、楽しい時期かもしれない。けれど、そんな中ではたして新しい恋人を見つけられるのだろうか。結婚してくれない人との長い付き合いのあと、別れたらどうするのだろう。不安はぬぐえなかった。 

21歳で始めた婚活アプリ

そこで私は、齢21にして、婚活することを決意した。同じことを繰り返さないために、最初から結婚願望のある男性を婚活アプリで探すことにしたのだ。
スワイプするたびに表示される彼らは、結婚したがっていた。もしくは、真剣な彼女を見つけたがっていた。しかし、私はそこで違和感を覚えてしまった。

「一人暮らしで寂しいので同棲する彼女ほしいです」
「周りが結婚しているのでそろそろ自分もと思い登録しました!」

こういった自己紹介を見るたびに、彼らは好きな人を見つけるというよりも、自分にとって都合のいい相手を探しているだけなのでは?という疑問が浮かぶのだ。

婚活をしている女性には喜ばしい文面なのかもしれないが、こういった「結婚がゴールだ」という考え方は本質的ではないと思う。結婚したいからする、恋人が欲しいから作る、では、相手をきちんと見つめて選んでいることにはならない。

確かに、出会いのない人々にとって、マッチングアプリはありがたい存在かもしれないし、私も必要だと思っている。しかしながら、それはあくまでも出会いの機会を増やすために使うべきであって、あとは現実の相手と向き合って恋愛するなり、結婚するなりするしかないのだと思う。

結婚とは、たんに幸せをくれるものではなく、乗り越えなければならない試練も同時に与えるものだ。それを共に乗り越えたいと思えるくらいの相手に、私は出会いたい。現代はもう結婚しなくてもいい時代だとは思う。それでも、まだ未知の出会いの中に「結婚」という一生に一度の愛情表現をしたくなるくらいの相手がいると信じて、私は今日もスワイプする。

ペンネーム:あやぞ

都内の大学の4年生。恋愛と婚活を科学するがテーマのいきなりデートラボの編集長。ゴールデン街のバーテンダー。好きな漫画家は清野とおる。
Twitter: @gomieuazarashi