厚労省によると、日本の出生数が年間90万人を切りました。2019年に生まれた赤ちゃんは86万4千人だそうです。そのうちの一人には私の息子も含まれます。
中学生のころ、社会の授業で「出生率」という言葉を知りました。先生の説明は明確で、「出生率2.0で人口はプラマイゼロだ、なぜなら親2人から子ども2人が生まれれば、親2人が亡くなったときに残る人数が2人だからだ」といった感じだったと思います。
当時の私は子供を産むこと、そして育てることがどれだけ大変かも知らないので「じゃあ日本の人口を増やすためには3人産まなきゃいけないのか~」とぼんやり考えていました。「ひとりっ子だったら親が亡くなったときに残る人数は1人だから、人口はマイナスになっちゃうのか」とも思いました。
高校生のときは無邪気に「子どもは5人ほしい!」と言っていたし、大学生になってからも「最低でも2人は産みたいから〇歳で一人目、〇歳で二人目だったらちょうどいいかな…」なんて勝手に未来予想図を描いたりしました。
私たちは日本の人口を増やすために命がけでお産に臨むわけじゃない
さて、話は現代に戻り、いま私は一児の母となりました。妊娠中も、お産も、子育ても、想像していたより心身ともにハードです。バタバタ育児に奔走しながら目に入ったのが出生数90万人切りのニュースでした。う~ん、なんか嫌な気分だな。
私たちの気持ちを無視して、世間から「女性は子どもを産め」と言われているような気持ちになります。政治家の「〇人産んでほしい」みたいな発言にはうんざりしませんか。私たちは日本の人口を増やすために命がけでお産に臨むわけじゃない。
国の少子化だけに目が向いている人からしたら「過去最低のたった86万4千人」なのかもしれないけど…。そこには86万4千通りの願いや祈りがあり、ストーリーがあり、大切な命があるのになぁと、私はもやもやするのです。被害妄想だ、考えすぎだと思う人もいるだろうけれど、私は不快になるのです。
深い意味はないと分かっていても私はこの問いかけにまた追い込まれていく
冗談でも「たくさん産んだ人がえらい」という文脈で発言してほしくないです。望んでいてもなかなか子どもを授かれない人もいる。同性同士で生涯を共にし、子どもはもたないという選択をする人もいる。ひとりを育てるのがやっとで、複数人はとてもじゃないけど産めないという人もいる。
現に息子を出産した私にも「二人目は?」と聞いてくる人がいます。きっと悪気はなくて、「きょうだいがいたほうが楽しそう」とか、「女の子も欲しくないのかな」とか、単純に聞いてみただけとか、そんな感じの発言だと思います。深い意味はないと分かっていても私はこの問いかけにまた追い込まれていくのです。
目の前の我が子と自分の人生をまっすぐ見つめて生きていきます
生きづらい性格だと思います。よくわかっています。なぜいちいち引っかかってもやもやしてしまうのかというと、もしかしたら私自身がいちばん「子どもは複数人いたほうがえらい」、「きょうだいがいないと可哀想」、そんな風に思っているのかもしれません。息子をひとりっ子にするつもりだということに後ろめたさを感じているから、人口減少のニュースにも、何気ない問いかけにも、いちいち反応して心を痛めてしまうのかもしれません。
悶々と考えてみたけれど、私は息子が元気に成長する手助けを最大限することと、自分自身が無理なく幸せに生きていくことを念頭に暮らしていけばいいのだというシンプルな答えに行きつくのみです。世間の声に惑わされることなく、目の前の我が子と自分の人生をまっすぐ見つめて生きていきます。