「まあ、別に彼女じゃないし」その言葉は、魔法だ。それで大抵のことは許せちゃうし、期待し過ぎないですむ。優しくなれるし、感謝の気持ちを忘れない。だったら、セフレの方がいいんじゃないか。

好きだった人と、セフレになって2ヶ月が経つ。

同じ会社の別の部署のその人は、簡単に言ってしまえば顔がものすごくタイプだった。仲のいい先輩から飲みに誘われて、行ったらその人がいた。一目惚れだった。
恋している間は無敵になると定評の私は、毎日LINEが返ってくるだけでウルトラハッピーだったし、その人がいる部署に行く用事がありそうな日は、会えるかどうかもわからないのに新しい服を着ていつもより時間をかけてメイクしてから行った。世界がきらきらして見えた。

一緒にご飯を食べるようになり、デートもしたけど、告白とかは特になかった。相手は真面目で奥手な人って先輩から聞いていたし、私も私で絶対に相手から告白されたいなんて思いもあった。
私は彼を大好きだったけど、相手のタイプと自分が違うことがわかっていた。そんな中で告白して付き合えることになっても、それはそれで本当に好きなのかな?とか思わなきゃいけなさそうだった。でもこのまま変わらなさそうだったので、いい加減私から告白しようか、なんて思ったりもしたけど、「元カノの時はどっちから告白したんですか?」の問いに「俺」と答えたので、腹が立ってやめた。

この関係が壊れるくらいなら、今のままずっと続いていけばいい

そんな二人の関係が変わったのは、台風が来た日。「外に出れなくて暇なので、家で映画でもみませんか」誘ったのは私。そうなることも覚悟していた。映画を見て、お酒も飲んで、それでも手を出してこない彼に耐えきれず私からキスをした。そのキスが、堕ちていく合図だった。

彼とのセックスは気持ちがよかった。彼に触られるだけで濡れたし、彼が気持ち良さそうな声をあげるたび、女に生まれて本当によかったと思った。「ベッドの上で男がする行動は、全部やりたいための嘘」って聞くけど、それでも大事そうにキュッと抱きしめられている間は、幸福で死んでしまえた。

そこから、デートもするセフレになった。向こうが何を考えているのかはわからない。一緒にいて幸せ、それ以上に何も望まなかった。ベタだけど、この関係が壊れるくらいだったら今のままずっと続いていけばいいなと思った。

期待値調整して常に予防線をはった恋は、とても悲しかった

しばらく幸福な日々が続いたのだけど、それが変わったのがクリスマスイブの日。今年は火曜日だし、仕事も遅いからと期待してなかったけど、「なるべく行くね」とのLINE。嬉しくて、定時で仕事を切り上げて帰った私は、ウキウキで買い物に行った。

何買おうかな、お腹空いてるのかな、何時頃くるかな、本当にくるかな。はりきりすぎたら重いかな、もしこなかった時捨てるのもったいないな。気づいたら日持ちするものでカゴが埋まっていた。その時、ふとなにしてるんだろう、私。と思った。

付き合ってない分、ものすごく期待値が低くて、たぶん「ごめん今日来れない」とか言われても、うんうん、私別に彼女じゃないし、来てくれるかもってだけで嬉しいし大丈夫、とか思っちゃってる。期待値調整して常に予防線をはった恋は、とても悲しかった。

好きな人はセフレにしない方が良さそうという教訓を得た

結局私は、この関係をどうするか決められてない。何も期待しない恋は、あまり傷つかずにすむ。でも、本当はそっとついた傷たちに、つくべくしてついたんだよ、痛い思いして当然だよ、と割り切っているだけ。だけど最悪のケースを考えると、行動に移せないのも事実。

今回の恋で、少なくとも、好きな人はセフレにしない方が良さそうという教訓を得た。セフレ至上主義な臆病な私も、次は本気でぶつかる恋をしてみようか。