私には苦手な話題がある。それはネイルの話だ。
つい最近も友達とご飯に行ったとき、この話題が始まった。友達の爪は整えられ、そこには綺麗な色が載せられていた。新しく塗ったの、という友達の話。私は「かわいいね」と褒めたけど、その話題を終わらせたくて終わらせてくて仕方がなかった。自分にその話題が回ってくるのが怖かったから。
美味しそうな綺麗な色の料理の置いてある机の下で、自分の小さい爪が全部きちんと隠れるように手をぎゅっと握りしめて隠し、自分に絶対ネイルの話が回ってきませんように。と願い続けた。何回か話題を変えられないか、と会話の合間をみて違う話題に行くように仕向けたりするようなこともした。
爪や指の見栄えは悪いし、爪に色を塗ることができる面積が少ない
こんなことをする理由はただ一つである。私は自分の爪が恥ずかしいからだ。
生まれつき爪の横幅が広く、小さい。そして爪の上の方にある白い部分が短いせいで、爪の先端が肉の部分を超えたことは未だかつてない。そのせいで爪や指の見栄えは悪いし、爪に色を塗ることはできても塗ることができる面積が少ないせいで、絵の具を塗ったんですか?という感じの見た目にしかならない。
生まれ持ったこのような爪の形に加えて、私には集中力が切れたりストレスがかかる環境にいたりすると爪を毟ってしまう、という小さい頃からの悪い癖があった。元から小さい爪に加え、爪を毟ってしまうため、それを伸ばすことができなかった。
友達がかわいい色を塗った爪を見せてくれたとき、私は心底羨ましいと思う
大学に入るまではそんなに気にしてなかったこの爪も、大学生になって爪に色を塗ることが許されるようになってから、私の悩みの種の一つになってしまった。友達がかわいい色を塗った爪を見せてくれたときやSNSにネイルサロンに行って可愛くした爪を載せているとき、私は心底羨ましいと思うと同時に自分はそっち側にいけないという謎の劣等感を抱くようになってしまった。
それに、大学2年生から始めた飲食のバイトはネイル禁止だった。会計時に女の人がお金を扱う手を見ながら、その人のきちんと手入れをされて綺麗な色が塗られた爪を見て、自分の爪と比べて落ち込んだ。
先日、私の爪をまじまじと見られる機会が発生してしまった。あちゃー、やらかした、逃げたいと思う私をよそに、友達からは「小さくてかわいい爪じゃん」と私にとっては褒め言葉なのか貶しているのかわからない言葉をかけられた。友達は絶対に褒めてくれているんだろうけど。「小さくて可愛い」という言葉は私にとっては何か劣っているような気さえ起こさせてしまう。なぜなら、「小さくて可愛い」と褒めてくれた彼女の爪は私の理想の形だったからだ。彼女の爪は綺麗だった。
私もオーバル型の綺麗な爪になれるだろうか
最近、この爪をどうにかしたくてネットサーフィンをしていると、爪育成というのを見つけた。そこには爪育成をした人の爪のbeforeとafterの写真が載っていて、初回来店の爪と3回目の来店の爪の長さは驚くほど違っていた。私はその写真を見て、時間はかかるけど、これにかけてみたいと思った。丁度就活のためにバイトを辞めたのでネイルは解禁されていたから。この悩みをお金で解決できて、ネイル談議の中で縮こまらず、友達とネイルの話を楽しめるようになるならぜひやってみたいと思った。
私もオーバル型の綺麗な爪になれるだろうか。ネイルとネイルにまつわる会話を楽しめるようになるだろうか。テストが終わったらネイルサロンを訪れる予定を立てよう。