きっと今、私は世界で一番幸福。
そんな風に思える、彼の腕の中に包まれる夜は、幸福よりも次に迎える絶望の方が怖かった。
二人の夜より、一人の朝の方が安心した。昨夜の幸福すぎる思い出に浸りながら、いない温もりを恋しがりながら、あの瞬間に戻りたいと思いながらも。もう一人になったから、これ以上悲しい思いをしなくてもいいから。

いっそのこと、早く絶望させてください

好きだった人と、セフレになって4ヶ月が経つ。

好きで好きで好きで、たまらなく好きで。でも伝えたことはなくて。
とっくの昔に好きだなんてバレてるんだろうけど、それでも伝えない。別に相手になにも求めていない、求めてまるごと失ってしまうのが怖い。

行為をする前、とても愛おしそうに撫でられる瞬間が好きすぎて、でも結局そのときだけだから虚しくなる、それなのにしばらくしてその瞬間が恋しくなってまた行為に溺れる、その繰り返し。まるで麻薬だ。ふわふわと、まるで夢でも見ているみたい。いつかは覚めてしまう夢。でもそれをきっと、今日にする勇気はない。

そんな感じで、無事ずるずると時間だけが過ぎていった。
でも、その間に私は学んだ。会えない夜は、くたくたになるまで仕事をするか、飲みにいけば、家で一人で寂しく思う間もなく眠りにつける。そうしているうちに、一緒にいる時が一番寂しくなっていった。朝が来ませんように、もう少し一緒にいられますように、でも刻一刻と離れる時間がきてる、それならもう早く一人にして、絶望させて、これ以上悲しくならなくてすむように。絶望は、何よりも希望だった。

そろそろやめなくちゃいけないなんて、わかってる

ある日、仕事をしている時に、後輩が上司から「現状維持は衰退だよ」、そんな言葉を言われていた。隣で聞いていた私は、私に言われた訳でもなければ、ましてや仕事のことなのに泣きそうになったのだった。そんなの知ってる、わかってる。そろそろやめなくちゃいけないよね。なんでもない一言が、こんなに刺さると思わなかった。

ていうか、告白すればいいじゃん。他人が同じ状況だったら、私もそう思う。でも、私たちはお互いを知り過ぎたのだ。今の距離以上に近づくと、傷つけあってしまう。なぜかというと、決定的に合わないことがあって、でもそれだけはお互いどうしても譲れないからだ。付き合ったからといって、解決できることでもない。じゃあ、傷つけ合わないぎりぎりの距離にいて、時と身体を重ねましょう。あなたか私に別の相手ができる、その日まで。

私のことを思い出す種は蒔いておいたよ

付き合わない。そう決めた時、ちょっとだけいじわるをすることに決めた。私はあなたのトラウマになる。

一緒にいる時に買ったブランドの高いダウン、私が色を選んだね。コンビニでアイスを買ってくれるの、習慣になってるね。私が勧めたアーティスト、なんだかんだはまってるよね。

長く着るコート、よくいくコンビニ、運転中に流す音楽、ふとしたときに、そういえばこれって、と私のことを思い出す種は蒔いておいたよ。

ちゃんと手放すし、いつか忘れるから安心してね。
でも、そうなったときあなたは、時々私のことを思い出して、あわよくば恋い焦がれてね。