私の一番のコンプレックスは、「恋愛経験が殆ど無いこと」だ。現在26歳独身。恋人もいない。友人達は徐々に結婚し、真剣に子育てに取り組み悩んでいる。
そんな、私も唯一お付き合いした男性がいる。今から五年前の事だった。
彼と出会ったのは、高校1年生の時。隣の席で目が女の子みたいにくりっとしていて、あまり愛想がない彼だった。男性と話すのが苦手な私は、愛想の無い彼に少し苦手な印象を持った。日が経つにつれ、彼を含む席が近い人達と話すようになり、休み時間にカードゲームなどを楽しんでいるうちに、彼と話すようになった。
一ヶ月程たったある日、私は女子数人からハブられた。ハブられた私に話しかけてくれた女の子が、「今日、遊ぼうよ!人数いた方が楽しいよね、君も来ない?」と隣の席にいた彼に声を掛けた。彼は驚いた表情を浮かべるも、「じゃあ、なにする?」と応えてくれた。彼に声を掛けた友人の提案で私の家に遊びに来ることになった。私の母と妹とも仲良くなった二人は毎日、家に遊びに来るようになった。
夏休みに入ると、皆、アルバイトを始め、私の家で集まる事も無くなり、学校で話すことも無くなった。でも、学校へ行けば、何かあったときすぐ話せる。そう思って連絡先は交換していなかった。でも、その年の冬、彼は突然学校を辞めた。
5年後、SNSを通して彼と再開。そして交際が始まった
彼が学校を辞めて5年後、偶然にも再会することになった。きっかけはSNSの友達リクエスト。その欄に、見覚えのある名前が表示された。私は記憶を絞り出し、彼を思い出し、承認ボタンを押すと、すぐメッセージが飛んできた。懐かしさに話が弾み、直接会おうということで、久しぶりの再会を果たした。あの頃より少し大人にはなっていたが、くりっとした目は変わらず、どこか安心した。
それから彼には、仕事の愚痴や家族には言えない話などを聞いてもらった。彼は私の事を否定せず、優しく相槌を打ってくれて、その優しさが当時の私には有り難くて、彼の前で大号泣した。彼は優しく抱き締めてくれ、「溜まってたもの全部吐き出せた?」と優しく微笑み、少ししょっぱいキスをした。初めての温もり、初めてのキス、なんだかくすぐったい気持ちになった。そして、彼との交際が始まった。
彼との交際は2ヶ月。悲しい気持ちもあったけど、冷静な自分がいた
「恋人」という存在が始めて出来た私は、デートに行くのさえ緊張し、友達のように弾んでいた会話が、頭が真っ白になり、出来なくなっていた。その後のデートは中々お互いの予定が合わず出来なかった。私は会いたくて、用事もないのに連絡したり、私の知らない彼の時間があるのが嫌で、しつこく、「今日は何してたの?」と束縛する手前までのことを彼に要求していた。交際して2ヶ月程たった辺りから、彼の返事が素っ気ない感じだった。次第には会うことさえも拒まれてしまった。実は彼、私と交際した直後から仕事を辞めており、転職活動すらしていなかったのだ。「少しくらい話してほしかった。ちゃんと会って話がしたい」と連絡し、彼と会うことになった。
2ヶ月振りに会った彼に「ごめんね、でもめろたんと一緒に寝たい」と言われた。彼に対して「好き」という気持ちはあったので、彼の気持ちに同意し、ホテルに入った。彼とそういう行為になり、1枚ずつ服を脱がされていくと同時に、私の心の中に「このまま彼に心と身体を預けていいのだろうか?」と思った。彼の手が胸から下へ降りてきたとき、「私、彼とはひとつになれない」と心が訴えていた。理由は?と言われると分からない。ただの直感。心の違和感がそう思わせたのだ。彼がショーツに手をかけ触ろうとしたとき、「痛い、辞めてほしい」と言った。彼は手を止めソファーで寝て、私はベッドで、気まずい状態のなか、朝が来るのを待って、部屋を後にした。
翌日、「もう、友達に戻ろうか」というメールと共に彼との交際は終わりを告げた。悲しい気持ちもあったけど、どこか冷静な自分がいた。
たまに連絡を取る関係が、今の私には心地いい
あれから、5年たった今、彼とはたまに連絡を取る仲である。会うことは無くなったけれど、友達には言えない愚痴や悩みを彼には話せている。彼は交際する前と同じ様に、私を肯定しつつ、話を聴いてくれる。それが今の私には心地いい。それに、彼との交際を通して、「彼と四六時中一緒に居たい関係」ではなく、「自分の時間を楽しみつつ、素敵な事を共有しあえて、苦し時には支え合いながら高め合える関係」が恋人としての理想の関係だったのでは無いのかな?と改めて思う。私は今でも、処女を卒業出来ていないし、恋人も一度も出来ていない。けど、彼との事を後悔はしていない。
彼とのこの関係性には、「友達」で「恋人」という関係とは何処か違う。
「友達」と呼ぶには、気軽に会って、遊びに行けて、冗談が言える様な関係性ではなく、「恋人」と呼ぶには、会って、手を繋ぐわけでも、キスするわけでも無い。でも、会うと何だか少し照れくさいような感じになる。
この関係に名前がつく日は来るのだろうか?