「27歳の3月には式を挙げたいから、26歳のクリスマスまでにプロポーズしてね」

当時付き合っていた彼氏に冗談めかしてそう伝えていたけれど、わたしは至って本気だった。
30歳までに結婚できれば勝ち組、できなければ行き遅れの負け組。社会に蔓延しているそんな風潮を、疑うことなく受け入れていたからだ。

そして27歳になった今、わたしは未だに独身だ。けれどそれに対してなんの引け目も感じていない。
結婚や年齢に対する考え方がガラリと変わったのは、2度の失恋を経験したことがきっかけだった。

20代後半で彼氏がいない=結婚の見通しが立たない

学生時代から数えて6年交際していた彼とは、当然結婚すると思っていた。
長かった恋愛に自ら終止符を打ったのは、25歳の冬。激務で精神を病んで休職したとき、親身になってくれなかったことが原因だった。

それまで彼以外の男性と付き合ったことがなかったし、ここで別れたら婚期が遠のくのでは? という不安はあった。
でもメンタルクリニックの先生に、「結婚式の誓いの言葉というのがありますよね。人間、健やかなるときは誰と一緒にいてもいいんですよ。でも病めるときこそ、そばで支えてくれる人があなたにとって大切にすべき人です」と言われて、彼と結婚は無理だと悟ったのだ。

その次にマッチングアプリを通して出会った彼とは、半年しか続かなかった。
高学歴で大手商社勤めで趣味も合う彼はわたしの理想そのものだったけれど、運命の相手ではなかった。

大好きな相手に振られるという経験は、わたしを絶望のどん底まで突き落とした。 
失恋直後はなにをしていても涙が出てくるし、仕事も手につかない。友人を呼び出してお酒を飲んでは泣き喚いて困らせたり、人生初キャバクラへ連れて行ってもらって豪遊したり、死んだ顔で深夜に焼き肉を食べたりした。

未練と執着を引きずりながらも、早く新しい出会いを探さなきゃ、と躍起になっていた。
焦りたくないと思いながらも、20代後半で彼氏がいない=結婚の見通しが立たない、という事実がわたしを苦しめる。

かわいいからすぐ彼氏できるよ、と慰められるたびに、そりゃ選ばなければ彼氏くらいできるよ、と不貞腐れていた。
わたしが求めているのはその場しのぎのデート相手ではなく、生涯のパートナーなのだ。

恋愛や結婚は人生のすべてじゃない

迷走していたわたしを救ったのは、行きつけの飲み屋でたまたま顔を合わせた、友人が連れて来ていた既婚男性だった。
将来が不安なんですよね、とくだを巻くわたしに、彼は初対面にも関わらず真剣に話を聞いてくれて、諭すようにこう言った。

「全然焦らなくていいし、自分の好きなこと目一杯やったほうがいいよ。そういう女性ってキラキラしてて魅力的だし、自然と周りに人が集まってくると思うよ」

泣きそうだった。
頭では馬鹿馬鹿しいと思いながらも、ある一定の年齢を超えたら女の価値は下がる、だから若いうちに結婚しなければ、という強迫観念に囚われていた。

恋愛や結婚は人生のすべてじゃない。
30代で独身でも、素敵な女性は周りにたくさんいるのに、変なプライドが邪魔して「でもわたしはそっち側に行きたくない」なんて思っていた。

堂々と胸を張って、素敵に年齢を重ねていこうよ

そうか、わたしはわたしのままでいいんだ。 
自分の好きなように生きて、楽しく過ごしていれば、自然体でぴたっとはまる相手が見つかるかもしれない。
そう吹っ切れてから、一気に心が軽くなった。

もし今、当時のわたしと同じように焦っている人がいたなら、大丈夫だよ、と声をかけてあげたい。
あなたの価値は下がったりなんかしない。
堂々と胸を張って、素敵に年齢を重ねていこうよ、と。