わたしの2020年の宣言。
それは、「人に会いたくない気分を、大切にする」ということ。
この宣言を聞いて、「『人と会いたくない』なんて、変なの」と思う人もいるかもしれない。誰かといつも一緒に時間を過ごしていて、それが楽しく、全然疲れないという人がいるけれど、わたしはそういう人とは真逆のタイプで、いくら仲がいい子でもずっと一緒にいるのは疲れてしまうし、一週間のうちに一日はひとりになる日を作ってゆっくり過ごさないと、体調を崩してしまう。
働くためには人づきあいがどうしてもつきまとうらしい
この性質は幼い頃からのもので、わたしは、友だちと遊ぶよりもひとり遊びの方が好きな子どもだった。お話を作ったり、木に登ったり、延々とブランコを漕いだり、漫画を描いたり、ひとり遊びの種類は豊富で、ずっと遊んでいられた。時折、空想上の友だちを作って会話していたが、それは寂しいからではなく、空想の友だちと話すのが面白くって仕方なかったからだった。
わたしはひとりで遊んで成長し、やがて高校生になる頃には、ひとりで時間を過ごすプロフェッショナルになっていた。天気がよければ公園へ走りに行ってもいいし、街に出てウインドウショッピングをしてもいい。雨なら本棚にずらっと並んだ本を片っ端から読んでいればいい。ひとりだからできることは、世の中にたくさんある。
けれど、そのうちにある問題に直面した。ひとりで過ごしているままでは、ご飯を食べていけないことに気づいたのだ。食糧を得るためにはお金が必要で、お金のためには働かねばならず、働くためには人づきあいがどうしてもつきまとうらしい。
大学時代、皆が就活でインターンや面接対策をしていた中で、わたしはまず人に会っていくことから始めた。留学生のサポートボランティアをしたり、海外に短期留学をしたり、地元の街おこしのイベントに参加したりした。アルバイトも掛け持ちして、家庭教師や美術館の受付、不動産の事務、みかんの試食販売、古美術商の手伝いもした。
だいぶ遠回りではあったが人慣れできたわたしは、そのまま就職活動に突入し、仕事をいただくことができた。
会社にいると、疲れてしまう
今、社会人3年目として日々を過ごしている。何事もなく社会人をやっています、と言えればいいのだが、実は困ったことに直面している。
会社にいると、とても疲れてしまうのだ。
会社では誰かに会わなくてはいけないし、会社以外でも取引先の人とメールや電話でやり取りしなければいけないからだ。
おかしいな、人慣れしたはずなのに。そう思って、疲れの理由を探ってみると、原因は深く根を張っていた。わたしは、他人の立てる物音、吐息、話し声、それから人間関係やそれぞれの表情の動きなど、細かなことも情報としてキャッチしてしまうらしい。情報が頭に常に流れ込んでくるので、仕事が終わった頃にはぐったりと疲れてしまうのだ。
視界に入れないようにして、自分のことにもっと集中できればいいのだろうけれど、そんなにほいほい他人の存在を無視できるものなのだろうか。少なくとも、今のわたしにはできていない。
「人に会わないデー」を設け、ひとりで過ごす時間を作っていく
ある朝、目が覚めて、「ああ、今日も人に会うのか……」と思ったら、ひどく気分がふさいでしまった。これはいけない、と思って、その週の土日は「引きこもりデー」として、近くのスーパー以外どこにも行かずに過ごしたら、少し回復した。
これだ。
わたしは理解した。今まで無理してきたけれど、わたしは人に会うのが苦手なのだ。そこで、今年を「自分いたわり元年」と定めた。「人に会わないデー」を必ず設け、ひとりで過ごす時間を意識的に作っていく。自分を守るために、わたしは、人に会いたくない気分をあえて大切にすることに決めたのだ。