2020。この数字の並びを見て、近未来感を感じるのは私だけだろうか。
2度目の東京オリンピックが開かれ、大阪万博も目前に控える。
未来に期待が膨らみ、新たな変化が起こりそうな今日この頃。
古い時代が終わり、今までと違う何かが始まるような雰囲気が漂う。
この感覚を感じるのはこれで2回目である。

この先どうなるか分からない将来なのに、受験勉強して何の役に立つのだろう?

以前に近未来感を感じた数字の並びは、2012だった。
2012年。当時、私は県内進学校に通い大学受験を控える高校3年生。
部活を引退し、いよいよ受験勉強に本腰を入れる。はずだった。
しかし、どうにもこうにも集中できない。

原因は分かっていた。
一つは、今まで部活に明け暮れる生活で勉強をおろそかにしていたから。
もう一つは、どんどん変化していく周囲の環境に不安ばかり感じていたから。
中学時代に通っていた塾が無くなった。
クラスの中でもガラケーからスマホに変える人が増えた。
メールの代わりにLINEというものが登場した。
先生たちも「前までのこれは通用しない、今はこう」というフレーズが授業中の口癖になっていった。
その度に今までの世界が無くなる気がして、知らない世界に行くようで、恐怖とこの世の終わりを感じ、一人絶望していた。

この先どうなるか分からない将来なのに、受験勉強して何の役に立つのだろう?
それよりも私には行きたい国や場所があって、やりたい事がたくさんあるのに。
どれも出来ずに人生終わってしまうなんてごめんだ!
数年前に見た映画の予告が影響されているのが大部分だと思うが、本気で2012年で人類あるいは世界が滅びるとも思っていた。

肩の力の抜き方を知った私は、マイペースに勉強し始めた

春から夏までの模擬試験の結果は散々だった。
本気で大学受験をするのかと疑いたくなるほどのE判定が並び、学年最下位が羅列する結果表。
それを持って私は担任に相談しに行った。

勉強の立て直し方が全く分かりません。どうすればいいですか。
担任はその紙をうーんと眺めた後、「僕は生物の担当だからそれ以外は助言できないけど」と前置きした上で話し始めた。
「大問1は25点中12点。約半分。だからあと半分覚えたら良い」
「大問2は0点だけど、ここは1学期やったばかりのところ。で、君はあんまり学校来てなかったから授業聞いてなかったでしょ?そんなに難しい所ではないから夏休み中に取り戻せる」
「大問3は2/3出来てる。あと1/3覚えたら良いだけ」

話を聞いてるうちに、なんだか拍子抜けしてしまった。
世の中にはこんなに気楽に物事を考える人もいるんだと。
そして担任は最後に言った。
「もっと自分を大事にしなさい」

肩の力の抜き方を知った私は、マイペースに勉強し始めた。
大手の予備校は性に合わないと感じ、地元の小さな個別指導塾に通い始めた。
最初は基礎中心で一対一の授業を受けていたが、秋が深まる頃には自習中心になっていった。
志望校も学校の担任や塾の講師と話し合いを重ねる中で、学びたい事重視で学部を決め、国立大学から私立大学に変えた。
だから、実際の受験に生物はほとんど関係しなかった。
2月。私は大学に合格した。

2020年はささやかな夢を持ち、変化を楽しもう

そして2020年。社会に出て3年経った。
正直この3年は2012年以上にしんどかった時もあった。
あまりの激務に心身が疲弊したり、業務内容にどうしても納得できなかったりで、1年もたずに転職を何度も繰り返す日々が続いた。

現在の職場は忙しくもあるが、大きな不満は無い。
仕事にも慣れてもうすぐやっと1年経つ。この先も働いていけそうな見通しがある。
新卒入社した会社で働き続けている同級生からしたら私は落ちこぼれかもしれない。
でも私は今の自分に満足している。

今も将来に対して不安が0%になったわけではないが、まあどうにかなるでしょと考えられるようになった。
あの時に肩の力を抜いて気楽に考えた方が物事は上手くいくと実感したから。
今までは変わっていく事に対して躊躇していたが、2020年はささやかな夢を持ち、変化を楽しもうと決めた。