「〇〇が1番可愛い」
小さい頃から母親はそう私に言ってくれた。
世の中には「あなたは可愛くない」と言う親も居ると聞くが、私の母はいつも可愛いと褒めてくれた。
小さい頃からそう言われていた為、あ、私って可愛いんだ!と幼いながら容姿に対して自信を持っていた。

しかし、義務教育という小さな社会に出され色々な人とコミュニケーションを取っていく中で"可愛い"という自信は段々と無くなっていく。

友達と遊んでいても可愛い!と褒められるのは私ではなく隣にいるお人形みたいな友達。
学校生活でも「〇〇ってブスだよね」と陰口を言われる事もあったが、さほど気にしていなかったものの、こういった場面が増えてくるにつれ私って本当に可愛いのかな?と少しずつ疑問に思っていくのであった。

知らない人に自分の見た目についてはっきり言われて怖かった

私がブスだと確信したのは小4の時体験した出来事だ。今でもたまに思い出してしまう嫌な記憶である。
ある日いつものように歩いて登校していると前から中学生らしき2人の女子が歩いて来た。そのまま通り過ぎようとしたが、すれ違いざまに目が合った。その瞬間「ブスだね。変な顔」と言われた。ものすごく驚いた。
知らない人に自分の見た目についてはっきり物を言われたのは初めてだったし怖かった。

その日以来私は通学路を変え、元々ピンクや女の子らしい服や物が好きだったが、可愛いと思ってもすぐに"ブスだから似合わない"と考えてしまい、好きな物を避けはじめ自然とボーイッシュなファッション等を好むようになっていった。

母親からの可愛いよりも、好きな人からの可愛いが1番嬉しいんだ

月日は流れ高校生になり、環境がガラリと変わった。周りを見ると可愛い子が多い。いつまで経っても私は引き立て役なんだな、と思っていたのだがある時
「〇〇ちゃんは色白だし小さくて可愛いよ」
と友達が言ってくれた。
決して容姿の事ではないがお世辞でも可愛いと言われた事がとても嬉しかった。

それからどうすれば可愛くなれるのかを考え、毎月雑誌を買ってメイク特集を見よう見まねで実践したり、服も少しずつ自ら遠ざけていた女の子寄りにチェンジし、髪の毛や匂いにも気を使ったり私なりに可愛いを追求していった。

高3の時に初めての彼氏が出来た。見た目もかっこよくて性格も優しかった。
毎日可愛いと私の事を褒めてくれるので、彼のために、自分のためにもっと可愛くなりたいと思った。
後々別れる事になるのだが彼のおかげで徐々に自信が取り戻せた。

そんな中気づいたのが、母親からの可愛いは私の求める"可愛い"ではなかったという事。同性からの可愛いも勿論嬉しいが、異性、ましてや好きな人からの可愛いが1番嬉しいんだと実感した。
でもまだ何か物足りない。

いつか表面も内面も納得のいく自分自身になれるのだろうか

そして生活していく中で、他人に対してもっとこうしたら可愛いはずなのにな。と思うようになった。ありのままの見た目で可愛いと言われる子が羨ましくて、その反面妬ましく思えてくるようになった。
過去にされた容姿への評価と同じような事をしてしまっている自分に気づく。

可愛さを求める表面ブスの自分。
他人を妬ましく思う内面ブスの自分。

表面は整形という方法もあるが調べるだけで実行しないのは、変わりたいけど母親が可愛いと言ってくれた自分を心の底で変えたくないのかもしれない。

内面は整形する事ができないから自分が変わるしかない。

いつか両面納得のいく自分自身になれるのだろうか?考えれば考えるほど悶々と時間は経つばかり。可愛いって何だろう?

そう思いながら今日も私は鏡越しに自分自身と向き合っていくのだ。

理想の"可愛い"を求めて。