10年前の私は、10年後、現在の状況になっているなんて予想もしていなかった。

10年前、私は友達や彼氏がいて、面倒くさい部活のあとに校舎裏の売店でみんなと駄菓子を食べてあの先生は嫌い、あの男子が格好いい、進路をそろそろ決めないとなーとか、時間が足りないくらい話したりどこにでも居る普通の高校生だった。もう、本当に箸が落ちても笑うくらいの。何もかもが楽しい。どうせバレないだろうとうっすら茶色くなるくらいまで髪を染めたときは先生にソッコーばれたことも、テスト前日に親友とノリでカラオケにいって2人して赤点三昧だったことも、全部全部楽しかった。

楽しかった高校、看護師。そして鬱に

進路は高3の夏に決めて、ギリギリで2年制の准看護学校に滑り込み、准看護師として3年間フルタイムで働きながら正看護師の夜間学校に入学して看護師になった。なので結局、5年の看護学生を送った。しかし、勤労学生だった3年間の記憶はほぼ無い。ただただ単位を落とさないように必死で勉強しながら、職場では同じ勤労学生を経験した優しい先輩達に囲まれながら働いた。記憶は無いけど、きっとそんな環境でも楽しかったと思う。

しかし、その後徐々に体調が崩れた。まず横になっていても気持ちが悪い。食欲、眠気、やる気、全部なくなった。気付いたら2日半寝ていなかったこともある。それでも気付かなかった。自分が精神疾患になっていたことに。色んな病院を受診し続け、最終的に心療内科を紹介されたときは驚いた。なぜなら私は5年間、精神科看護師として働いていた。色んな患者を見てきた。自殺したいと同年代の患者が話してくれた時は、「そんなこと言わないで。私が支えるから。ひとりじゃないから。」と話していた。そんな自分が、鬱になった。

理由は今でもわからない。周りの人達は、精神科で働いてたからそうなったんじゃない?と言うが、私は悩んでいたり、自分の意志とは関係ない行動をしてしまう患者さんの気持ちを理解したいと奔走し、対応が難しいと言われていた患者さんと時間をかけて話し合い、信頼関係を築いて心を通わせていくことが精神科看護師の醍醐味であると感じていた。綺麗事でもなく、自己肯定のためでもなく。なので「精神科で働いていたから」という理由には全く当てはまらないのだ。毎日が本当に充実感たっぷりの日々だった。だが、自分が病名を言い渡された瞬間、衝撃を受け、毎日ぼーっとして、後ろ向きな事ばかり考えて、感情が何もなくなったような感じだった

何がいけなかったのか、何故大好きな看護師になったのに出勤できない体になったのか。何故薬がないと気持ちがどん底になるのか。眠れなくなるのか。もう考えても考えても分からない。きっと私が話し合いをしていた患者さん達もこういう気持ちだったのだろう。

今はまだ何も変わらないけれど

それから3年が経って現在。何も変わらない。薬がないと消えたくなること、眠れないこと、存分に働けないこと。転職もした。精神疾患があるという理由で自分と同じ看護師に障害者扱いをされた。悔しかった。今や精神疾患は誰がなってもおかしくないとニュース等でも言われている中、なぜそんな扱いをされなければならないのかと。

私だって普通の女子高生だった、看護学生だった、看護師だった。毎日今も苦しい。でも、なんでこんなことになったのか考えている時点で前に進めていないことは自分が1番よくわかっている。でもそれが今の自分であり、変わろうとしても変われない状況に居るのも確かだ。

過去のこと、現在のこと考えている中、ふと思うことがある。私は10年後、どんな自分なのか。同じ状況下で悩み続けているのか、結婚して子供がいるのか、はたまた看護師としてバリバリ働いているのか。ふと考える割に、実は結構楽しみである。鬱ではなくとも、友達、職場の先輩たち、後輩たち、彼氏。みんな何かに悩みながら、時には後ろ向きになりながら生きていて、笑っていて、私から見るとキラキラしている。だから、もしかしたら私もいつかみんなのようにキラキラする日が来るのではないか、自分の状況が今より大きく変わっているのではないかと考えていることが多々ある。だから多分、鬱に勝つ日が来ることを確信している節もある。だからそれが来るその日まで、私は頑張り続けることを諦めず、生きていく。