「そんな奴のどこが好きだったの?」と聞かれて、確かになと思ってしまった。
口は悪いし、優しくないし、自分のことしか興味がない。気分屋だし、そんなとこで怒るの?って場面で急に怒るし、機嫌が悪くなるともともと口数が少ないのにもっと喋らなくなる。仕方ないなと「ねー怒んないでよ」って少しおとぼけながら私が言うと、「いや別に怒ってないけど」って強がるところがまためんどくさい。素直に言えばいいのに。
でもすごく大好きだった。ずっと一緒にいれたらいいのに、なんて何度も思った。こんなの読まれたら「やっぱり俺しかいないんでしょ」ってまたつけ上がるんだろうな。でもこれは私なりの、別れのラブレターだ。
不器用ながらに私の夢を応援してくれてたところが好きだった
未練たっぷりな女子トークをいつものようにしていたら、「そんな奴のどこが好きだったの?」と聞かれて一瞬出てこなかった。あれ?どこが好きだったんだっけ?初めて会った時から、気づいたらもう6年も経ってた。だらだらしすぎたな、と正直後悔している。
背が高くて、ちょっとつり目で、何も言わずにごつくて大きい手をすっと出してきてはいつも私の右手を握りながら運転をする人。食べ物にうるさくて、おいしい?って聞くと「うん、まぁ」っていつも偉そうなんだよな、料理できないくせに。不真面目なのに実は賢くて頭のいい話し方をする人で、頭がいいことを鼻にかけてないところは結構好きだったんだよ実は。
でも一番好きだったのは、夢を応援してくれていたところなんだと思う。本人にはそんな気1ミリもないんだろうけど。私が弱音を吐くと、「でもやりたかったんでしょ」って否定も肯定もしない。「才能あるんでしょ、がんばろ」いつもは憎まれ口ばかり叩くくせに、私の仕事の話になるとそういう言葉をくれた。それに何度も救われた。
「東京に行く」は別れのサインだったけど
仕事終わり近所のファミマまで迎えにきてくれた車の中で、東京に行くことを伝えた。「本当に行くの?」と一度言ってから、そのあとはいつも通り。2人でびっくりドンキーでハンバーグを食べて、スタバのドライブスルーに新作のフラペチーノを飲みに行った。売り切れてたけど。さよならと言えない代わりに、私にとっては「東京に行く」は別れのサインだった。
なのに結局「ローソンのバスチ絶対好きだと思うよ」とか「トイストーリーの新作観てきた」とかだらだら毎日連絡を取り合って、気づいたらまた一年が過ぎていた。なんだかんだで優しいから、東京で私が一人さみしくないようにずっと付き合ってくれる。だからやっぱり、別れは私から言わないといけないなって思ったんだ。
この気持ちは好きなんかじゃなくて、ただの情なんだ
この6年間は特に中身のないLINEをほぼ毎日送りあってた。でも一度だけ長い間連絡を取らなかったことがある。(といっても4ヶ月くらいだけど)付き合って3ヶ月で私が振られて、そのあと別の彼氏ができた時。自分から振っておいて早く彼氏つくりなよとまで言ってたくせに、本当にできちゃったら「やっぱりお前しかいない」なんてありきたりな連絡がきた。当時の彼氏は大好きだったし、ほぼ毎日一緒にいて疑われるのも嫌だったので、電話番号もSNSも繋がっていたものを全部シャットアウトした。
結局その彼と別れるときに、たまたま解除したらたまたま連絡がきて元通りになったけど。あの頃の思いきりが、今の一番私には必要なんだと思う。
もう2年くらい前からこの気持ちは好きなんかじゃなくて、ただの情なんだって気づいてた。だからちゃんとさよならしないと、もう終われないんだろうなって。お互いこの先は別の人と歩いて行くんだろうな、と思いながらも嫌いになれないから一緒にいた。それがよくなかった。
私よりもいい女は、きっとこの先現れないよ
最後に何が一番言いたいかなって考えてみたけど、あんまり出てこない。これが最後だってこの6年間で何度も思った。だけどそれが最後になったことは1度もなかった。離れたくないって泣いちゃった日もあったけど、もう涙は出てこない。
私よりもいい女は、きっとこの先現れないよ。"あの時もっと大事にしておけばよかった"っていつか後悔するよ、たぶん。幸せになってねなんてまだ言えないけど、不幸になればいいのにとまでは思ってない。でも私はあなたより幸せになるよ。今までずっとありがとう、でももう大丈夫。
さようなら、今日からは他人としてよろしくね。