私はメイクをほとんどしない。
自発的に、化粧という行為を、やんわりとではあるけれど拒否しているのだ。
私は女の子ではない、身体的には女性だけれど、心は男性寄りであると自認していた。
しかし、「メイクをしなくても、既存の女の子像に当てはまらなくても、女の子でいていい」と気づいた。
自分が女の子ではないと気付いてから最近まで、「自分は女の子ではないのだからメイクをするべきではない」と思っていた。
自分で自分を、「女の子=メイクをする」「男の子=メイクをしない」という固定観念で縛っていたのだ。
でも、それをメイクをしない理由にしてはいけないと気付いた。
最近は、メンズメイクが流行の兆しを見せている。私も広告やYouTubeでメンズメイクを見た。
しかし、それでも私はメイクをしたくなかった。「男の子用」と謳われているメイクでも。
私が自分を「女の子」だと思えなかったのは、私が既存の「女の子」のあり方をはねつけたかったから。メイクをするのはマナーだという風潮や、男の子とは一定の距離を保たなければいけない風潮。
中高ほぼ女子としか関わったことがなかった私は、大学に入って初めて男の子と「邂逅」した。
私は彼らと仲良くなりたかった。彼らのグループに入りたかった。
でも入れなかった。「女の子だから」。
悔しかった。今でも悔しい。
無意識だったけれど。自分でも気づいていないうちに、「女の子だから」が窮屈になっていた。
だから、私は男の子になろうとした。メイクをしなくてもいい男の子に。女の子らしくしなくてもいい男の子に。
でも、私は「男の子」にもなれなかった。
私は、「女の子だから」にも「男の子だから」にも馴染めなかった。
きっと今もどこかに、「女の子だからメイクをしなくては」とか、「男の子だからメイクをしてはだめだ」と思っている人たちがいると思う。
でも。女の子であったとしてもメイクをしなくたっていいし、男の子であったとしてもメイクをしていいのだ。
性別を、メイクをしない理由にするのはやめた。
リップを塗るのは、少しでも素敵な「ひと」でいたいから
少しだけ、やってみよう。
女の子であることに違和感がなかった時期に持っていたコスメを、また出してきた。
制服のスカートを身につけていた私。ワンピースを着ていた私。ヘアアレンジをしていた私。
全部私だ。
自分に自信をもつために、自分を大切にするために、少しだけ、リップだけ、塗ってみようと思えた。
大切な日には、ファンデーションを塗ることだってある。
少しでも素敵な「ひと」でいたいから。
そして、したくない日にはとことんしないと決めた。
身体は女の子だし、染みついた振る舞いもどうしようもなく女の子らしい私。だからこそ、「19にもなってメイクしないなんて!」という世間の声に怯えていた。
でも、罪悪感をもつのはやめた。うつむきながらではなく、前を向いて歩くことにした。
メイクをしたってしなくたって、素敵なひとにはなれる。女の子がメイクをしなくたって素敵でいられるように。男の子がメイクをしたって素敵でいられるように。
メイクをしてもしなくても、女の子も男の子も素敵だ
女の子だからメイクをしなくてはいけない。
男の子だからメイクをしてはいけない。
自分を縛るのはやめよう。
メイクをしてもしなくても、私もあなたも素敵なのだから。