去年の3月、大学を卒業した翌日。わたしは22年間過ごした街をでて、東京へやってきた。両親の「何かあったらいつでも帰ってくればいい、そのためにこの家はあるから」という言葉を心の中で大切に握りしめて、、。
大都会での憧れていた仕事に、初めてのひとり暮らし。全てが未知で、これから何が待ち受けるのかという不安に勝る期待で胸がいっぱいだった。

孤独から内省する時間が生まれた

新社会人の上京生活ほど、孤独なものはない。学生の時みたいに芋づる式に友達ができる機会は皆無だ。元からわたしはひとりで過ごすことが割と好きで、当初は全く苦ではなかった。しかし職場で辛い状況が長く続き、ストレスが蓄積して、次第にこの孤独が苦痛になっていった。マッチングアプリなどを始めてみたけど、平日の会社でボロボロに擦り切れたメンタルを引っさげて、初めましての人間と会話をするのはHPを激しく浪費して、すぐに挫けた。

仕事の影響で精神的に支障をきたしていたことも相まって、私は仕事以外の時間を独りで生きていた。この街にはこんなにたくさんの人生が騒がしく溢れているというのに、私にとってはそれも東京の景色の一部でしかないなんて、哀しくも笑えた。

そんな日々がゆっくりと重く過ぎていく中で、わたしは休日に何をして過ごしたかというと、主にただひたすら自己と会話していた。意識はしていなかったが、いわゆる内省だったと思う。内省する事で、自分が本当に望むものは何かとか、身を置いている環境や社会全体をみて感じる不条理に対する心の動きに非常に敏感になれた。
ここまでひとりの時間が持てなかったら、短期間で自分を深掘りできることもなかっただろう。それからは、自分の興味の赴くあらゆる事柄から知っていこうと思った。

東京は多様な価値観が入り混じり、小さなアメリカみたい

わたしは内省から興味を持った事や人の生き方を知るために、トークイベントなど様々な場に足を運んだ。そこでジェンダーギャップ指数121位の状況、一括りにできない多様な恋愛のかたちがあること、この国でセクシャルマイノリティーとして生きる人々のリアル、大人が夢に向かってがむしゃらに生きる姿、など自分にとって新しい多様な価値観や思想を知った。東京にいたから、信頼度の高い良質な情報をより高い解像度で吸収できた。どこを切り取っても、本当に貴重な経験だった。
東京は小さなアメリカみたいだ。大袈裟な例えをしたが、地方で過ごしていた環境と比べると東京はかなり進んでいる。アメリカにも様々な顔があるだろうけど、人種のサラダボウルという言葉もあるように、多様な価値観が入り混じる先進的な側面では、日本中でいうと東京が唯一それに近づいているのでは?と感じた。まあ、わたしアメリカ行ったことないけど。笑

まだまだ進化を続ける東京の温度をいつまでも感じて、刺激を受け続けたい

目まぐるしい景色に巻き込まれたり、時には取り残されたような気分にもされる。けれど、自分のアンテナが向かう方向にあるものにすぐに触れられて、多様な価値観や思想を肌で感じることができるから、東京はいい。
この先世界の何処で暮らすことになろうとも、まだまだ進化を続ける東京の温度をいつまでも感じて、刺激を受け続けたい。

東京に来てもうすぐ2年が経とうとしている。この街でひとりで生きて様々な場所で学び感じ得たことで、わたしは新しい一歩を踏み出す決断ができた。そして、一時的に”いつでも帰れる家”に戻ることになった。

わたしの人生で最も大切なのは、社会生活の環境的要因が気分を害さないような居心地の良い環境で暮らすことだと思っている。だから、語学を身につけて海外に移住する選択を得ることが、当面の目標。この街で吸収するべきものは吸収できたから、あとは自分次第。努力して、まずは直近の目標を叶えたい。