初めて一人暮らしを始めた。
意外と1人でも生活出来たし、めんどくさいことはたくさんあるけど、それなりに楽しいことも分かった。ほんの少し自立した気分になって、ほんの少し自信が持てた。

告白されたのが初めてで「気持ちに応えたい」とOKをくれた

その頃、私は同僚に片思いをしていた。
好きな人と話すことすら出来ないくらい劣等感の塊だった私だけど、ほんの少しの自信を糧に、初めて好きな人に近づく努力をした。初めて好きな人を遊びに誘って、告白した。返事は待たされたけど、付き合ってくれることになった。
私を好きになったわけじゃないけど、告白されたのが初めてで、私の気持ちに応えたいからと〝真面目に付き合いたい〝って言ってくれた。

初めに感じた最高の気分はすぐに一変。初めて好きな人と付き合ってみたら、分からないことしかなくって、気づけばほんの少しの自信はどっかに行ってしまってた。

LINEの回数も文章も、彼が喜ぶだろう台詞も表情も振る舞いも、慣れない料理も、なにもかも必死だった。大好きな彼の横顔を隣で見れることが幸せで、それを失いたくないのに、考えて考えて苦しくなっても答えを聞くことが出来なかった。仲を深める方法が分からなかった。
大好きな彼が隣にいることが、私の中で本当に特別で、最高に幸せで、私はそれだけでいっぱいいっぱいだった。でも、それだけじゃ彼に幸せを感じてもらうことは出来なかった。

2カ月で「別れてほしい」 隣の席で仕事を続ける日々

たった2ヶ月で、「別れてほしい」って言われた。

彼と別れて3ヶ月が過ぎた。
彼とは隣の席で仕事をしている。

ずっと変わらない距離なのに、心ははどんどん遠ざかる。それでも、どんどん好きになる。当たり障りのない一言二言を交わすだけの日常。たまに笑い合えたらすごく幸せで。だけど「彼は私のことを少しも気になってないんだ」って毎日感じて、毎日傷ついて。1人の夜に泣かなかった日は数えるくらいだった。

――彼が大好きで、叶わないけどもう一度私の彼氏になってほしい。
私から距離を縮めることが出来ないし、彼に興味を持ってもらう術も分からない。この苦しみを涙で吐き出すしか出来ない。

ひたすら毎日をこなすけど、考えの中心には別れた彼しかいなくて、彼を想うことだけに時間が過ぎていく。彼への想いが募って胸が張り裂けそうになりながら。
涙で吐き出して、吐き出して、なのに無くならない。
他のことが何にも手につかない。
もう、いつまでこんな生活をするの?

「初めて」がいろんな感情や選択肢を教えてくれた

「初めて」で埋め尽くされた彼との時間を思い返す。
初めて勇気を出して誘った時、初めて彼が私を心配してくれた時、初めて抱き締められた時、その度に〝こんなに幸せなことってあるんだ〝って感じた。
初めて彼から「話があります」って絵文字のないLINEが届いた時、初めて二度と来ない彼を玄関で見送った時、〝こんなに苦しいことってあるんだ〝って感じた。

「初めて」がいろんな感情やいろんな選択肢を教えてくれる。

このまま同じように泣いて吐き出すことを繰り返しても、何も変わらない。苦しみも軽くなんてならない。それよりも「初めて」の経験を繰り返して自分をアップデートしていくことが、彼に集中し過ぎている気持ちに何らかの変化をくれるはずだ。それに、ただ単純にもっとたくさんの「初めて」を経験したい。

誰もいないひとりきりの部屋で、いつもみたいに彼のことを考える夜。ふとそのことに気づいた。ぎちぎちに張り詰めた彼への想いがふっと和らいだ感じがした。

こうやって、昨日とは違う「初めて」の今日を感じて生きていく。
今日とは違う「初めて」の明日はどんな一日だろう。