SHE代表取締役社長・福田恵里さんからの総評

SHE代表取締役社長の福田恵里さん
SHE代表取締役社長の福田恵里さん

今回のエッセイ「私たちの強いとこ」には、それぞれの人生と葛藤、そして乗り越える力が滲んでいました。“強さ”とは声を張ることでも、完璧であることでもない。泣きながらでも前に進む勇気、自分の本音に正直でいる意志、愛する人を守る決断、見守る覚悟。それぞれが「私にとっての強さ」を見つけて語ってくれたことが、何よりの贈り物でした。心を揺さぶる言葉の連続に、私自身も、自分の中の強さを見つめ直すきっかけをもらえたように思います。

◆最優秀

『「他の人ともしたい」と言われ気付いた。理解とは関係ない、私は嫌だ』江指美穂さん

誰かを深く愛するがゆえに、自分の本音を押し殺してしまう。そんな経験がある人ほど、このエッセイは心を打つのではと思います。価値観の違いに向き合い、「私はいやだ」と自分の感情を守る選択をする強さ。また別れを決めた後の涙や行動の一つひとつが、その決断の重さと誠実さを物語っていました。痛みの中でも自分の輪郭を取り戻していく姿に、大きな勇気をもらいました。

◆優秀(2作品)

『5か月の娘と、私が行きたい場所に自分の足で行く。小さな改革の一歩』KANOAさん

「ふとした違和感を見過ごさず、自分を取り戻していく」このエッセイには、日常の中で小さな革命を起こす強さが描かれています。自由を愛する自分をもう一度信じたいという気持ちで、踏み出した一歩、それがどれほど尊いものか。SHEでも自分の人生の手綱を握ることの大切さをよく話していますが、行動としては小さかったとしても、自分で決めて動いたというその事実が、人生には大きな影響を及ぼすことを私たちは知っています。軽やかで前向きな語り口の中に、確かな覚悟が光るエッセイです。

『寝不足で、バタバタで、息子は泣いていて。最悪の春、初めての成長痛』神田なりさん

子供の姿を見ながら、ふと30年前の自分を思い出し、様々なことを乗り越えて今の強さがあるという気づきを得ていく姿は、子育て世代じゃなくても共感できるメッセージだと思いました。祖母から母、母から子への成長のバトンが受け継がれていく姿も、成長痛を何度も味わって私たちは生きていくという人生の希望が伝わってきました。見守る強さ、痛みを受け入れる強さなど、抗うだけが強さじゃない、そんなことを、教えてくれる作品です。

◆特別賞

『家を出る日、私が母・姉・妹を守ると決めた。自然と涙が止まった』春風凜さん

恐怖と葛藤の中で、家族を守るために行動を起こす。このエッセイに描かれていたのは、静かで揺るぎない「守る強さ」でした。震える手で警察に電話をかけた瞬間、家族を引っ張って車を走らせた瞬間、読み進めている中で、その緊張感や覚悟などがまざまざと伝わってくる文体で、一気に引き込まれていきました。今の家族の形を根本から変えてしまう恐怖や葛藤を乗り越えて、行動できた彼女の強さに、心からの敬意を表したいと思います。