「きついんじゃない?」「あなたには入らないと思うよ~」これらの言葉は私が祖母と買い物に行くたびに言われてきた言葉だ。

私は昔から身体が大きく、幼稚園時代の写真を見ても頭一つ抜けているものがほとんどだ。背の順でも1番後ろじゃなかったのは数えられるほどだ。しかも、ぽっちゃりとした体型であった。

客観的に見て、大きな子という印象はあったとは思う。

当時から食べるのが好きだったし、周りに体型でからかわれることもなかったため。自分の体についてはマイナスの感情を抱いたことはなかった。

祖母から言われた「きついんじゃない」の一言

しかし、中学入学を機に全てが変わってしまった。

わたしは中学受験をし、中高一貫校へ進学したため、学校には高3の女子までがいた。
中1の女子から見て高3の女子とは憧れの存在だったため、みんなこぞって先輩の真似をしてお洒落をし始めた。私も例にならってファッション誌を買い、休みの日には可愛い服を買いに出かけた。

祖母を誘い近所のモールへ行き、目当ての服を見つけ、試着しようとした時にその言葉を言われた。「きついんじゃない?」

祖母のことは今でも大好きだし悪意があって発した言葉ではないことはわかってる。

しかし、当時の私には衝撃だったし、初めて人から体型に関する指摘を受けたのもあり、とても記憶に残っている。父親譲りのガタイのいい体が嫌いになったのはそこからだ。

わたしは白やピンク、リボンやフリルなどといった女の子っぽい可愛らしいデザインの服を好んでいたが、それを着ると、仮装になるようで恥ずかしく、本当に好きなものを着れなくなった。
雑誌に載っているような王道ガーリーファッションに身をつつみたかったのだが、いざ試着してみると鏡に写ったのは誌面に載っているような華やかな好感度の高そうな「女の子」ではなかったのだ。お下がりの服を無理矢理着せられたかのような不機嫌な「女子」がそこにはいた。御世辞にも似合っているとは言い難くはっきり言って不恰好だったのを今でも覚えている。自分の体を憎み始めたのはその日からだ。

荷物を取ってもらえる「小さい女の子」への憧れ

背の小さな小柄な女の子に異様に憧れ出したのもその頃からだ。

それ以来「強そうなことは悪いこと」「女の子は小さいものだ」という呪縛に苦しめられ続けている。

一旦気にすると異常なほどに気にしてしまうもので、少女マンガやドラマでよく出てくる高いところにある荷物を取ってもらえる描写や、重いものを持ってもらう描写を見るたびに辛かった。荷物を取ってもらえない、持ってもらえない自分は女の子ではないと言われている気がしたのだ。

その呪縛のせいかはわからないが女の子扱いしてくれる、優しくしてくれる人にすぐ心を許してしまうようにもなった。

少しでも「かわいい」と言われるだけで(たとえそれが社交辞令であっても)すごく嬉しくなったしもっと言われたいと強く願った。
「かわいい」という言葉の中毒症状に陥り、「かわいい」に貪欲になったわたしは「見た目のかわいさを得られないならせめて内面だけでも」と素直になるよう心掛けたし、「かわいげ」のある反応をするようにした。
すると自分より年上の人から「かわいい」と言われることが増えた。両親の知り合いや先輩などから「かわいらしいね」と言われるようになったのだ。
凄く嬉しかったが同時に少し虚しさも感じた。
わたしが得た「かわいい」は努力して作り上げた言ってしまえば「かわいくて当然」な「かわいい」であり、この「かわいい」はわたしが努力を止めると失われるものだからだ。
存在するだけで「かわいい」が得られる「小さな女の子」が羨ましい。
その思いは時間が経つにつれて醜い嫉妬心へと変貌していった。
だがわたし自身も「小さな女の子」のかわいさには骨抜きにされていたし、友達に小柄な子が多かったのでただの嫉妬心ではなく羨望と嫉妬の入り混じったなんとも言えない複雑な思いを抱く事になった。
「かわいい」と言いながら心の中では「サイズだけ」と自分を守る為につぶやく。
そんな日々を続けるうちに、より「かわいい」コンプレックスが強くなってしまった。

その証拠に、身長やその後服を好きになったことのおかげで「カッコいい」や「お洒落」と言ってくれる人は増えたが、その言葉を聞くたびに「私が求めてるのはそんな言葉じゃないんだ!」と内心思っている。

もう立派な「かわいい」中毒者だ。

祖母に言われたあの一言が無ければ今でも強そうな自分の体を海外っぽい体型として好んでいたかもしれない。より自分の体型にあった服を選べていたかもしれない。

日本は海外と比べて女性はか弱いものというイメージが強いと感じる。

もちろんそのイメージのお陰で得をすることもあるが、多くの「大きな女の子」は自分ではどうしようもないものに苦しめられているのではないだろうか。

あの日捨ててしまった自分の体に対するポジティブな気持ちをいつか取り戻したい。
強そうな女子だって女の子なんだ!

「かわいい」中毒者を卒業させてください!