私は最近、東京を好きになり始めた。東京に住み始めて3年。やっと東京の楽しみ方を見つけた気がする。

いざ住んでみたら、東京は楽しめない?

3年前、結婚を機に東京に引っ越すことがわかったとき、最初は信じられなかった。長年札幌に住んでいて、修学旅行や、部活の遠征で何度か東京に遊びに行っことはあったけど、あの東京に!?私が住むの!?と。町全体がキラキラして、ビルは全部が高層ビルで、流行りの物も、おしゃれな食べ物もたくさんあって、しかもディズニーランドにもすぐに行ける距離にあって!

そんなウキウキな気持ちで東京に来たけど、楽しめたのは本当に1年くらい。
憧れた渋谷の『ハチ公前』での待ち合わせは人の多さに負けて少し外れた場所での合流になり、もうやめとこう。と、心の中でつぶやいたことも。
週末の休みは朝ゆっくり起きたり、家にいたり、掃除をしたり。出かけるとしたら近くのカラオケや、ラクーアでの買い物で1日が終わることも。

子供が産まれてからは、より行く場所は狭くなり公園や児童館ばかり。
せっかく東京にいるのに東京に住んでる感覚がなくなって、不満ばかりが募る。

広い公園は歩いて20分程の場所ばかりで、緑や自然は少なく、大きい商業施設は車がないと行けない距離にあるし、とにかく子育てしにくい!!

東京は観光や遊びでたまに行くような「点の関係」なら楽しめるのに、いざ住むとなる「線の関係」ではなかなか難しいと気づいた。キラキラに見えた東京の景色はいつしかどんよりして見えた。

東京は、今と昔が入り混ざる場所なんだ

そんなモヤモヤしながら過ごしていたけど、考えが変わった。そのきっかけは上野恩賜公園だ。
家からバス1本で行けて、春には桜が満開に咲き、夏には不忍池に蓮の花が広がる。緑にあふれ、四季折々を感じることができる。
また徳川家康や徳川慶喜を祀っていることでも有名だ。その場所に私は立っているんだ。もしかしたら彼らも同じ景色を見て、激しい戦乱の中でも、ほっと一息つきながら『風情があるなぁ』と感じていたかもしれない。そう思うとなんとも言えない不思議な気持ちになった。

東京は、今と昔が入り混じる場所なんだと。

もう1つ、心に残ったのは圓乗寺だ。
ここは文京区白山にあり、井原西鶴が書いた『好色五人女』のモデルの1つとなった『八百屋お七』の墓がある。

これは江戸時代、お七という少女の自宅が火事に遭い圓乗寺に避難し、そこの小姓に一目惚れした。お七はまた火事になれば小姓に会えると思い、再建した自宅を放火してしまう。
当時、放火は大罪で、お七はわずか16歳で火炙りの刑に処せられたという事件が起きたという実話だそうだ。

青い空の下で、暖かい日差しが私に降り注ぐ中、"昔、1人の少女が恋心から放火を犯し、火炙りにされた場所"ということがショックで頭から離れなかった。
今の時代ならまた違っていたかもしれない。
何百年も前に命を懸けて恋をした少女がここにいたこと、そしてこの話を題材にしようと井原西鶴がこの場所を訪れたかもしれないと思うとまた不思議な気持ちになった。

まだまだ知らないことが多くある。
流行に流されて、自分の東京に求める理想も高すぎたのかな。
東京は新しい物の中にも、古く、誰かが大切にしていた思いや風景、文化が受け継がれて今の東京があるんだと気づいた。
どこの町も地域も同じかもしれない。
でも私は東京に住んで、文化や歴史に直に触れて気づくことができた。
東京ってなかなか良いところ。すっごく良いところ。
文句ばかりつぶやくのではなく、東京のいいところをたくさん見つけて、いつか東京を離れるまでノートいっぱいに東京の魅力を埋めよう!と思うのでした。