「こんなところで働いてちゃだめだよ。」
こんなところに来たお客さんは、私に向かってそう言った。
「え~、〇〇さんに出逢えたからラッキーだよ?」
私はいらいらを抑えてにっこり笑ってそう返す。俺も娘がいるからね、娘がこんなところで働いてたら泣いちゃうな。そんな事言うなら、こんなところに寄らずにそのかわいい娘が待つ家にさっさと帰ればいいのに。
男なら許されて、女だと許されない。そんな不公正な世界ある?
私がガールズバーで働き出したのは、元彼の影響だった。元彼はキャバクラに行くのが好きだった。行ってほしくない、何度そう伝えても行く。世間では浮気は男の性って言うし、キャバクラ行くのは浮気するよりマシでしょ。そう悪びれもせず言う彼に、心底腹が立っていた。
男は浮気をするものだ。キャバクラは接待の場としても重宝される。一方で、ホストに行く女性は嘲笑われ、キャバクラで働く女性は下に見られる。何だこの世界は。男だと許されて、女だとだめなのか。色々と耐えきれなくなった私は元彼と別れ、それでも怒りがおさまらずガールズバーで働くことにした。
思いの外楽しかったガールズバー。でも
世の中の男たちへの復讐のために始めたガールズバーは、思いの外楽しかった。
「かわいいね」「若いね」。そこに存在するだけで、価値がある。最初は、そんな承認欲求が満たされるし、お金ももらえるしでラッキーって思ってた。幸い一緒に働く女の子たちはいい子ばっかりだったし、ママも指導は厳しかったけど、優しかった。そしてほとんどのお客さんからも、嫌な気持ちにさせられることはなかった。
でも、たまに。「こんなところで働いたら親が悲しむ」「いいね、お酒飲んでただ話してるだけでお金もらえて」「若いうちだけだよ、この仕事ができるのもちやほやされるのも」。そんなことを言われることもあった。
私は負けず嫌いだし、他の子より容姿が優れてる訳でもなかったので、話力を磨くしかないと思っていた。どんな話をしたら指名をもらえるか、長くいてもらえるのかを試行錯誤して、KPT(Keep : 成果が出ているので継続すること、Problem : 問題があり改善が必要なこと、Try : 新しく取り組むべきこと)を家に帰ってノートに書いてたし、コーチングの本だってたくさん読んだ。
何も努力せず、にこにこ笑ってたわけじゃない。こっちはお金もらっている以上、プロなんだ。その対価として、楽しい時間を提供するために色々考えていたのに。
持てる物は全て使う。持ってないものは手に入れる努力をする
若さやかわいさがあっていいね、って、そんなの私からしたら、出産で仕事を一時戦線離脱する必要のある女より男に生まれたかったし、少なくとも1回1万円以上するお店に週2は行けるような経済的に余裕のある大人の方が羨ましいわ。
私は私にしかないものがあるし、あなたにはあなたにしかないものがある。若さは失われるものかもしれないけど、歳を重ねてしか手に入らないものがある。
持てる物は全て余すことなく使う。欲しいけど持ってないものは手に入れられるよう努力する。それだけ。私は、女も若さも存分にうまく使って生きていく。